服地パイセン

生地にうるさい服屋で学んだことを活かし、洋服のわかりづらいことをわかりやすく解説します。

【撚糸】糸の撚りあわせ本数と服の品質について

撚糸の本数について

こんにちは。 服の生地についてのブログを書いています、服地パイセンです。

 

『これはいい生地だ』
とかよく言いますが、良いか悪いかは人によって異なります。

 

値段?
質感や厚み?
扱いやすさ?

 

どこで判断するのでしょうか。
そもそも

良い服
良い生地
良い糸
良い繊維

とは何なんでしょう?

 

アパレル業界の『良い』という表現には、好みの要素がかなり介在しています。

ただ、ほとんど好き嫌いで決まるのかというと一概にそうでもありません。

 

一般的に『良い』と定義する判断基準は確立されています。それに従うかどうかは別として、とりあえず知っておいて損はありません。

 

糸についてもあります。糸だけでも網羅するにはそれなりの量になるので、今回は『撚糸』と『撚り合わせる本数』についてまとめてみます。

 

 

 

 

 

撚糸とは?

糸はどんな状態になっているか?
よく見ると実は撚り(より)がかかっています。

 

『撚る』とは、ねじりあわせること。

糸をねじりあわせると言われてもピンとこないかも知れませんが、その工程にはとても重要な役割があります。

 

撚糸とは、撚りあわせた糸のことや、撚り合わせる行為のことを指します。

 

なぜ糸を撚るのか?

糸を撚る理由

なぜ糸に撚りをかけるのでしょう?

 

例えばカイコからとれる生糸は、繭からほぐし出した状態では細すぎ、そのままでは糸としては使えないので何本かを束にします。

この繊細な生糸も、束にして軽く撚りをかけると丈夫な一本の糸として機能できるようになります。


撚糸は強度の足りない一本の糸を、糸として使えるようにするため生まれました

 

そこから発展して、異なる2本の糸を撚りあわせたり、何本か束ねて逆方向に回転させて一本の糸にしたり、いろいろ工夫されます。

そのうちに生地の風あいや肌ざわり、丈夫さなどがまったく違ってくるということがわかってきてさまざまな効果が生まれました。


現在では技術も進歩し、いろんな撚糸工程が行われており、糸に様々な表情をつけています。

 

糸を撚ることで強度が増す

お互いの糸が補強し合い、1本の糸と比較すると2倍以上の強度になります。

 

2本の糸をより合わせた場合、太さは2倍になるのに対して強度は2.5~3倍になるといわれています。

 

これはなぜかというと、糸は一番弱い部分から切れるのですが、その部分がもう片方の糸で補強されるからです。

 

 

撚ることでムラなく均一になる

何本か撚り合せた糸は太さが均一な糸になります(その分太さはでます)。

また単糸は糸の太さにもムラがありますが、2本の糸を撚り合わせることでムラが合わさりあって糸の太さが均一になり安定したきれいな糸になります。

 

場合によっては3本以上の糸をより合わせることもあり、より合わせる本数が多いほど均一になるといわれています。

複数の糸をより合わせることで糸にコシが出て、布地の平な織物や短繊維といったシャツ地といったものに使われることが多いです。

 

 

糸の撚り合わせ本数と種類について

糸を撚り合わせる本数

紡績して出来た1本の糸の状態を『単糸』といいます。

その単糸を2本以上の単子を撚り合わせて作った糸を『撚り糸』といい、撚り合わせる糸の本数によって分けられ、呼び方も異なります。

 

・双糸
・三子糸
・四子糸

など。

 

糸の本数で特性も変わってくるのですが、それぞれどんな糸なのでしょうか。

 

 

単糸(たんし)

単糸とは、紡績した1本のままの糸のことです。


単糸はカジュアルな風合いの生地に向いていて、デニムやダンガリーなどはほとんどが単糸で作られます。

糸使いの生地は糸本来の個性が活きるソフトな風合いになるので、ムラ糸の形状を活かす生地作りをする場合は、単糸使いのほうが表情のある生地ができます。

 

50年代以前のヴィンテージウエアの色落ちや風合いが良いのは、単糸を使っているからとも言えます。

 

双糸などと比べると、製造時のコストも低くなります。

 

双糸(そうし)

2本の単糸を撚り合わせた糸を双糸といいます。

糸を撚り合わせることで丈夫になり、糸にコシもでます。

1本のときよりも糸が太くなりますが、太さを均一にすることができます。コットン製で表面の平滑なシャツ地には双糸が使われている事が多いです。

ハリツヤのあるドレスシャツは双糸が多いです。

 

単糸より高価です。

三子糸(みこいと)、三本子(みっこ)

三子糸は3本の単糸を撚り合わせた糸で、

三本撚りとも言います。

 

双糸は横長の糸になっていて、三子はより丸に近い形になっています。

この形状の違いは、生地にした際に肌触りに影響してきます。

丸みを帯びた糸の方が角がなく、肌触りも良くなります。

 

コストが掛かるため流通量はかなり少ないです。

 

 

四本撚り〜多本子(たっこ)

4本の単糸を撚り合わせた糸で四本撚りと言います。

4以上は多本子(たっこ)と呼ぶことが多いですが、洋服ではほとんど見ることはありません。

 

単糸を2本撚り合わせると糸は2倍の太さになり、3本撚り合わせると糸の太さは3倍になり…。

このような感じで撚り合わせれば撚り合わせるほど糸は太くなって行くのです。

 

 

撚糸の表示方法

あまり目にすることはないかもしれませんが、生地はどんな糸を使っているのか明記されていることがあります。

 

どのように表示されるのかというとたとえば

50番の単糸は「50/-」
100番の双糸は「100/2」

という表記になります。

 

「50/2」と表示してある場合は50番手の2本の糸を撚り合わせた双糸という意味です。

 

 

糸の撚りあわせのまとめ

糸を撚り合わせることで、

・強度を増す
・均一にする

などの効果があり、きれいな表情を活かしながら強度アップやコシを出すことができます。

 

 

良い生地は「番手が良い」と表現したりするんですが、ほそーーい単糸を撚り合わせてできた双糸は、毛羽立ちが少なく表面はさらさらとしていて硬く締まっているという特性があります。

 

そういうこともあって

値段が高くて良い生地=生地が薄い

とも言えます。

 

品質については、双糸であるということだけではなくて、糸の太さ(番手)や撚りの強さ(トルク)なんかも大きく関わってくるので、またそのうち書いてみようと思います。

 

 

 

 

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