服地パイセン

生地にうるさい服屋で学んだことを活かし、洋服のわかりづらいことをわかりやすく解説します。

「植物由来の繊維で環境負荷軽減」とは具体的にどういうことか。

植物由来って結局なに

こんにちは。
服の生地についてのブログを書いています、服地パイセンです。


「植物由来の繊維が環境負荷を軽減する」ということは、どういうことなのか。

 

なんとなく天然の繊維の方が環境にも人体にも良さそうな気がする、くらいで具体的に理解していませんでした。もしかしたら皆さん知っているのかもしれませんが、僕は知りませんでした。


調べていって、今の自分なりの答えがわかったのでまとめてみます。キーワードは【脱炭素】です。

 

 

 

植物由来の繊維は「脱炭素社会」に貢献できる

二酸化炭素を排出する工場

 

地球温暖化の原因のひとつに

大気中の二酸化炭素の濃度の上昇が挙げられます。

そこで、二酸化炭素の濃度の上昇を抑えることで地球温暖化の進行を抑えようとする動きがあります。

 

 

化学繊維メーカーは地球環境にとても配慮しており、素材開発においても「エコロジー」をテーマのひとつとして運営しています。

 


温室効果ガス削減につながる製造工程の見直しや、リサイクルシステムの確立などは各社力をいれて取り組んでいるところです。

その中でも特に注目されているのが、「植物由来の原料を使った素材の開発」です。

 

衣類に使われる素材は見た目も機能性も重要なので、単に環境に優しいというだけでなく、素材感や機能性もあわせ持つ必要があるので、素材の開発はたいへんなものだと思います。

 

カーボンニュートラルという考え方

 

カーボンニュートラルの画像

植物由来の原料を使った商品が注目されている背景には
カーボンニュートラル
というものの見方があります。

 

カーボンニュートラルとは、何かを生産した際に、排出される二酸化炭素と吸収される二酸化炭素が同じ量である、ということです。

 

石油などの化石資源とは異なり、植物は成長の過程で、光合成を行い二酸化炭素を吸収します。

ということは、商品の生産時や廃棄時に二酸化炭素を排出しても、原料になる植物が成長過程で吸収した二酸化炭素量で相殺されます。

 

仮に植物を燃やして二酸化炭素を発生させても、排出される二酸化炭素の中の炭素原子は、もともと空気中に存在した炭素原子を植物が取り込んだものなので、大気中の二酸化炭素の増減には影響を与えない。


そのように二酸化炭素の排出量を差し引きゼロとみなされるようにすること。

 

 

商品が消費者に届くまでには輸送なども必要なので、二酸化炭素を出さないというのは今のところ不可能なのですが、商品のライフサイクル全体で考えると、二酸化炭素排出量は激減できます。

 

例えば、製造から排気までに排出される二酸化炭素の量を、森林保全などにのプロジェクトにおける削減とセットにして考える取り組みなどが行われています。

 

カーボンゼロ、カーボンポジティブ、カーボンネガティブ

 

上で説明したような事業活動を継続しながら「持続可能な社会の実現」にむけた取り組みは、カーボンゼロとも言われます。

 

また、
排出され二酸化炭素が吸収量を上回る場合は「カーボンネガティブ 」(排出>吸収)といい、
排出される二酸化炭素が吸収される量を下回る場合は「カーボンポジティブ」 (排出<吸収)といいます。

 

 

右脳派感覚人間の僕は二酸化炭素の排出が多い=悪いイメージなので、ネガティブ、吸収の方が多い=良いイメージなのでポジティブと覚えています。

どっちがどっちかを覚える必要は特にないのですけどね。

 

カーボンニュートラルは何がきっかけで注目された

カーボンニュートラルに注目が集まり始めたのは、2020年10月の菅首相所信表明演説がきっかけです。

 

そこでは、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを表明しました。

これからますます環境への意識が高まっていきそうですね。

 

 菅政権では、成長戦略の柱に経済と環境の好循環を掲げて、グリーン社会の実現に最大限注力してまいります。
 我が国は、二〇五〇年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち二〇五〇年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします。

www.kantei.go.jp

 

カーボンニュートラルへの取り組みは日本だけでなく、世界各国で取り組みが進められています。

 

化石資源には問題があり、植物由来の繊維は製造エネルギーの面でも環境負荷を低減できる

 

繊維の製造に必要なエネルギーという面でも、植物由来の原料は環境への負荷を低減することができます。

 

化学繊維の場合、化石資源の採掘から精製までにも多くの製造エネルギーが必要です。

原油の輸送、製油所での成分の抽出などにもかなりの二酸化炭素が必要なんですが、植物由来の繊維の方が製造エネルギーが少なくてすむんだとか。

 


化石資源は限りがあるので、このまま採掘を続けていくといずれは枯渇してしまいます。
ところが植物原料は再生可能な資源です。

もちろん植物由来原料の使用が乱伐や食糧問題につながってはいけないので、計画栽培や非加食性植物を使用するといった配慮もされています。

 

植物由来原料を使ったポリエステル

合成繊維の中で最も生産量の多いポリエステルでも、植物由来の原料を使った「バイオポリエステル」が注目されています。

ポリエステル繊維は約70%の「テレフタル酸」と約30%の「エチレングリコール」という成分からできています。

そのエチレングリコールを植物から作るという取り組み。

この方法だと、全体の約30%が植物由来原料になります。

 

植物由来のポリエステルの成分

具体的には、これまで石油から作られていたものを「サトウキビ」や「トウモロコシ」で代用する。新たに伐採するのではなく、食用に回らなかった、使われなかった部分を利用する。

 

捨てられていた部分を使うので、植物の乱伐にもつながりません。

 

前に紹介したソロテックスが、環境に優しいのは、約30%が植物由来の成分でできているからです。

 

そして現在は100%植物由来のポリエステルの開発に尽力しているそうです。

 

 

www.fukujipaisen.com

 

カーボンニュートラルの問題点

脱炭素には広大な土地が必要

ここまで良いことばかり書いてきましたが、やはり問題もあります。

 

カーボンニュートラルを拡大して、化石燃料・原材料を植物由来燃料・原材料に転換していくと、植物を育て保全するための広大な土地が必要になります。


例えば日本では国土面積の約7倍の面積が更に必要だとされており、世界全体でも現存の耕作地・牧草地・森林の合計面積の1.2倍の面積が更に必要だとされています。

これを改善するためには、成長サイクルの早い植物を採用したり、生産力を向上させる必要があります。

 

最後に

 

「観測史上初」といった異常気象に見舞われ、大きな被害を受けることが多くなってきましたが、地球の温暖化が原因ともいわれています。

 

環境への意識の高まりから、アパレルブランドも環境に配慮した循環型素材に対する要望が強まっています。

今回のテーマである植物由来の繊維ももちろんその一つで、持続可能な低炭素社会の実現に大きく貢献しています。

 

 

「化学繊維は石油を使うのが問題なら、天然繊維のコットンを使えばいいのでは?」
という意見もあると思いますが、そのコットンも問題だらけなのです。
コットンの環境問題について書いた記事なので、よければあわせて読んでみてください。

www.fukujipaisen.com

 

脱炭素には様々なアプローチがあるようです。

服をリサイクルすることもそうですし、ゴミを分別して資源にすること。

まずは知識をつけて、自分でもできることからやっていこうと思いました。

 

 

感想などをコメントいただけるのが、何よりとても嬉しいです。

はじめましての方も、思ったことはお気軽にお書きください。

 

 

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