こんにちは。
服の生地についてのブログを書いています、服地パイセンです。
OAO(オーエーオー)のTHE CURVE 1(カーブワン)の詳細について、どこより詳しく解説していこうと思います。
このスニーカーはデザインに込められた想いや意味合いが強く、語りどころが多すぎて説明しきれるか正直不安です。
こんなプロダクトは滅多にありません。
前回の記事は感想がメインだったので、今回は詳細説明とデザインの源泉など本質的な部分について書いていきます。
カーブワンは語りどころが多いのですが、全てを網羅できるような記事を目指して書いていきます。
(※この記事は9000文字近くあり読むのに時間がかかります。もし今お時間がなければブックマークをしてお時間があるときにお読みいただけると幸いです)
OAOのブランドについて
まずはOAOがどういったブランドなのか解説していきます。
ブランドのコンセプトや、デザインの特徴などまとめます。
OAOの理念やコンセプト
全ての人は自分の人生のクリエイターである。私たちのミッションは、現代を生きる人々に身体と精神の双方から素晴らしい体験を提供し、個人の唯一無二(One And Only)のウェルビーイングを実現し、創造性を高めることです。
OAOは東京・京都を拠点に、卓越した快適性と洗練された美しさを追求しています。製品を通じて感覚や心に訴えかけるような感動的な体験をもたらし、我々が心身ともに人間らしく、豊かに生きられるように都市生活を支えます。
都市生活で失われかけている、人間の心と身体の豊かさを取り戻し、創造性を高めることを目指します。
IT系やクリエイティブ関係の職場では、足元に革靴ではなくスニーカーを合わせる機会が増えていまが、スポーツブランドのものがメジャーです。
これは平たく言えばスポーツに特化したシューズを都会のビジネスシーンで履いているというもの。
そうではなくて、都会で履くためのスニーカーを作りたい。
早く走る、というよりも歩いていて疲れない。
機敏に動く、というよりも立ったり座ったり。
足を固める、というより脱ぎ履きがしやすい。
このように、スポーツではなく都市で必要とされる機能性に最適化されたプロダクトをつくりたいという想いからOAOの活動はスタートしています。
特にデザイナー、フォトグラファーやエンジニアなどのクリエイターにとって、最適で快適な唯一無二のスニーカーブランドになりたい。
OAOというブランド名は、そんなクリエイターにとって唯一無二のブランドになりたい、という意味を込めて『One And Only』の頭文字を取っているそうです。
快適で幸福にすごし、クリエイターにとって豊かな体験をしてほしいという想いから、建築や彫刻などのアートカルチャーから着想を得たプロダクトを生み出しています。
OAOのスニーカーの特徴
OAOのスニーカーは、都市での生活に最適化されるようにデザインされています。
その特徴としては、全製品に感動的な歩き心地を実現するためボリュームのあるソールが採用されます。
厚みのあるソールは足への負担や疲労の軽減効果があり、感動的な履き心地をもたらしてくれます。
OAOはこれまでに4つのコレクションを発表しており、全てに厚みのあるソールが採用されてます。
THE CURVE1のこだわりと特徴3点
今回はそんなOAOのスニーカーの中でも、ファーストコレクションのTHE CURVE1について解説していきます。
語りどころは大きく分けると3点あります。
•サステナブルな素材
•機能性のポイント
•アート要素の詰まったデザイン
どれも妥協のないこだわりようです。
ひとつひとつのポイントが、一記事書けるくらいこだわってます。
それをしっかり説明しようと思うと、どうしても
長くなってしまいます。
読むのも疲れるかもしれませんが、本当におもしろいスニーカーなので最後まで読んでいただけると嬉しいです。
素材のこだわり『サステナブルなレザー』
まずはこのブログのテーマのひとつである「生地や素材」に関することから書いていきます。
もちろんこのOAOのスニーカーは素材にもこだわっていて、レザーにECCOレザーという革を使用しています。
THE CURVE 1はレザーが2種類使用されていて、パーツによって使い分けられて最適化されています。
赤と黄色で囲った箇所はECCOレザー。
黄色で囲った革は、赤の革を型押しをしたものなので印象は異なりますが同じレザーです。
青いところは人工皮革を使用しています。
ECCOレザーは厚みとハリがあるので、履き口に使用すると着用時の硬さが出てしまいます。
つま先やかかと、ソール付近はハリと安定感のあるレザーを、アッパーの曲線のデザインや履き口には柔らかい人工皮革、と素材を使い分けて最適化しているそうです。
レザーじゃない箇所はメッシュ素材になっています。
ECCOレザーとは
デンマークに「ECCO(エコー)」というシューズブランドがあります。
このブランドは1800年代からタンナー(製革業社)を運営していて、他のブランドに向けてレザーの販売も行っています。
ECCO社のレザーなのでエコーレザー。
サステイナビリティと革新性を念頭に置いたモノ作りが高く評価されていて、ラグジュアリーブランドをはじめアップル社やロールス・ロイス社などの名門企業にレザーを供給しています。
日本ではあまり知られていませんが、歴史が長いこともあり品質は間違いのないもので、しっかり環境へ配慮されています。
ECCOレザーでとくに有名なのが「ドライタン」という技術。
実は革のなめし工程には大量の水が必要とされるんですが、ドライタンはほとんど水を使わずに、なめし工程における水の使用量を大幅に減らしました。
これは原皮の中にもともと含まれている水分を活用することで、水を極力使用せずになめす独自の技術で、牛原皮1枚当たり約20リットルの水を節約できるそうです。
皮革も食肉用の動物から調達しているという。
グローバルブランドやラグジュアリーブランドは環境への負荷軽減の具体的な数値目標を掲げています。
その取り組みは「レザーワーキンググループ」という皮革関連のブランドが加盟する国際的な団体で環境の保護や、安全な皮革の供給を目的としたとして品質、環境への配慮などを評価する機関にランク付けされます。
世界で約800タナリーが加盟していて、ゴールドレート、シルバーレート、ブロンズレート、あとはそれ以外といった感じでランク付けされます。
エコーレザー社は5つのタナリーを持っていて、全てが「ゴールドレート」の評価を得ているとあって、製革の現場とは思えないほど、工場内の環境が清潔に保たれている。
排水処理、使用薬品、公害防止、エネルギー効率の向上など細かい評価基準を満たしているとして、ゴールドレートの評価を得ています。
ちなみに日本にはゴールドレートをもっているタナリーは今のところまだありません。
ソールには進化したVibramソール
素材へのこだわりについて書きましたが、ソールにもこだわっています。
vibramのローリングゲイトシステムという、ゆりかご型のソールで、足が自然に出るように設計されています。
vibramソールやローリングゲイトシステムについては、こちらの記事を読んでみてください。
デザインは串野真也氏
素材や機能性についてでもかなりの内容でしたが、デザインへのこだわりが半端じゃないんです。
シューズのデザインを手掛けるのは串野真也(くしのまさや)氏。
メーカーのシューズデザインというよりは芸術性に富んだ彫刻のように作品となる靴をつくることで有名な方です。
レディガガの靴を手掛けたこともあるシューズデザイナーで、彼の作品はイギリスの博物館に永久保存されているものもあります。
作品は動物のフォルムやシルエットをテーマに作るものが多く、例えばキメラという作品は、全体に牛革、かかとの金具にはライオンの足、装飾に鹿の角。最後に人がいてひとつの生命の塊となり、キメラが完成するというコンセプトです。
OAOのプロダクトを通じて豊かな体験をしてもらいたい。アーティストである串野氏がデザインしているというのはそういう意味もあります。
デザインソースはTOKYO2020幻の国立競技場
このTHE CURVE1 のデザインのインスピレーションになっているのはザハ・ハディドの新国立競技場案です。
TOKYO 2020のために建てられた新国立競技場は、現在の隈研吾氏の前はザハ・ハディド氏の案で進行してました。
海外から見た日本のこれからと未来を結ぶ世界的に見ても象徴的で価値のある建築案でしたが、
様々な圧力により、この案は白紙に戻されてしまいました。
『私たちや串野も非常にこの建築案が好きで、残念でならなかったので、ある種の怒りやアンチテーゼを込めてオリンピック開催予定だった2020年に、THE CURVE 1をリリースしました。』
OAOの高橋さんはこう仰っていました。
僕はこの話を聞いたとき、ザハハディドのことは名前くらいしか知りませんでした。
THE CURVE 1 の意匠の奥の奥を理解するにはザハハディドという人物への理解が必要だと感じ、調べていくとザハハディトという人物にメッセージ性があるようにも感じました。
このことはTHE CURVE 1を語る上で欠かせないので、次の項で彼女の説明をさせてもらいます。
ザハハディドとは
現代建築における脱構築主義を代表する建築家の一人で、コンテストに優勝しても、デザインが奇抜すぎて建築されなかったことも多いことから、「アンビルト(建たず)の女王」の異名を持っていた。
近年では、建築技術の進歩により建築可能物件が増えてきている。
3次元CADを用い従来にない曲線的なデザインを実現してきた。
(引用:ザハ・ハディッド - Wikipedia)
ザハハディドは東京オリンピックの競技場コンペで有名になりました。
当初の新国立競技場のコンペで一等になったけど、予算がかかりすぎるということで白紙になりました。
白紙撤回の理由は約2500億円の整備費とされており、このデザインは建設費のかかる奇抜なデザイン案だった、という認識の人は多いと思います。
ちなみにこの建築費用を回収するにはその後の会場の利用方法が重要で、サッカー観戦やコンサート会場など、さまざまな用途に転用できるように工夫された、実はとても実用的で合理性を加味されたデザインだったという話もあります。
結局は多くの大御所建築家が、
「日本らしくない、日本人の設計でやるべき」という発言もあり結局実現しなかったのですが。。。
その後も世界のいろんな国での設計をしましたが、2016年3月心臓発作で亡くなりましたが、彼女の設計したプランや図面は、その後も生き続けています。
日本では結局は実現しませんでしたが、世界の国々では、予算や技術の問題で実現不可能だったザハの設計がどんどん建てられるようになりました。
彼女がデザインして実際に建造されたものをいくつか紹介します。
ザハハディドのデザインした建造物で僕が唯一目にしたことがあるのは、韓国の東大門のDDPです。
そのときはザハハディドのことも知らず、サラッと眺めただけですが、なんて先進的でスタイリッシュなデザインなんだと衝撃を受けたのを覚えています。
不思議な空間に、外壁のアルミパネルを活用した夜の幻想的で近未来的な雰囲気は今でもとても強く記憶に残っています。
建築物は、良くも悪くもその都市の印象を大きく変えます。
2014年に完成した建物でこれだけのインパクトがあるなんて、もし2020の新国立競技場が彼女のデザインで建造されていたら未来の東京はまた違ったものになっていたのかもしれません。
この目で見たわけではありませんが、1番衝撃を受けたのはマカオのリゾートホテル、モーフィアス。
こちらは2018年に建てられたばかりですが、すでにマカオのランドマークになっています。
建物に穴が空いた奇抜なデザインです。
この網の目みたいなもの全てで建物を支えているからこの形ができるそう。
イスラム圏出身の女性という過酷な状況の中で建築界を突き進んだ彼女は、自身のスタッフに『決してあきらめないことが大切』と常に口にしていたそうです。
そしてその彼女の思いを受け継いだ人達の力によって、『アンビルドの女王』の設計はどんどん形になり、世界中に夢と希望を与えているようにも感じます。
決して諦めない精神がこのモデルやOAOというブランドにも現れているようです。
The curve1を手にしてみて
プロダクトとしての特徴を
•サステナブルな素材
•機能性のポイント
•アート要素の詰まったデザイン
の3点で説明しました。
この項ではフォルムやサイズ感、ホカオネとの比較などについてまとめます。
レビューをさせていただきました
前回の記事で、THE CURVE1を実際に約1ヶ月使ってみて、その感想をまとめました。
色んなパンツでコーディネートしたり、履き心地をレビューしているので、よかったらこちらもあわせて読んでみてください。
THE CURVE 1のフォルムを色々な角度から
OAOの高橋さんはこうも仰っていました。
『靴のデザインにおけるセオリーに囚われない、非常に細かいパーツが幾重にも上下に重なり合うこれまでになかった佇まいとなっています。
それはザハの未来的で美しく、不可能を可能にする挑戦的な姿勢きインスパイアされました。
建築界を変えた彼女の足跡や、その挑戦な姿勢を、靴を通して身につけていただければ、と考えています。』
アツいですね。
その想いが伝わるように、ディテールを紹介します。
ザハハディドは「アンビルドの女王」の他に「曲線の女王」とも呼ばれています。
このTHE CURVE 1のモデル名は『CURVE=曲線』という意味や尊敬の意を込めてネーミングしてるのではないでしょうか。
フロント
アッパーをよく見ると曲線が複雑に交差しているのがわかります。
複数の曲線から作られるデザインが、ザハハディドの建築の特徴である曲線の重なりを表現しています。
サイド
サイドから見ると、シュッとしているのがよくわかります。ソールの曲線的なデザインとも調和が取れてます。
そして異なる種類のレザーを使用することで生まれる、光沢の違いを楽しめます。
バック
かかとのプルタブにも、ECCOレザーを採用しています。
カシメにはOAOのロゴが刻印されており、毎日着用時に触ってスイッチが入るような体験をイメージして設計されています。
その意味合いを知ってスニーカーを履くと、オンに切り替わるスイッチが入り、1日頑張れるのです。
(このOAOのロゴは旧ロゴになり、これからのものは新しいロゴに変更されているようです)
The curve1のサイズ感は?
僕はスニーカーは26.5cm、革靴は26cmでジャストです。
足の特徴的としては、甲が高く横幅も広いのでスニーカーの型によって±0.5cmで選ぶいった具合です。
このカーブワンのサイズ展開は1cm刻みで26.5cmがないので27cmを履いていますが、厚めの靴下を好んで履くので27cmで良かったと思います。薄めの靴下で履くと少しだけ大きく感じます。
標準的な足の人は普段のサイズ、
足の幅が広く甲が高い人はワンサイズ上げて選ぶのがいいと思います。
ソールが厚いので見た目はコロンとしてみえますが、案外シャープな作りです。
厚底スニーカーのホカオネとOAOを比較してみます
厚底のスニーカーはホカオネと比較されることが多いです。
ホカオネは、もともとトレイルランニングシューズでした。業界で目覚ましい成長を遂げ、ここ数年ファッションでも取り入れる人が急増しました。
いまでは「厚底スニーカーといえばホカオネ」と言われるくらいの存在です。
ちなみに、ホカ オネオネの凄いところはクッション性と軽量性を両立している点が挙げられます。
足の保護性も高くて衝撃吸収性も優れているのに軽いというシューズは革新的です。
職場にホカオネのボンダイ6を履いているスタッフがいたので、比較のために撮影させてもらいました。
アッパーの比較
ホカのアッパーはメッシュでスポーティな印象です。
カーブワンのアッパーはレザーとメッシュのコンビネーションで都会的な印象。
デザインも違いますが、素材でだいぶ印象が異なりますね。
ミッドソールの比較
ミッドソールの形状としては、高さは同じくらいです。
ホカオネのほうは前後で高低差が少ない形状です。ランニングのために作られたスニーカーなので、かかとに体重がかかった時に、前後の高低差がほとんどなくなるように設計されているようなことを聞いたことがあります。
ホカのソールは軽さを追求するために、フルEVAです。
カーブワンはミッドソールがEVA、アウトソールがラバーになったローリングゲイトシステムで、トゥが低めに設計されています。
ヒールを履いているような形状で少しドレッシーな印象を受けます。
アッパーとソールを比較すると、この二つのスニーカーは用途が全く違うということがわかります。
ホカオネはトレイルランニングやスポーツ用のシューズ、
カーブワンは都会での使用のためにデザインされたものです。
並べて比べるとそれがよくわかります。
OAOの取り扱い店舗。大阪や名古屋では買えないの?
2020年にスタートし、今のところ自社のオンラインショップやポップアップでの販売がメインだそうです。
東京はのショールームOAO HAUS(オーエーオーハウス)には全モデルが展示してあり、説明や試着サービスも受ける事ができ、直接その場で購入することも可能です。
現在は東京のセレクトショップ数店に卸していますが、2022年の6月以降に、名古屋、大阪、神戸の一部店舗で取り扱いが始まるようです。
最後に
カーブワンについてまとめてみましたが、これだけ語りどころが多いスニーカーはなかなかありません。
ちなみにOAOのスニーカーは、現在のところ4つのコレクションがあるのですが、このカーブワンが1番人気で、入荷したらすぐに完売してしまい、全く供給が追いついていないそうです。
アッパーからソールまでオールブラックで、長時間履いていても疲れにくくて、ロゴが主張しすぎないスニーカーって、仕事で必要としてる人はけっこう多いんではないでしょうか?
次の記事でOAOの他のコレクションについて書いてみます。
最新コレクションのSUNLIGHTというシリーズもレビューしてみようと思います。
THE CURVE1を1か月履いてみたレビュー記事です。
OAO公式オンラインストア
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