こんにちは。
洋服の生地についてのブログを書いています、服地パイセンです。
『インディゴと藍染め』
この2つを同じ物だと思っている人は案外多いと思うのですが、実は違うものです。
デニムの色落ちが味わい深いのは、藍染だからだと思っていたので、僕もはじめて知ったときはなんだか少しショックでした。
色合いなどはとても似ているんですが。
実際に何が違うか解説していきます。
インディゴと藍染の違いを解説します
藍染めと合成インディゴの染め上がりは、ぱっと見ではあまり違いがわかりません。
違いを簡単に説明すると、
藍染めは天然染料で染めますが、
インディゴは化学染料を使用して染めるということが大きく違います。
藍染めはすくもという天然染料を使用します。天然物なので安定して染めるが難しく、手間もかかるので職人の技術も必要です。
それを模して合成染料で化学的に染めたものが合成インディゴによるインディゴ染めです。
もともとインド産の藍が使われたことから『インディゴ』という名前なんですが、現在では合成染料で藍色に染めることが多いんです。
本来ならインディゴは天然の藍色染料で、蓼藍(たであい)などの植物の葉や茎から採ったものですが、今日ではインディゴ=合成インディゴという意味合いが強く、藍染めとは別ものとして認識されています。
ということもありこの記事でも
インディゴ=合成染料のもの、
藍染=天然染料のもの、
という定義で進めていきます。
インディゴとは
インディゴはブルージーンズに使用される鮮やかな藍色に染まる染料で、主な用途は綿の服やデニムの染色です。
「藍」の主成分を人工的に製造した合成インディゴが一般的に使用されています。
インディゴは安価で大量生産が可能です。
人工なので不純物がなく鮮やかに染まり、摩擦や洗濯により色落ちするという欠点が、ジーンズの魅力のひとつになっています。
藍染めとは
藍染は古くから着物や浴衣、帯、のれん、などあらゆるものに使われていました。
ジーンズの染色としてインディゴが主流になり、アパレル製品として藍染めはほとんど使われることがなくなりました。
藍染は糸の中まで染めの色が浸透し、時間を経ることにより深みのある色が定着していき、インディゴ染めに比べると色落ちしにくいのが特徴です。
色落ちしてもインディゴ染めデニムのよりも均一でメリハリのない色落ちをします。
天然ということもあり藍染めのほうがもちろん高価です。
インディゴもっと詳しく
インディゴ製品の魅力はなんといっても色落ちで、自分だけの色落ちを楽しむことができることです。
インディゴについてもっと詳しく書いていきます。
インディゴは水に溶けない
インディゴ染料は水に溶けないのでそのままでは綿糸を染める事は出来ません。
アルカリ性の強い還元剤が染料分子を溶解させ、それを水に溶かすことで初めて布を染めることができます。
インディゴは色が入りにくく一度染めただけでは濃い色に染まらないので、何度も何度も浸けては引き上げる作業を繰り返しインディゴの色を濃くしていきます。
インディゴ染料といえばデニム
デニムの歴史には諸説ありますが、18世紀中頃のアメリカ西部の労働者が丈夫な服を必要としたことから出来たと言われていて、現在では世界中で年間10億着以上の青く染められたデニムが作られているそうです。
ちなみにデニム生地はたて糸にインディゴで染められた糸、よこ糸には晒糸(さらしいと)がつかわれます。
よこ糸の晒糸は生成色の糸で、ジーパンの穴があいたところから見える糸は青く染まっていない糸が見えますね。
たて糸に使われるインディゴ糸はロープ染色という方法で染められています。
ロープ染色とは
デニムのたて糸を染色する代表的な方法としてロープ染色という方法があり、デニム生地を染めるためにできた染色方法だそうです。
ロープ染色はロープ状に束ねた500本くらいの糸を高い位置からインディゴ染料の入った液槽に漬けては引き上げる作業を繰り返し行います。
引き揚げたばかりの糸は黄色や黄緑色でデニムの色とはかけ離れた色をしています。
それが空気に触れることで、インディゴの成分が酸化し青色に発色します。
この工程を何度も繰り返すことで濃度が上がり、鮮やかなインディゴブルーになります。
ロープ染色では綿糸は周りから少しづつ染まっていくので、糸の芯に近づけば近づくほどブルーが薄くなるので芯まで染まりません。
芯が染まらず糸の中心が白いことから「中白」と呼ばれます。
この「中白」であることが、ジーンズを穿き込むことで表面が削れて少しずつ中の薄い色が現れてくる原因なのです。
繊維に強く定着しないため、使い込んだり洗い込んでいくうちに色がだんだんと落ちていき、履いた時によくできるシワ部分、膝が曲がる部分などは特に色落ちしてインディゴ特有のディープで使い古した表情が生み出されます。
藍染めもっと詳しく
藍染は糸の芯までしっかりと染まり、奥深い色合いが特徴的です。
全くの色落ちがないわけではありませんがインディゴ染めのようには落ちません。
そんな藍染について詳しく書きます。
藍とは
「藍」は、ある種の植物の中に含まれている成分から採った、藍色の色素を含む染料のことです。藍の色素をインディゴとよび、これを繊維に染めつけることで藍色に染まります。
それを生み出す植物のことや、色をさしたりもする。
穿き込んでいくうちに深みのある美しい藍本来の色が出てきます。化学染料では決して出せない、それが天然藍ならではの深みある色合いなんですね。
藍染の染料
藍染には植物の葉を原料として作られた、「すくも」という染料をつかい、これを固形化したものを「藍玉」と呼びます。
藍染めのための染料『藍』は様々な植物から作られます。
・ヨーロッパではアブラナ科のホソバタイセイ
など使われる植物は違いますが、これらの色素はインディゴと呼ばれる成分で出来ています。
インディゴが主流になった理由
天然染料の藍染と合成染料のインディゴ。
藍染の染料を人工的につくろうと考え、石油を原料として合成インディゴ染料の開発に成功しました。
そして現在の藍色のアパレル製品は合成インディゴのものがほとんどです。
ではなぜ合成インディゴが主流になったのでしょうか。
手間の問題
1つの要因は手間の問題です。
藍染は天然染料を使用するので不純物が多く含まれ、染めにムラが出てしまったり保管も大変です。
品質を保つために手間がかかります。
藍染とは異なり、インディゴ染は不純物がなく綺麗に染め上げる事ができ、保管も簡単なのです。
コストの問題
他にコストも要因の一つです。
藍染は天然の植物から採るので大変高価なもの。栽培にお金と労力など様々なコストがかかります。
藍染は量産しにくくコストがかかるため、インディゴ染めの生地よりもはるかに高額となります。
現在では国内の藍染は細々と各地で行われているくらいになってしまったそうで、徳島県以外で日本産のすくもを見ることはほぼないんだとか。
まとめ
藍染の成分もインディゴと呼ばれるので、もともと藍染とインディゴ染は同じような意味でした。
植物の絞り汁で糸を染めるということはずいぶん以前から行われていましたが、手間暇がかかり効率的ではありません。
そこで登場したのが、合成インディゴ。
1878年にドイツでインディゴ染料を化学的につくる製法が完成します。
そして大量生産には合成インディゴが使われる様になったというわけなんですね。
アパレルと世界の産業革命についてまとめた記事でも少し触れているので、よかったらあわせて読んでみてください。
染料の発展についてすこし触れています。
デニムの加工についてはこちらをどうぞ。
いつもコメントやはてなブックマークいただきありがとうございます。
とてもありがたく、何よりとても励みになります。
はじめましての方も、思ったことはお気軽にコメントお願いします。