服地パイセン

生地にうるさい服屋で学んだことを活かし、洋服のわかりづらいことをわかりやすく解説します。

あの人が履いているズボンのわずかな違いがわかるようになったのは、僕が玉縁ポケットを好きだからだと思う。

 

知ると面白いヒップポケット

こんにちは。 服の生地についてのブログを書いています、服地パイセンです。

 

誰でもなんとなく好きなディテールってあると思うんです。

「パンツの裾はダブルが好き」とか
「シャツは比翼が好き」とか
「Tシャツには胸ポケットは絶対要らない」とか。

 

僕がなんとなく好きなディテールは「玉縁ポケット」です。

片玉縁ポケットのパンツ

基本的にズボンのヒップポケットに使われるディテールなのですが、ここが玉縁ポケットになっているだけで嬉しいです。

 

ポケットの仕様って、カジュアルシーンではほとんどの人がどうでもいい、けっこうマニアックなディテールだと思うんです。それ故に知らずに過ごすってことが多いのではないでしょうか。

 

僕自身、特に仕立て屋で働いていたわけでもなく、なんとなく好きで色々見ていたらある程度詳しくなりました。

そんなわけでヒップポケットの種類について書いてみます。

 

 

 

 

 

 

ヒップポケットの種類

ヒップポケットには、大きく分けてパッチポケットスリットポケットの2種類があります。

 

それぞれどのようなものでしょうか。

 

パッチポケットとは

パッチポケットのフレンチワークパンツ

「patch」つまり、貼り付けたポケットのことで、衣服の上に布を縫いつけたポケットです。

デザインとしてはスポーティなポケットになります。

 

アウトポケットとも呼ばれ、カジュアルなパンツによく使われます。

 

パッチポケットにフタを付けた「パッチアンドフラップポケット」や、フタ付きでボタン止めとしたものなど応用された種類も多いです。

 

スリットポケット

「slit」つまり、パンツの表地に切込みを入れて作るポケットのこと。


パッチポケットが表地に貼り付けて作るカジュアルなポケットに対して、

スリットポケットはスーツのパンツに使われるようにフォーマルなディテールです。

 

スリットポケットは切れ込みを入れて、内側に袋状のポケットを縫いあげるので、パッチポケットに比べると手間がかかります。
おのずと工賃も高くなるので、ある意味良いパンツのディテールといえます。

 

フタありとフタなしがある

パッチポケットとスリットポケットのどちらにもフタがついたデザインのものがあります。

 

このフタは「フラップ」とも呼ばれ、雨やほこりをよけるためのものとされています。

フラップにはボタンがついているものや、左右の片側だけにフラップが付いたものもあります。

 

フラップ付きスリットポケット

フタつきのスリットポケット

これは切り込みを入れて作った、スリットポケットにフタがついたものです。
フランス軍のM-52パンツの後期型です。

 

フラップ付きパッチポケット

フラップ付きのパッチポケット

こちらは布を貼りつけられたパッチポケットにフタがついたもの。

60年代の米軍のベイカーパンツです。

 

写真を撮ってみて、今頃気づきましたが、左右のポケットの位置(高さ)が全然違う。

これは今でいう縫製不良なんですが、こういう雑さが古着の良さだと思ってます。

数年間履いてるのに全く気づきませんでした。

 

次は、僕が好きな玉縁ポケットについて書いていきます。

 

玉縁ポケットの意味と読み方とは

「玉縁(たまぶち」って、あまり聞いたことないかもしれません。

 

わかりやすく言うと、
玉縁=パイピングのことです。

 

パイピングと聞くと、ピンとくる人は多いんではないでしょうか。パイピングとは衣類の縁を、細い布やテープでくるむ処理のことです。デザイン目的の場合と、補強を目的とする場合があります。

このパイピングを日本語では玉縁と呼ぶんですね。

 

ちなみに玉縁ポケットはスリットポケットに分類されます。

 

玉縁(パイピング)はかっこいい

パイピングって縫製としてかっこいいです。パイピングされているだけでしっかり縫われている安心感があります。

 

ポケットではなく「パイピング」についての話にはなりますが、フランス軍のM47カーゴパンツをマルジェラがモチーフにした話は有名。
「ミリタリーパンツでありながらも、内側にパイピング処理されて素晴らしい縫製だった」ことが決め手だったと言われています。

パイピングというディテールは、世界の超一流のデザイナーが認めるほど素晴らしいディテールだと思っています。

 

改めて、玉縁ポケットとは切り口をパイピング処理したポケットのことで、パイピングはバイアスカットされた細い縁どりになってます。

 

4~5ミリ程度の細いパイピングがつけられるのが一般的ですが、パイピングの太さを2cmくらいに大きくしたりしてデザイン性を出しているものもあります。

 

パイピングが施されたポケットなので、パイピングポケットとも呼ばれます。

 

この玉縁ポケットには
「片玉縁ポケット」「両玉縁ポケット」があります。

 

片玉縁ポケットとは

片玉縁ポケットのコックパンツ

片玉縁ポケット。かたたまぶちと読みます。
通称「片玉」はスリットの下側だけパイピング処理されているものです。

 

両玉縁ポケットとは

両玉縁ポケットのパンツ

両玉縁ポケット。りょうたまぶちと読みます。

通称「両玉」はスリットの上下を両方ともパイピング処理されているものです。

片玉縁のポケットよりもパイピングの幅が細く、スーツのパンツなんかは両玉になっているものがほとんどではないでしょうか。

 

玉縁ポケットと箱ポケットの違い

箱ポケット

テーラードジャケットの胸ポケットによく使用されている箱ポケット。

 

箱ポケットと玉縁ポケットは、よく似ています。

ポケットのところに四角いステッチが入っているので、一見よく似ていますが、まったく別物です。

 

詳しく縫い方はわからないのですが、箱ポケットは四角の布が乗ってるようなデザインです。

 

ヒップポケットの雑学

ヒップポケットに関する小話をふたつほど。

 

ピスポケットとピスネームの由来

 

リーバイスのデニムパンツのバックポケット

バックポケットをピスポケットと言いますが、「ピスネームが付いてるからピスポケット」だと思っていたら、どうやら少し違ったようです。

 

まず、このピスネームという名前はアメリカでジーンズか広まったことに由来します。

ジーンズなのでポケットは貼り付け型のパッチポケットです。

 

右のバックポケットは護身用のピストルを入れていたことからピスポケットと呼ばれていました。

このピスポケットに付けていたネームなのでピスネームと呼ばれるそうです。

ピストルを入れるピスポケットありきの、ピスネームだったんですね。

 

財布を入れてはいけない

次は、スリットポケットに関して。
スーツやトラウザーのヒップポケットに財布を入れている人をよく見ますが、本来このポケットには厚みのあるものを入れるようにはデザインされていないんだとか。

 

カジュアルファッションなら、気にしなくて良いと僕は思うんですが、

「パンツのシルエットが崩れてしまうから財布を入れてはいけない」

と、テーラーさんから聞いたことがあります。

 

最後に

切れ込みを入れて作っているものは「スリットポケット」と呼ばれ、貼り付けているものは「パッチポケット」、またフタは付いているかなど、ポケットの形で印象は変わります。

 

すごくよく似ているパンツもそういったディテールをよく見ていくと、その服の個性が見えてきてなんだか愛着が湧きます。

 

 

 

感想などをコメントいただけるのが、何よりとても嬉しいです。

はじめましての方も、思ったことはお気軽にコメントお願いします。

 

 

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