こんにちは。 洋服の生地についてブログを書いています、服地パイセンです。
3月に入り、日中は暖かい日が増えてきました。真冬と同じ服装だと汗をかいてしまうくらいに暖かいです。春頃に活躍している『スノーパーカー』。僕にとってこのアイテムはとても印象に残っているアイテムなんです。
出会いは約15年前、古着屋で働いていたときです。そのときはミリタリーのディテールもほとんど知らずに、『オーバーサイズな薄手のフード付きのコート』くらいの軽い感覚で購入しました。
そして家に持って帰ってよく見ると、不良品だと思ってがっかりしました。
ポケットのディテールはあるのですが、中に袋が縫い付けられておらずポケットになっていないんです。
なんだこりゃ?と思いましたが、後々そのディテールの意味を知るのですが、『こんなアウターもあるんだ』という衝撃を受けた一着であります。
スノーパーカーとは?
スノーパーカーを簡単にいうと、
雪山でのカモフラージュのため軍隊で採用されているオーバーコートです。
カモフラというと、グリーンやデザート系のものを思い浮かべますが、
スノーカモは雪上で身を隠すことを想定していて、真っ白な生地が採用されます。
スウェーデン軍をはじめとした各国オリジナルのスノーパーカーはもちろん、
プルオーバーのアノラック型や、後染めしたものも人気があります。
スノーパーカーの歴史
スノーパーカーは各国に採用されていますが、
発祥は北欧の寒い地域スウェーデン軍のようです。
1939年にソ連がフィンランドに侵攻する冬戦争が勃発。
ソ連はその圧倒的な戦力で攻め入ってきました。
フィンランドは国際的な支持を得ていたこともあり、
スウェーデン軍を中心に各国から義勇兵が集まりました。
戦力ではソ連側が有利だったのですが、結果はフィンランド側の勝利。
そのときに活躍したのが雪上でスキーをつかって自在に動き回る部隊。
スキーで行動範囲が広がり、守備が手薄な背後から攻めるような戦術で勝利したそうです。
この時のスウェーデンの義勇兵達が着用していたのが、
M40という真っ白なコットン素材のスノーパーカーです。
これが後に様々なスノーパーカーの原型になるモデルです。
アメリカ軍スノーパーカーのデザインとミリタリーアイテムとしての機能性
僕のものはスウェーデン軍のスノーパーカーではなくアメリカ軍のものです。
M-1950という1950年から米軍にて採用されていたモデルで、
オーバーコートというアウターの上から羽織る外衣です。
暖かさを求めた防寒用ではなく、雪上で一番上に着て身を隠す為のものでした。
この『防寒性がないコート』だというところが、春にぴったりなんです。
スノーパーカーという名前なので冬に活躍しそうですが、
春のアウターにぴったりです。
シルエットが今っぽいです
M51やM65などいわゆるモッズコートで採用されていたフィッシュテイル型の裾に、大きめのフード。ヘルメットの上からでも余裕でフードをかぶれる大きさです。
ウエストにはドローコードが通っていてシルエットに変化をつけたり様々な着方が楽しめるミリタリーアイテムです。
フラップ付きの貫通ポケット
フラップ付きのポケットは貫通式のスルーポケットの仕様です。
冒頭でもふれましたが、ぼくが衝撃を受けたディテールです。
どういうことかというと、こうなっています。
ポケットの内側に袋が縫い付けられていないので向こう側が丸見えです。
購入当時は意味がわかりませんでした。
袋のないポケットはポケットとしての機能がありません。
後々先輩に教えてもらって知ったのですが、この貫通式のポケットは
スノーパーカーを着たままでも中に着ているジャケットのポケットを使用できるように工夫されたディテールなんです。
あくまで雪山でのカモフラージュのための服だからこそ生まれたディテールです。
このスノーパーカーの生地が黒いのはなぜ?
1950年代に採用されていたM-1950はコットンの真っ白な生地が採用されています。
1970年以降のモデルではナイロン素材が入るものが主流になっていきます。
本来は白なのですが、僕が買ったものは黒?ダークネイビー?に後染めされいてるものです。
後染めは汚れを隠したり、服の色をあとから変えてしまう製品染めのことです。
生地は染まりますがスナップボタンは染まらずにもとの白いままになる、というのもおもしろいですね。
後染めのスノーパーカーは
オリーブ色だったりブラウン系だったり、様々なカラーのものを見かけます。
雪山でカモフラージュするなら白ですが、
街では白よりも落ち着いた色の方が使いやすいですもんね。
さしずめ、街へのカモフラージュってところでしょうか。
米軍のミルスペックの見方
米軍のアイテムはアメリカ国防総省が定めた規格があり、
細かな規定をクリアしたものだけが採用されます。
そしてミリタリーアイテムは、限られた請負業者が製造します。
国防総省が発注すると、請負業者は定められた規格通りに製造し納品しなければならないきまりです。
米軍のミリタリーウエアはタグを見れば、そういった情報をすぐに確認できるようになっています。
①~⑤の赤い数字をつけたところが確認する箇所です。
それではこのスノーパーカーのミルスペックをみていきます。
①一番上にサイズが記載
このスノーパーカーのサイズは『SMALL』です。
実際に採寸してみたところ、
肩幅:60cm
身幅:64cm
着丈:104cm
でした。かなり大きいですね。
オーバーコートであることや、アメリカの規格であることなどを加味するとそんなもんなでしょうか。
日本サイズだとXLくらいだと思います。
②NATO SIZEは共通サイズ
NATO加盟国で使われている共通サイズを記載しています。
『7080/8494』というのは、
身長:170~180cm
胸囲:84~94cm
の人向けの服ということを示しています。
ちなみにNATOとは北大西洋条約機構のことで、北米とヨーロッパの国々の軍事同盟です。
③ミリタリーウェアの正式名称
ここには正式な名称が記載されています。
通称スノーパーカーと呼ばれていますが、正式名称は
『PARKA SNOW CAMOUFLAGE』です。
④コントラクトナンバーで年代判別
古着には年代判別が欠かせません。
よく古着屋で『これは80年代のデニムパンツ』とか言ってますが、生地やディテール、縫製の仕方を見ればだいたい判別できるようになります。
中でも米軍のアイテムは判別がすごく簡単で、このコントラクトナンバーを見ればすぐにわかるようになっています。
コントラストナンバーとは発注番号のことで、ここでは製造年を確認できます。
『DLA100-89-C-0505』と書かれてあり、ここから89年製だということがわかります。
⑤CONTRACTORは業者の名前
タグの下の方に
『CONTRACTOR:TENNIER INDUSTRIES INC』と記されています。
これはテニエという会社が製造した、ということを記しています。
古着のスノーパーカーはどう着る?
スノーパーカーはトレンドのボリュームのあるシルエットになっています。
僕は春用の薄いコートとして、あまり何も考えずにガバッと羽織っています。
あとは梅雨時はレインコートとして使ってます。
コットンナイロンの生地ですがもともとは水を弾かないので、撥水加工を施してます。
自宅で撥水加工を施してみた記事もあるので、よかったら読んでみてください。
まとめ
貫通式のポケットが衝撃的なだった米軍のスノーパーカーでした。春と梅雨と秋に活躍するので、また今年もこれからお世話になるんでしょう。
僕が持ってるのは後染めのものなので、染めていないオリジナルの白のものも欲しいです。
M-65などのフィッシュテールの人気が目立ってますが、スノーパーカーも個体数が激減しているアイテムです。
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