服地パイセン

生地にうるさい服屋で学んだことを活かし、洋服のわかりづらいことをわかりやすく解説します。

サンフォライズド加工とは?デニムの縮みと向き合うことで洋服の未来がどう変わったのか解説!

デニムの縮みとサンフォライズド加工

こんにちは。 洋服の生地についてのブログを書いています、服地パイセンです。

 

『デニムを洗ったら縮んでウエストが入らない』
『洗濯したらレングスが短くなった』

…最近ほとんど聞かなくなりましたが、昔のデニムパンツはよく縮んだのでそんなことが当たり前に起こっていました。

 

デニムやダンガリー生地の製品のタグに『SANFORIZED』と書いてあることがありますが、この表記は防縮加工が施されていることを表しています。

タグに書かれたUNION-MADE-SANFORIZEDのマーク

 

この記事では、デニムが縮んでしまう理由や
サンフォライズド加工が後のファッション業界にもたらした影響などをまとめてみました。洋服についてもっと詳しくなれる内容になっています。

 

 

 

 

 

なぜデニムは縮んでしまうのか?

デニム生地は雰囲気がいいけど縮んでしまう

デニムパンツは洗濯すると縮む性質があります。

 

縮んでしまう主な原因は、
・洗濯による縮み
・デニムの織り方
この2つにあります。

 

綿の生地は縮みやすい

デニムは縮みます。
ジーンズを買ったものの、洗濯したらあまりにも縮んでしまい
小さくて着れなくなるような時代がありました。

 

水に濡れ、乾く過程で縮んでしまうのですが、
その理由は綿素材を使っているからです。

 

これはデニムに限った話ではなく、綿を使った衣類は縮みやすい傾向にあります。
乾くスピードで縮む度合いは変わり、
乾燥機を使って急速に乾かすとかなり縮んでしまうので、
綿の衣類を乾燥機にかける際には注意が必要です。

 

逆にこの性質を利用して、サイズが大きい古着を縮ませるために
あえてコインラインドリーの乾燥機で縮ませたりもしました。

 

生地の織り方が縮みやすい

デニムパンツは洗って水に濡れ、乾くと縮みます。

 

なぜデニムは縮むのか?
デニム生地は糸にテンションがかかっている状態で織りあげるので必要以上に引っ張られています。

それを水に通すとそのテンションがなくなり、本来のリラックスした状態に戻ります。
この落差がデニム生地の縮みになります。

 

生デニムは洗い加工を施してない状態なので縮みやすく、
特にウエストとレングスは縮みの影響を受けやすい箇所です。

 

綾織りのデニム生地は縦方向に伸び縮みしやすい特性があり、デニムパンツの脚は横方向よりも縦方向に縮みやすいのです。

 

逆にウエスト部分は生地を横向きに取っているので、横方向に伸縮しやすいです。

 

サンフォライズド加工のおかげでデニムは縮みにくくなった

畳んで積まれたデニムパンツ

デニムは縮みやすいという欠点があります。
そんなデニム生地の縮みを軽減する加工がサンフォライズド加工です。

 

『製品が縮むのが困るなら、あらかじめ強制的に生地を縮めてみたらいいのでは?』
という発想で、サンフォードという人が生地の防縮加工技術を発明しました。

 

サンフォライズは1920年代に開発された防縮加工技術で、加工はジーンズの生産工程の前段階、生地の状態で行われます。

 

織物は生産工程で強く伸ばされているので、使用や洗濯することによって水を吸うと収縮してしまいます。

この欠点を回避するため、織物に水蒸気を吹きつけて圧力をかけることであらかじめ布を縮めて寸法の安定化をはかる、というのがサンフォライズド加工です。

 

最近はとくに意識することもありませんが、
この『SANFORIZED』の表示により、デニムが縮むか縮まないかを判断していた時代もあります。

 

デニムの縮みは洋服の文化に影響を与えた

元はワークウエアに使われていたデニム生地。
その縮んでしまう特性は、後のカジュアルファッションの文化にさまざまな大きな影響を与えます。

 

有名なものを2つ紹介します。

 

リーバイスは縮むことを逆手にとったブランディングを行った

リーバイスの様々なデニムパンツ

デニムは洗濯すると縮んでしまいます。

 

リーバイスは、デニムを洗って縮め、穿いて部分的に伸ばして〜…ということを繰り返しながら自分の身体にフィットさせることをブランディングしました。
『縮んでしまう』というデメリットを『自分の体にあった一本に育つ』というメリットに置き換えたのです。

通称「シュリンクトゥフィット(Shrink to Fit)」と呼ばれています。

 

育て方もいくつか紹介しており
・程よく洗いながら履く
・リジッドのまま穿き込む。
・穿いたままお風呂に入り穿いたまま乾かす。

 

というもの。洗い方や穿き方によって、デニムの経年変化にかなりの違いが見られます。

 

注意点は育て方によってサイズの選び方が若干異なるというもの。そのようなこだわりも人気の理由のひとつかもしれません。

 

程よい洗濯とともに育てる

まずは定期的に洗濯機で洗って穿いて育てる普通の方法です。

 

エストサイズもレングスも2サイズ大きなものを選び、ジーンズを裏返しでぬるま湯で洗濯する。

洗ってからすぐに穿いて育てるのがおすすめだそう。

 

洗濯の頻度で数ヶ月後の色がまったく異なります。

 

リジッドのまま楽しむ

洗わずに、綺麗な紺色のリジッドデニムを楽しむ方法です。

 

基本的に洗わないので、縮みません。ウエストはワンサイズ小さく、レングスはいつものジャストサイズを選ぶ。
洗わずに穿いていると、生地が伸びてウエストサイズにフィットしていくという育て方です。

 

デニムを穿いてバスタブにつかる

リジッドデニムを穿いたままお風呂に浸かり、自分の体に合わせて一気に縮めるというユニークな方法です。

 

エストはいつもと同じサイズ、レングスは2サイズ長いものを選ぶ。
お湯につかって、デニムが縮むのを待つ。その状態で穿いたまま乾かすと、自分の体形にぴったりと合うそうです。

 

昔やったことありますが、本当に自分の形に育ちます。
そしてそのあとヒゲに沿って擦っていると、バキバキの色落ちをしてくれます。

 

洗って縮めて、自分だけのジーンズにする。
その方法だけでもリーバイスはこだわり、デニムパンツが育つという価値を生み出しました。

 

サンフォライズド加工がもたらした功績

サンフォライズド加工のおかげでジッパーが取り付けれるようになった

サンフォライズド加工はデニム生地の縮みを解消するために考案された防縮加工です。この発明によりジッパーフライの生産が本格化します。

 

フロントがジッパーだとデニム生地だけが縮み、ジッパーが歪んでしまいます。
その結果ジッパーが動かないというトラブルが多発したので、もともとパンツは501のようにボタンフライが主流でした。

 

生地の縮みが軽減されることで、ファスナーをジーンズにつけれるようになりました。
洗っても生地は縮まず安定しているため、ジッパーの開閉に支障をきたすことはありません。

 

そういうこともあり、ジッパーが普及するのが1940~50年代頃。
今思うと絶対にジッパーの方が便利です。

 

だから「サンフォライズ加工デニムにジッパー」というのが謳い文句になるほど、新鮮なものだったそうな。

 

最後に

最近のデニムはそれほど縮みを気にしなくてよくなりました。
その背景には縮みに悩まされた期間があり、
先人の試行錯誤の末に今の製品があると思うとありがたみを感じます。

 

 

 

デニムの加工や洋服の生地について書いた記事もあるのでよかったら読んでみてください。

www.fukujipaisen.com

 

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