こんにちは。
服の生地についてのブログを書いています、服地パイセンです。
二宮金次郎の像は薪を背負い、歩きながら読書をしています。
『働きながらも勉強をする』
ぼくが小学生の頃は、勤勉の象徴として校庭にその像がありました。
今は『歩きながら読書をする姿が歩きスマホを誘発して危険だ』
ということで座って本を読むようになったそうです。
そんなニュースを数年前にみました。
同じものを見ても時代で捉え方はちがう。
昔は現代のようにビュンビュン車は走っていませんし、
道で命を落とす危険もなかったんでしょう。
少なくとも昔よりは豊かになりました。
『歩きスマホは危険だ』と言ってるんだから、読書も同じですね。
たしかによそ見をしながら歩くのは良くないかも知れません。
これは良い、これは良くないという価値観は時代時代で変わるものなんですね。
「古き良き服を再現する」ということ
「昔は良かった」
とはよく言いますが、服にもあてはまるのでしょうか?
アパレル業界は趣味趣向の強い業界です。
生地や縫製にこだわったブランドは、風合いのある昔ながらの生地を好みます。
例えばヴィンテージデニムのような、凹凸があり、ザラッとしていて風合いと粗野感ある生地。
これは、当時の技術では糸をを均一に紡ぐことができず、生地を均一に織ることができなかったためにそうなったものです。
早い話、品質の良いものではありません。
そういった風合いもヴィンテージでは『アジ』があるとし、好まれています。
現在の織機は、均一に生地を織る能力が上がっているので、クオリティは格段に向上しています。
けれども当時と全く同じ服はは今はもう製造できないものなので、
希少価値に心を惹かれてしまうという部分も大きいでしょう。
そしてヴィンテージを再現した服も多いのですが、そういう服って高いですよね?
その原因はいくつかありますが、ひとつわかることは、紡績工場の停滞にあります。
残念なことに、古き良き素晴らしい生地を作ることができた機織り工場が、次々と閉業していっているそうです。
古い機機の修繕もコストの回収が見込めないため、実働している物は極わずかという現状です。
生産数が少ないということはそのまま服の値段に直結するので、値段が高くなってしまうんですね。
ヴィンテージ、アンティーク、レギュラー古着それぞれの意味は
古着でよく聞く「ヴィンテージ」や「アンティーク」っていつの年代を呼ぶものなのかはすごく曖昧です。
「30年以上前につくられたもの」とか「70年代より前のもの」とかって言ってるのを見るんですが、どうなんでしょうか。
僕の感覚ではこんなかんじです。
ヴィンテージとは
ヴィンテージは長い年月を経て年代的価値を持ったもの。
古着の中でも古くても価値のある物を指しているというイメージ。
じゃあどれくらい古いとヴィンテージと呼ぶのだろうという所でしょうか。
経験上、あまり明確な基準は決まっていないように思います。
僕が15年くらい前に古着屋で働いているときは、70年代以降のものは見向きもされませんでした。
ある人は「ヴィンテージは70年代以前のもの」と言ったり、ある人は「80年代もヴィンテージだ」と言ったりするように定義がハッキリしないんですよね。
以前まではヴィンテージじゃなかったものがヴィンテージの仲間入りをしたり、
ヨーロッパや北欧の古着もユーロヴィンテージとして価値があがったりなど、時代とともに変化しています。
そうゆうこともあり、近年価値が上がってきたスウェーデン軍のコートについて書いた記事もあるのでよかったら読んでみてください。
ユーズド、レギュラー古着とは
レギュラー古着は、ヴィンテージほど古くなく、そこまでの市場価値のないもの。
アイテムをあげると、
80年代以降のリーバイス501、
90年代のチャンピオンのリバーススウィーブ
などでしょうか。
レギュラーの中でも、特に品質や雰囲気が良い物は、グットレギュラーなんて呼ばれたりするようです。
アンティークとは
アンティークというカテゴリーは洋服にはあまり使わず、雑貨や家具などに使うのが一般的だと思います。
100年以上前の物を指すように、かなり古いものを指す場合が多いです。
デッドストックとは
デッドストックは一度も着ていない新品状態のものを指し、
廃番などになって保管されていたものです。
デッドストック自体の意味は「不良在庫」「売れ残り品」というようにアウトレット商品と同じ意味でネガティブなイメージを受けますが、ヴィンテージ的な解釈をすると「古い物が新品状態で出てきた価値あるもの」としてポジティブなイメージで扱われます。
年代価値や時代ごとのデザインが加わっていくと途端に付加価値が付き、魅力的な物に変わります。
不良在庫といえばそうなんですが、昔のものが手付かずで掘り出されるとテンション上がります。
語れるヴィンテージのディテールうんちく
ヴィンテージのディテールを再現するブランドは多いです。
今となっては当時のディテールの踏襲として、完全にデザインなんですが、その当時は機能的な意味のある意匠として生み出されました。
そんなディテールのうんちくをいくつか書いてみます。
空環はなぜ存在するのか?
ヴィンテージのアメカジウェアのディテールには、当時のアメリカの時代背景や縫製技術等に基づいた理由があります。
ヴィンテージのディテールを踏襲したシャツに多く見られる「空環(からかん)」と呼ばれる仕様。
写真のようなワークシャツの裾の仕上げで、
最後の部分を縫いきって仕上げてある仕様のことを「空環止め」と言います。
空環止めはアメリカの大量生産の時代に、生産の効率化を図るために用いられた仕様だとされています。
現代の服はヴィンテージらしさを強調するために、チェーンの余り糸をわざと長く垂らしているんだとか。
通常、縫い終わりの部分は返し縫いで補強するのが一般的ですが、そうではなく縫ってきた糸を環縫いのまま糸だけで編みこんでいき、このようなヒゲ状のものとして残してあります。
糸が絡まった状態になっているので、ほつれ防止の効果があるそうです。なので切ってはいけません。
知らなければついつい切ってしまいそうですね。
当時のミシンには簡単に返し縫いできる機能がなかったので
生産効率を上げる為にひと手間省いた糸始末で、
古き良きアメリカの匂いを残すディテールなんです。
ネコ目ボタンは何のために?
まるで猫の目のような形をしていることから猫目ボタンと呼ばれる。
主に60年代以前のアイテムにみられます。
ワークシャツやミリタリーシャツなんかに多く使用されてきました。
見た目も特徴的ですが、表にボタンの付け糸が出ないことから糸が擦り切れる事が少ないという機能面から付けられていました。
特に、ほふく前進を頻繁に行う軍で活躍したそうです。
バックシンチはなぜ無くなったのか
バックシンチはパンツをサスペンダーで吊って穿いていた時代にウエストサイズを調整するためのものでした。
ベルトと同じ原理です。
1930年代にはベルトでパンツを穿く人が増え、シンチの存在意義はほぼなくなりました。
その後第二次世界大戦が勃発。
アメリカも物資統制を余儀なくされ、衣類も不必要なパーツは全て廃止に。
この時バックシンチは完全に姿を消したと言われています。
最後に
この記事は、2021年の秋頃に下書きしていたものなのですが、なんかぱっとしないというか、決め手にかけると思って放置していました。
レギュラーとかヴィンテージとかについてしばらく考えたり、調べたりしましたが、明確な定義は本当に曖昧で線引きが難しそうです。
そんなところで、ブログを通じて交流してくださっているトビウオギタオさんがヴィンテージについて有益な情報を教えてくださいました。
アメリカの関税法では、製造してから30年以上経過すると ヴィンテージとされ、さらに100年を越えるとアンティークと定義されるとのこと。
REDWING COLUMN NO.84 ヴィンテージレッドウィング - 赤い羽BLOG
僕の中では奥歯に挟まったものが取れたような、
なんかすっきりしたような、そんな感覚を覚えました。
そのあともコメントをくださり、20年説、30年説といろんな説があるようなんですが
とりあえず「アメリカの関税法」で、ある程度定義されているようです。
そのことを知れただけでも十分ありがたいです。
こういう雑学はすごく好きです。
ありがとうございます、トビウオギタオさん。
トビウオギタオさんはREDWINGのおもしろい情報や、横浜のグルメを中心にブログを書かれている方です。
アメカジ好きなら絶対おもしろいブログなので是非読んでみてください。
mrredwingchildren.hatenablog.jp
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