こんにちは。 洋服の生地についてのブログを書いています、服地パイセンです。
先日ユニクロに立ち寄ったときのこと。すごく雰囲気のいいデニムパンツに出会い、値段も3~4000円くらいと良心的だったので即購入しました。あまり詳しく見ずに買ったのですが、家に帰ってよく見てみると驚きます。
フロントポケットの内側のスレキに『FABLIC BY KAIHARA』の文字が。
えっ!ユニクロのデニムは品質がいいのは聞いていましたが、まさかカイハラとは!!
ユニクロのデニムにも使われるカイハラの生地とはどのようなものなのでしょうか。
餅は餅屋。デニムはデニムブランド?
『デニムはやっぱりデニムブランドが作るこだわりの一本。セルビッチデニムだろ』
ずっとそう思っていました。
(セルビッチは古い特殊な専用力織機で織られた
生地の端にほつれ止めがついたデニムです)
ヴィンテージデニムブームをかじった人なら、このセルヴィッチ至上主義的な気持ちわかるんではないでしょうか。
今回デニムを購入しようと思ったのも、気に入って穿いているヴィンテージのリーバイス501の生地がへたっているから。
その替わりに穿けるような薄めの色のデニムをずっと探していたんですが、気に入ったものが見つからずにずっと保留でした。
そんな中、ユニクロで雰囲気のいいデニムを発見。
それがまさかのカイハラの生地でした。
デニム生地といってもピンキリあるんですが、カイハラのデニム生地を使うと2万円くらいするのが相場のはず。
ユニクロのジーパンは岡山産のデニム生地を使っているのは知っていましたが、まさかカイハラとは。
おそるべしユニクロ。
ユニクロのデニムパンツは思ってるより雰囲気がいい
実際に購入したデニムの生地をみていきます。
なかなか良い雰囲気出してます。
ステッチのアタリは自然な表情
デニムは洗って縮んで凹凸になったところが、擦れたりすることで白くなっていき、コントラストが生まれます。いわゆる『アタリ』というやつです。
ダブルステッチで縫われているところに特にアタリが出るんですが、ユニクロのデニムも自然なアタリが出ています。
実物の方がもうより少し白っぽく、青みも弱めです。
ジッパーは高品質で安心のYKK
生地だけでなく部材もしっかりしたものが使われています。
ジッパーは圧倒的に安心感のあるYKKのもの。もちろんロック式なのでスライダーがずり落ちる心配もありません。
自然な色落ちで風合いの良いコットン100%の生地
コントラスト弱目でしっかり色落ちしたような、あくまで自然な色落ちを再現した加工が施されています。
まるでしっかり履き込まれた80年代のリーバイス501のような雰囲気。
ヴィンテージデニム最盛期のブリブリでバキバキな色落ちよりも、こういった自然な色落ちがここ数年の気分です。
しっかり色落ち加工を施しても、傷まずに自然な風合い。
ユニクロの加工技術もすごいのでしょうが、こんな雰囲気のいい生地を作るカイハラってどのような企業なんでしょうか。
カイハラとはどのようなデニム生地メーカーなのか?
カイハラは世界的にも高い知名度を誇るデニム生地メーカーです。
カイハラデニムは染色の技術に定評があり、生地の上質な味わいと経年変化をあわせ持ったプレミアムデニムの生産企業として知られています。
ジーンズの王道、リーバイス501の歴代復刻モデルの生地にもカイハラのデニムが使われていました。
カイハラデニムの歴史とリーバイス
カイハラは国内ナンバーワンのデニム生地メーカーですが、もともとは手織りの藍染かすりをつくる、広島県の小さな機屋(はたや)でした。
1893年創業なので、100年以上続いている老舗企業です。
デニム生地の前はかすりという生地を生産していました。かすりというのは、簡単にいうと着物やモンペに使用される織物生地です。
カイハラの作る生地は、染めの技術が高く当時から評判が良かったようです。
しかし戦後になるとかすりの需要は減少。そこでかすりの代わりとして目をつけたのがジーンズに使われるデニム生地。
そこで長年培ってきた染色技術が活かされたそうで、デニムに参入して数年後に転機が訪れます。
世界的なジーンズブームによる生地不足をきっかけにリーバイスのバイヤーが日本に生地を買い付けに来た際、カイハラのデニム生地に感動したそう。
すぐに取引を開始し、そしてリーバイスとの取引をきっかけにカイハラの知名度は一気に世界に広がりました。
カイハラデニムがすごい理由は『全工程を一貫生産』しているところ
カイハラの最大の特徴は、綿花からデニム生地になるまでの全ての工程を自社で行う一貫生産にあります。
デニム生地を作る工程は大きく分けて
①紡績
②染色
③織布
④整理加工
の4工程があります。
紡績会社が糸を作り、
染色会社が糸を染め、
織布会社が布にして、
整理加工会社が完成させる、
という分業製造が一般的です。
各工程を別々の会社で行うことで、大量生産を実現しています(ノウハウや資本的な問題で一社で統括するのは難しいのかもしれません)。
これに対してカイハラでは紡績から染色、整理加工に至るすべての工程を社内で一貫して行っており、品質責任はすべてカイハラが負っています。
このやり方なら、市場や取引先のニーズに応えられるような、目的に沿った生地を一気通貫で作れるんです。
全工程でクオリティーを追求し、最高品質な生地を作ることもできます。
全てをコントロールできるんです。
すべて自社工場で生産できるのは、国内ではカイハラだけです。
紡績を除く3工程をすべて自社工場内で一貫生産している、クロキという有名なデニム生地メーカーもありますが、紡績だけはできません。
一貫して行える会社はとても珍しいのです。
最後に
『日本といえばインディゴブルー』というイメージを作ったのも、カイハラの功績あってのもの。
ユニクロのデニムパンツが高品質なのは、そんな世界に認められているカイハラのデニム生地を使用しているということが大きいのではないでしょうか。
1998年にフリースの大ヒットで一気に市民権を得たユニクロ。当時は『ユニクロ=ダサい』というイメージでした。
2006年頃からはデザイナーコラボを積極的に行い、デザイン面でスタイリッシュさを打ち出してきます。
・クリストフルメールのUniqlo U
・JW ANDERSON
・Jil Sander
・White Mountaineering
・Engineered Garments
…
着実にイメージアップを図り、『ユニクロ=ダサい』と言う人は、もうほとんどいないんじゃないでしょうか。
品質の良さに目を向けても、もう隙がないように見えます。
安くて、おしゃれで、品質が良い。
ユニクロはそんなブランドになりつつあるように感じました。
デニムの加工について書いた記事もあるので、よかったら読んでみてください。
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