こんにちは。 洋服の生地についてのブログを書いています、服地パイセンです。
秋頃に古着屋でラルフローレンのチェックのネルシャツを購入しました。特に珍しいものでもありませんが、古着らしくヤボったいシルエットとくたっとしたネルの生地感がお気に入りです。
襟のボタンダウンや背中のボックスプリーツなど、いかにもラルフローレンらしいアメトラテイストのカジュアルシャツという雰囲気も好きです。
僕はこういうシャツをラフに着崩すのが好きなんです。
今回は、そんな『ネルシャツ』というアイテムについて、服地専門家の僕らしい掘り下げ方で記事を書いてみます。
ネルシャツを簡単にいうと
「ネルシャツ」という名称で定着してますが、
正式名称はフランネルシャツです。
デニム生地を使用したパンツが「デニムパンツ」と呼ばれるように、
フランネル生地で作られたシャツをネルシャツと呼びます。
そのまんまですね。
毛羽立った柔らかいフランネル生地を使用したシャツで、
秋冬用の暖かいカジュアルシャツの定番です。
『ネルシャツといえばチェック柄』、みたいな印象がありますが、
柄になっているかどうかは関係ありません。
ネルシャツについてざっくりと理解するにはここまでで十分です。
ここから先は、ネルシャツの生地や加工について掘り下げて書いていくので、
ご興味があれば是非読んでみてください。
ネルシャツを詳しく解説
ネルシャツの歴史は古く、起源も諸説あるようで、フランネルという語源自体はっきりしないみたいですが、とりあえずワークシャツのようです。
アメリカでは、1930年頃からBIGMACやファイブブラザーズ、BIGYANKなど様々なワークウェアブランドからフランネル生地のワークシャツが作られていました。
色んなメーカーが揃って製作していることから、相当な需要があったんだと思います。
保温性のあ?ワークシャツなだけに、外で働く土木・建築関係や、メカニックの間でも愛用されてきました。
シャンブレーシャツより暖かく、またウールのシャツより扱いやすく安いのが人気の理由だったんではないでしょうか。
当初フランネルはウールで出来てましたが、最近ではコットンのものが一般的です。
60年代頃のウールのネルシャツはチクチクして、すごく着にくいものでした。
生地の雰囲気はいいんですけどね。
70年代頃にサーフィンやアウトドアなどのカルチャーの拡がりとともに、日常着として着る若者達が増えてきたことから、カジュアルかつ実用的なファッションアイテムとして、この頃から広まっていったんだと思います。
ジーンズがファッションアイテムとして受け入れられるようになったのととても似ていますね。
フランネル生地について
さて、ネルシャツの生地についてみていきます。
フランネルは平織や綾織の綿織物を起毛させたものです。
コットンのフランネルは肌触りが柔らかくて暖かいので、パジャマや子供用の服なんかに広く使われます。
スーツやジャケットなんかに使われる「フラノ」もフランネルの一種で、フランネルよりやや厚手のものをそう呼ぶことが多いです。
起毛させるメリットは?特徴は?
「起毛」というのは、生地の表面にある繊維を羽毛立たせる加工技術のことです。
片面のみ起毛させた生地や両面を起毛させたものなどがあり、目の細かいものから毛の長いものまで、実は起毛の種類ってたくさんあります。
起毛加工を施すことで、生地の表面の形状がかわるので、いくつか性質が変わります。
- 保温性をあげる
- ソフトな肌触りになる
- 輪郭をぼかす
起毛にはこのような効果があります。
保温力がアップする
起毛させた細かい繊維は、暖かい空気をキープしてくれるので熱が外に逃げるのを防いでくれます。
1枚着るだけで熱を閉じ込めてくれるので、寒い季節にぴったりなんですね。
防寒の仕組みについて書いた記事があるので、よかったらあわせて読んでみてください。
風合いが柔らかくなり肌触りが良くなる
ネルシャツの生地はよーく見ると、わずかに毛羽立っています。
生地の表面を羽毛立たせることで、
ふんわりとしていて柔らかいイメージをつけることができ、
手触りもソフトで柔らかくなります。
柄物の輪郭をぼかす、色をやわらかくする
平織や綾織の生地で柄を織ると、パキッとした、
コントラストのある見た目になります。
そこに起毛加工を施すことで境界線が曖昧になるので、
柄がぼけたような雰囲気になります。
たとえば同じ柄でも、
チェック柄のシャツとチェック柄のマフラーでは印象が全然ちがいます。
マフラーの方が柔らかく、優しく、暖かくかんじますね。
ネル生地のデメリット
服の特性は表裏一体。
毛羽立たせることで、いくつかデメリットもあります。
毛玉に注意
生地の表面は起毛してあるので摩擦に弱く、毛玉ができやすい状態です。
ニットやスウェットほど毛玉が出来やすいわけではありませんが、
手で無理やり取るとさらにひどくなるので、
毛玉クリーナーかハサミで処理しましょう。
汎用性は高くない
オックスフォードなどの普通のシャツは季節関係なく年中着れますが、ネルシャツは温かみがあるので、秋冬の素材と割り切らないといけません。
春夏は暑くて着れないでしょう。
一年中着れる素材ではないので、汎用性は劣りますが、言い方を変えれば秋冬は季節感を演出できるというメリットにもなり得ます。
起毛加工とは?
フランネル生地って、どうやって作ってるのか?
どのタイミングで起毛加工をしてるのでしょうか?
起毛素材は、基本的に生地をつくったあとに起毛加工を施しているんです。
フランネル生地はざっくりと、このような流れで作っています。
1.平織りか綾織りで生地を作る
2.縮絨する
3.生地を起毛させる
ところで、
『たかが起毛』と侮っていませんか?
起毛は、衣装性を高めたり機能性を引き出したり、アパレルには欠かせない工程なんです。
生地を作った流れでちゃちゃっと毛羽立たせてるわけではなく、起毛加工専門の工場なんかもあって立派な産業で、その温かみの裏にはさまざまな人のストーリーがつまっています(少し大袈裟ですが)。
縮絨というなじみのない専門用語が出てきましたが、毛同志を絡ませてフェルトのようにすることです。
組織の密度を上げるために、水洗いをしたり、熱や圧力を加えたりします。
そして起毛加工についてですが、生地を起毛する方法は、サンドペーパー起毛と針布起毛の2種類あります。
ネルシャツの素材のフランネルは針布起毛。針布によって生地の糸からかき起こし長い毛羽を出す。
起毛加工でできた毛羽は、長さがバラバラなので、一定の長さに毛足をそろえる工程を通すことで、上品な起毛感がでます。
昔はアザミの実を使い、そのとげで織物の表面を何回もこすって毛羽を立てていたようです。
ネルシャツのお手入れ方法
ネルシャツのお手入れ方法についてですが、毛羽立っているので、言ってみればすでに小さい毛玉があるような状態です。
生地の繊維と繊維が擦れ合ったり、摩擦によって毛玉ができやすくなってしまいます。
他の服と絡まって生地に強いダメージを与えないように、洗濯する頻度を減らしたり、洗濯ネットを使うなど対処してください。
ソフト洗いや手洗いモードなどで優しく洗えるとベストです。
ネルシャツを上手にコーディネートするには?
ネルシャツに苦手意識がある人ってけっこういると思います。
どカジュアルな僕の場合ですが、
『シャツ=きれいめなテイストのアイテム』という考えは捨てて、
『ネルシャツはワークシャツ』ということを念頭に置いてコーディネートすると、合わせやすいような気がします。
(僕自身かなりカジュアルな服装しかしないので、参考にならないかもしれません)
ドレッシーな要素のネルシャツもあるので、一概にはそうではありませんが、古着屋で買えるネルシャツは、たいていカジュアルなものです。
落ち着いた色味とスタイリッシュなシルエットでドレッシーなネルシャツは上品に合わして良いと思います。
ネルシャツがダサくなるのは何が原因?
ネルシャツって『オタクっぽい』イメージがある人も多いと思います。
たしかになんとなく着ただけだと、電気街でポスターの刺さったリュックを背負っているような感じになってしまいます。
ネルシャツにジーパン、そこによくわからないようなスニーカーを合わせるとそんな雰囲気に近付いてしまうような気もします。
ネルシャツ自体がどうこうというより、他の部分が大事になってきます。
パンツの裾の処理も大事で、けっこうポイントになってくるので、よかったらあわせて読んでみてください。
アウトドアコーディネートにネルシャツは好相性
ネルシャツはもともとワークシャツです。
ワークアイテムはアウトドアテイストだったりアメカジテイストに持っていくと失敗しにくいです。
ネルシャツにダウンベストをあわせたり
マウンテンパーカーを合わせたり、アウトドアテイストを取り入れるのが簡単でおすすめです。
スケーター風コーディネートにもネルシャツは相性がいい
ネルシャツはスケーターにも馴染み深いアイテムです。
ただ羽織るだけに近くなりますが、
落ち着いた色味のものが間違いないです。
ネルシャツの定番、オンブレチェックの記事もあるので読んでみてください。
最後に
ネルシャツって古着屋で安く売られていますが、そんなに人気ないんですかね?
たしかに汎用性高くないですし、ヤボったいものが多いですし、安く売られている印象です。
そんな中からピンときた一枚を見つけたときの喜びはまた格別です。
こうやってネルシャツについて書いてるともう一枚欲しくなってきますね。
それでは今回はこのへんで。
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