服地パイセン

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【カード糸とコーマ糸】良い綿糸とは、高級な綿花を使えばいいというものではない!

カード糸とコーマ糸

こんにちは。
服の生地についてのブログを書いています、服地パイセンです。

 

洋服の品質表情タグをみてみると、
綿100%やポリエステル100%など、その洋服が何でできているか書いてあります。

 

同じ綿100%の生地でもいろんな生地があって、それらは仕上げの加工方法編み方や織り方使用する糸の太さなどで表情が変わります。

 

どのように織るか編むかだけでなく、糸も洋服の印象に影響します。

 

同じ品質の綿をつかって同じ太さの糸に仕上げても、普通に紡績したものと余分なものを取り除いてから糸にしたものとでは洋服にしたときの表情が変わってくるのです。

 

それは、糸を構成する繊維の整い方が違うから。

 

今回はそんな糸繊維の整い方が異なる、
『コーマ糸』『カード糸』
について解説します。

 

 

 

 

 

 

糸は工程によってグレードが変わる!

カード糸の拡大写真

これは米綿の風合いを風合いを活かしたゴツゴツした生地のTシャツに使われている綿糸の拡大写真です。繊維は整っておらず、かなりまばらになっており毛羽立っています。

逆にしなやかで高級な糸になると、もっともっと表面が整っていてツルッとしています。

 

同じ綿糸でも表面の様子はさまざまあり、カード糸コーマ糸に分類されます。

 

そんなカード糸とコーマ糸を理解するには綿糸を作る工程を知ることが不可欠です。

綿糸ができるまでの工程をざっくり書くとこんな手順になり、①〜⑦を順番に行います。

 

①原綿を固く圧縮する(輸送する)
②紡績工場で解きほぐす
③カーディング工程
④コーミング工程
⑤揃える
⑥撚って荒い糸をつくる
⑦さらに撚りを加えて糸にする

 

この③と④の工程で、カード糸とコーマ糸に分けられます。

詳しくは次の項で説明します。

 

カード糸とコーマ糸の違いとは?

天然繊維は、短すぎる繊維や絡み合っている繊維が含まれています。

採取した綿花コットン

それらを取り除く工程を行うことで、繊維がスッキリときれいに揃って並んだ、毛羽が少ない糸になります。

綿の中に含まれる余分な短い繊維をどれだけ取り除くかでその糸の呼び方が変わります。

 

簡単に言うと、
③のカーディング工程だけを行った糸をカード糸といいます。
カード糸はボトムやTシャツなどに使用されることが多いです。

 

③のあとに④のコーミング工程を経てたくさん不要な繊維を取り除いたもがコーマ糸です。
コーマ糸は、カード糸よりも光沢があって柔らかく、シャツ生地に使われることが多いです。

 

カード糸はスタンダードな糸

もっとも一般的でよく使われる糸です。


糸を作る際に不要な繊維を取り除くカーディングという工程を行い、約5%が不要部分として取り除かれます。

 

このカーディング工程を経て出来上がるのがカード糸です。太番手の糸が多いです。


表面の繊維をあまり取り除かないので、糸の周りには細い毛羽が出るので、あまり光沢がない仕上がりになります。

 

カード(card)とは、すき櫛や毛羽立て機を意味し、荒く短い繊維をすいて取り除いています。

カード糸のTシャツの拡大写真

 

カード糸の特徴

・毛羽が多く、光沢感がない
・硬い生地向き、カジュアル向き

コーマ糸は上質な糸

カーディング工程の後に、くしで髪をすくように針で繊維をくしけずって表面の不要な繊維を除去するコーミングという工程をしたものがコーマ糸です。

 

カード糸にさらに約20%の不良部分を取り除いた上質な糸です。

 

カード糸と比べると短い繊維をさらに取り除くことで毛羽立ちが減り、ツヤのある綿糸になります。

 

より繊維が均一になり、毛羽立ちにくく、糸の表面が綺麗で長持ちすると言われています。細番手が多いです。

たくさん削って、繊維を贅沢に使った糸といったイメージでしょうか。

 

繊維と繊維の密着度合いが高いので、硬く締まっていて滑らかで光沢のある丈夫な糸です。

コーマ糸のTシャツの拡大写真

 

コーマ糸の特徴

・毛羽が少ない
・光沢感がある

 

カーディングやコーミングとはどんな工程か

これまでの説明で、何をしているかはなんとなく理解できると思います。

実際にどんな設備ででどんな工程が行われるのかは動画を見るのがわかりやすいです。


※動画を再生すると音が出るのでご注意ください。

 

www.youtube.com

 

コーマ糸がなぜ高級なのか

カード糸は除去される部分が少ないため安価な糸とされています。

同じ綿を使って糸を作っても手間がかかっている分、カード糸よりもコーマ糸の方が値段は高いです。

 

それに、取り除いた量が多ければ多いほど糸にできる量も少なくなります。

同じ100kgの綿花から糸を作ったら、カード糸とコーマ糸では出来上がる糸の量に違いがでるんです。

 

もちろん、たくさん作れたほうが原価が安くなります。

 

たとえば栽培者から100kgの綿を購入したとします。

綿花には余分なカスがついている

はじめは綿の種や枝の表皮などが含まれていて、
そういった不要なものを取り除くと35kgくらいの原綿になります。

 

この原綿をコーマ糸に紡績する段階で短い綿が落ち、
糸になるのは20kgくらいと言われています。

 

たった20%くらいしか糸にできないので、コーマ糸がいかに高級かわかります。

 

最後に

カード糸とコーマ糸について解説しました。

普通にすごしていたらあまり気にしませんし、商品説明でもここまで言及していることはあまりないのですが、知っていたら面白い知識だと思います。

 

コットンは最もポピュラーな繊維ですが、

意外とどのように作られているのか知らなかったりします。

 

紡績ではさまざまな工程で綿がこぼれ落ちてしまいます。

では、そのこぼれ落ちてしまった綿は無駄になるのかというと、そんなことはありません。

 

その落ちてしまった綿は「落ち綿」といわれ、再利用されているそうです。

 

こぼれ落ちた繊維も貴重な資源、大事にしないといけませんね。

 

 

 

 

 

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