こんにちは。 服の生地についてのブログを書いています、服地パイセンです。
僕は数年前までアロハシャツがずっと苦手でした。開襟のデザイン、テロッとした素材感。そのラフすぎる雰囲気が苦手でした。
ところがここ数年、アロハシャツをよく着るようになりました。むしろ夏のシャツはアロハシャツしか着ていません。それはラフでリラックス感のある服がトレンドだからだと思います。
そんなアロハシャツによく使われる素材である「レーヨン」についてまとめてみます。あまり気にしてませんでしたが、レーヨンについて調べてわかったことは、「最強に扱いづらい可愛いやつ」ってことです。
- アロハシャツはレーヨン100%が好き
- レーヨンを簡単に言うと
- レーヨンを詳しく解説
- レーヨンの歴史について
- レーヨンのメリットは何?
- レーヨンのデメリットは何?
- ヒートテックが暖かいのはレーヨンのおかげだった!
- 最後に
アロハシャツはレーヨン100%が好き
なんとなくですが、アロハシャツはレーヨン100%にこだわってしまいます。そしてさらにmade in HAWIIなら最高です。
コットンとレーヨンを混紡したアロハシャツよりも、レーヨン100%のテロテロの生地が好きです。
レーヨンを簡単に言うと
レーヨンは生地にハリがなくテロっとしていて、落ち感やドレープ感を出せるアロハシャツによく使われる繊維です。柔らかい絹を思わせる光沢感があります。
なんとなくレーヨンについてざっくり知りたい、という方はこんなかんじの理解で十分だと思います。
ここからは歴史やウンチクの内容になるので、レーヨンについて詳しく知りたいなどご興味があれば読んでみてください。
レーヨンを詳しく解説
最近はとろみのある生地感が人気。製品にしたときハリ、コシがなくだらっとした感じになるレーヨンは、今のトレンドにマッチした繊維だと思います。光沢があり高級感があることから、ファッションとして人気を博している面もあります。
ただ、 レーヨンの服はすごくデリケートです。欠点が多いので合成繊維の勢いに押され、現在ではレーヨンの化学繊維に占める割合では10%程度だそうです。
レーヨンは化学繊維だが環境に優しい
「脱石油」という動きがある中で、なぜ化学繊維のレーヨンが環境に優しいと言えるのか説明します。
繊維は「天然繊維」と「化学繊維」に分かれます。
「天然繊維」は麻や絹など、植物や動物から繊維を取り出します。
一方、「化学繊維」は化学的な方法で人工的に作り出した繊維です。「天然繊維」をまねて生み出されました。
レーヨンは19世紀の終わり頃に高級品だったシルクの代用品として誕生した、世界初の人工繊維といえます。
「人工」という名前がついてますが、原料は天然植物由来(セルロース)の原料を化学薬品によって再生させた「再生繊維」です。
植物由来なので加工処理して埋めると土に還るので、環境にやさしい繊維といえます。ポリエステルなどの石油原料の合成繊維と大きく違います。
反対に合成繊維は石油由来なので、生分解性がなく土に還りません、
化学繊維については、以前かいた「爆速で合成繊維を理解する」を読んでみてください。
レーヨンの語源は「光る糸」
1924年に「光る糸」という意味のレーヨンという呼び方が決められました。
レーヨンは英語で「Rayon」です。
Ray=「光線」とCotton=「綿」を組み合わせた言葉だそうです。
ビスコース法という製法で作られることから「ビスコース」と呼ばれることも。
レーヨンはもともと絹に似せてつくった再生繊維であり、昔は「人絹(じんけん)」やステープル・ファイバーの略である「スフ」とも呼ばれていました。
レーヨンの歴史について
近世のヨーロッパでは、「高級な繊維である絹を人工的に作りだそう」と様々な研究がくり返されました。
絹は貴族だけが手にできるような繊維でした。そんな中1884年にフランスで「硝酸セルロース」と呼ばれる人工絹糸の発明に成功しました。これがレーヨンの始まりと言われていて、世界初の人工繊維の誕生です。
しかしこの「硝酸セルロース」は燃えやすく、この繊維を使ったドレスを着た人が炎上死するという事故が起きてしまいました。
その後、1898年にレーヨンをビスコース液から製造する方法が発見され、現在に至ります。
レーヨンの製造過程を教えて?
再生繊維の製造過程は、まず木材パルプの主成分である「セルロース」を化学薬品で溶解しビズコース液を作ります。
これを細〜いノズルから凝固液の中に押し出すことでレーヨンができあがります。なんだかところてんみたいな作り方ですね。
レーヨンのメリットは何?
レーヨンの良いところをまとめてみます。
なめらかな肌触りと光沢感
レーヨンの主成分は綿や麻と同じセルロースなので、基本的にはそれらと性質が似ていると言われています。
そんな中でレーヨンの最大の特徴が、なめらかな肌触りと美しい光沢感。繊維が柔らかく、コシがない為、ドレープ性も抜群です。
吸湿性と染色性の良さ
化学繊維はあまり水分を吸収しません。レーヨンの吸湿性は化学繊維の中ではもっとも高く、汗をよく吸い、染色性が良いのも特徴。
繊維の性質が弱酸性なので、汗の臭いであるアルカリ性の成分を中和してくれたり、消臭効果もあります。
そのため、汗をよくかく夏に最適な繊維であると言えます。
さらに、吸湿性の高さは染色性の高さにも直結します。染色しやすいレーヨンは、鮮やかな発色が可能であるだけでなく、様々な柄を表現することができます。
熱や静電気に強い
放湿性の高いレーヨンは熱にも強く、静電気を起こしにくい繊維と言えます。
さらに、原料が天然に存在する植物原料を使用しているため、焼却した場合でも有害物質の発生がほとんどでません。
レーヨンのデメリットは何?
今度はレーヨンの注意すべきところをかいてみます。
擦れると白くなりやすい
レーヨンの服を着ていると、ポケット口などが白っぽくなることがあります。これは摩擦による繊維の「白化現象」と呼ばれます。
着用や洗濯時の摩擦により毛羽立ち、その部分の色が白っぽく見えてしまうことが多くあります。
そういった白化現象が起こりやすいのが、レーヨンのデメリットと言えます。
水に弱くて、縮みやすくシワになりやすい
紙と同じ原料のパルプを使用しているので水には非常に弱いのが最大の難点。
レーヨンは吸水性に優れている、と書きましたが、逆に言えば洗濯時には水をたくさん吸い、乾く時にシワになりやすいというデメリットもあります。また、雨が降った時などに水シミもできやすく、雨の日には避けたい素材です。
レーヨンは一般的に吸湿性は綿よりも大きく、強さは綿や絹より弱い。しかも濡れてるときは強度が約半分まで著しく低下します。
水洗いした際には、大人サイズから子供サイズにまで縮んでしまう、なんてことも。
水にはとにかく弱い素材なので、自宅での洗濯や取り扱いには細心の注意が必要です。
ヒートテックが暖かいのはレーヨンのおかげだった!
レーヨンをつかった身近な服の中にユニクロのヒートテックがあります。薄手なのに暖かく着膨れしないインナーとして、今では冬の定番衣類になっていて、一枚は持っているのではないでしょうか。
実はその暖かさを感じる機能にもレーヨンは重要な役割を担っています。
吸着熱といって、人が発した水蒸気を利用して発熱する特徴があります。
それと肌に密着すると暖かさを感じやすい「マイクロアクリル」という極細繊維も取り入れていて、この極細繊維が暖かさを保ちます。
アクリルやポリエステルは吸水性が低いので、素材にレーヨンを加え吸水性を上げることで、人の発する水分によって暖かく感じるようにしているらしいです。
ただレーヨンは大量の汗を吸水する一方で放出しにくく、大量の汗をかくスポーツの場面ではからだが冷えてしまうので向いていないんです。
機能素材についての記事もあるのでよかったら読んでみてください。
最後に
普段あまり深く知る機会のない「レーヨン」についてでした。夏っぽい素材だとは思っていましたが、冬の定番インナー、ヒートテックにも使われていて驚きです。
僕としては、アロハシャツは落ち着いた色味のもので生地はレーヨンがいいと思います。
感想などをコメントいただけるのが、何よりとても嬉しいです。はじめましての方も、思ったことはお気軽にコメントお願いします。
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