こんにちは。 洋服の生地についてのブログを書いています、服地パイセンです。
僕は古着が好きです。
現代の洋服の方が品質は良いのですが、昔の生地ならではの有機的で趣のある風合いを現代の洋服ではなかなか再現できない、古着のそんなところが好きです。
生地も素材も縫製も現代のものは違うのですが、実は染料や染め方は時代とともに変化、進化しています。
天然の染料と人口の染料の違いということではなく、同じ合成染料でも現代の染め方と昔の染め方は大きく違います。
近年では『硫化染め』という染め方はかなり減りました。ヴィンテージウエアをとことん再現しているようなブランドであれば、昔と同じ硫化染めの生地を使ったりします。
「ヴィンテージの風合いを再現したチノパン」
「バックサテンの軍パン」
など、アメカジや古着好きには馴染み深いアイテムです。
なぜ減少しているかというと、SDGsや環境問題により染料の使用を制限されているので、知らないうちに使いづらくなっているからです。
今回はそんな染料についての問題と、染色がどういうものか、解説してみようと思います。
染料は環境問題と直結している
環境汚染や化石燃料の枯渇を危倶する傾向が高まり、サスティナブルやエシカルなんかがここ最近ずっと取り沙汰されています。
染料においても、化学物質に対するアレルギーや染料廃液による環境汚染などが問題視されています。
繊維工場や染色工場では、たくさんの化学薬品・化学染料を使います。
これらの化学物質はどのように処理されるというと、そのまま河川へ放流されるそうです。
河川に流れ出た化学染料排水は、汚水として川を下っていきます。その汚水が農作物を栽培する農業用水や生活用水として使われます。
繊維にも染まりやすいもの、染まりにくいものがあって、染まりにくいものは何度も染め重ねて濃さを増す必要があります。
そんな繊維を濃色に染める方法として、繊維の前処理を施すことがあるんですが、強アルカリ剤等の薬品を使用する場合があり、決して環境にいいとはいえないものなのです。
なぜ染まりにくいコットンが染まるのか?
染まりやすい繊維、染まりにくい繊維があると書きましたが、実はコットンは染まりにくい部類に入ります。
醤油をこぼしたTシャツはすぐシミになりますが、案外簡単に色を落とせます。
そもそも生地が染まる仕組みは、生地の分子と染料の分子がくっついている状態になるからです。
それぞれの分子は官能基という『分子をつなぐ手』のようなものでくっついています。
ここで知っといてほしいのが、
コットンなどの植物性の繊維は染まりにくく、シルクなどの動物性繊維は染まりやすいといえます。
何が違うかというと繊維を構成する成分が違います。
シルクは動物性のタンパク質。
10種類以上のアミノ酸から構成されており、バリエーション豊かな手がたくさんあり、様々な色素分子の手とくっつきやすく、染まりやすいんです。
対してコットンはセルロースという高分子で、手が3本生えたブドウ糖という分子1種類だけでできています。
ブドウ糖だけなのでバリエーションがなく、色素分子の手とくっつきにくく染まりにくいんです。
じゃあどうやってコットンを染めやすくするかというと、金属イオンという水に溶けている状態の金属を染料と繊維の間に入れてあげます。
金属イオンはさまざまな手を持っていて、そのおかげで生地に染料がくっつきやすくなる。つまり染まりやすくなるというわけです。
そもそも染料ってなに?
生地に色がついているのは染料で着色しているからです。
その染料には天然染料と化学染料があります。
どういうものか簡単にですが解説します。
天然染料は扱いが難しい
動植物から採取した色素で、
繊維を着色できるものを天然染料といいます。
染料の素材となる植物の状態で色の調子や染め上がりにムラがでやすく、色が褪せやすいという特徴があります。
現代では、一部の手工芸品に使われるくらいではないでしょうか。
合成染料はなぜ普及したのか
合成染料は、石炭や石油などを原料として、合成された染料のことです。
1900年初頭までにイギリスやドイツで開発が進み実用化されました。
合成染料が普及したのには理由があります。
天然染料と違って染料自体の質が一定なので、色の数値化ができ、色の再現性が高いことと安価であることが普及した大きな理由です。
硫化染料(サルファ)の特徴
合成染料の中でも近年使用が減っていってるのが硫化染料です。
硫化染めは主に綿の染色に用いられ、色が濃くなったように見えます。
というのも、昔は色が濃いモノが高級だとされていた時期があって、硫化染めでごまかしている時代もありました。
ですが硫化染めは酸化しやすく、使うほどに色が抜け独特の風合いになります。
硫化染料は摩擦に若干弱い特性があることから、チノパンなど経年変化のアタリを出したい衣料への使用されたり、ストーンウォッシュなどの中古加工をする衣料にも用いられます。
染色技術が向上し、硫化染めも廃れてきて、今ではヴィンテージ復刻くらいしか使用されてません。
硫化染料は染料に硫黄原子を含む水に溶けない染料で、硫化ナトリウムで還元して水溶性とし、繊維に染着させます。
これを空気にさらしたり酸化剤で酸化させて元の不溶性染料にもどし、
布の脆化を防ぐとともに発色を更に良くします。
製法が簡単で値段も安く、水に溶けないので洗濯に耐え、日光などにも比較的強いので染料にぴったり。
しかし、染色時に硫化ソーダを使うので排水処理や環境負荷の問題でその使用量が大幅に減少しているそうです。
バットダイと硫化染の違い
昔の染料といえば、バットダイも有名です。スレン染めや建染(たてぞめ)とも言います。
バットダイは60〜70年代半ばぐらいまで合成インディゴの代用品として主にカバーオールやペインターパンツなどのワークウェアに採用されていました。
色落ちがしづらく合成インディゴよりも安価で、堅牢な染料ですが、明るい色は染めにくかったり、原価が高くなるので現代ではあまり使用されないそう。
水に溶けず、一度アルカリで還元して水溶性にして染着。空気によって酸化しもとの不溶性となって色が着くという工程は硫化染と似ているのですが、硫化ナトリウムを使用しないのが大きな違いです。
最後に
硫化染めの生地や製品ががかなり少なくなってきており、もしかしたら今後手に入らなくなる可能性も否めません。
そういった話題を耳にしながら、なんとなく感じたことがあります。
『何で染めているか』
ということについて、日本人は平安時代あたりからこだわっているそうです。
現代は様々な色を作り出せますが、平安時代は天然染料しかないので色彩に乏しい。
同じような色でも
『何の植物で染めたものか』
『何回染め重ねたものか』
というところに人々の関心があり、それによって布の価値が決まったそうです。
他にも洋服の生地に関することを書いているので、チェックしてみてください。
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