こんにちは。 洋服の専門家、服地パイセンです。
Tシャツの王道ブランドであるHans(ヘインズ)。僕は特にヘインズのビーフィが大好きですけど、なんとなく以前から気になっていたことがあります。
ビーフィTシャツって現行のものと昔のものでは、質感が全然違うんですよね。その違いを明確にしたくて、ビーフィTシャツ80年代のものと現行のものを比較してみました。
この記事では、ビーフィTシャツを徹底比較してみてわかったことをシェアします。ビーフィについて知りたい人はぜひ読んでみてください。
ヘインズビーフィーは今と昔で比較してみると、ほとんど別ものだった
今回比較してみて、ヘインズビーフィTシャツは今と昔では全く別ものであるということを強く感じました。
ただし勘違いしてほしくないのは、古着好きでよくある『昔の方が良い』というような、昔のものだから良いとか現行だからダメとかは思わないでほしいです。
洋服は時代に合わせて変化を続けていて、古いものには古いものの良さがあり、新しいものにはまた違った良さが詰まっています。
僕の経験上、オリジナル(古着)であることに固執しすぎてしまうと視野が狭くなってしまいよくない。
どの時代のものが自分らしく着れるか、自分に合っているか、柔軟に選択することが大事だと思うので、ニュートラルなスタンスで読んでいただけると嬉しいです。
比較する前に知っておきたいこと(前提)
同じヘインズビーフィTであっても、年代でまったく別物であるというにはそれなりに理由があります。
ヘインズビーフィTシャツといえば無地のTシャツを想像する人も多いと思いますが、昔は基本的にプリントTシャツでした。意外かもしれませんが、このことはTシャツに関する2つの歴史を知っていると理解しやすいように思います。
- ヘインズのビーフィTシャツについて
- Tシャツというアイテムの役割や立ち位置
比較の前に簡単に説明しておきます。
ヘインズビーフィーTの概要
BEEFY-Tはヘインズの肉厚ラインとして1975年に誕生したパックTで、今ではブランドを代表する商品のひとつ。
ビーフィという単語には「がっしりした。たくましい」という意味があって、その通り肉厚で丈夫な生地が特徴のTシャツです。
今販売されているものは無地のものですね。1970〜1980年代に誕生したTシャツということが一つのポイントになってきます。
今と昔でTシャツの役割は違う
Tシャツには様々なレパートリーがあります。
- 肌着のアンダーシャツ
- イラストが入ったプリントTシャツ
- 一枚で着れる無地のアウターTシャツ
これは、Tシャツが時代に合わせたファッションアイテムとして多様な進化を繰り返してきたから生まれたものだと思います。
今はトレンドがシンプル路線なので、無地のアウターTシャツがメインですが、2000年代以前はTシャツといえば主にはプリントTシャツでした。
Tシャツの歴史をさらに遡ると、1960年以前は肌着として着用する無地のアンダーシャツだったということになってきます。
Tシャツの変遷をたどってみると、大きくは第一世代、第二世代、第三世代と区別できるような気がします。
〜1960年以前に肌着として誕生した第一世代。
1960年頃〜2000年頃のプリントTシャツとして人気だった第二世代。
2010年以降〜の第三世代は一枚で着れる無地のアウターTシャツ。
その時代のトレンドを物語りながら、技術の進歩とともにそのレパートリーを増やしてきたように思います。
現代のものと昔のものが異なる形態をしているのはある種当たり前ですね。ビーフィTシャツは時代背景的にもプリントされる前提で誕生したということもあり、昔のものはプリントが施されているんですよ。
古着と現行ビーフィの違いを比較します
同じヘインズビーフィTシャツでも、今と昔の物では違いがたくさんあって、年代による違いをざっくりまとめると下記のようになります。
【ビーフィーTシャツの年代による違い】
- タグが違う=昔はタグがあった
- 生地が違う=昔は米綿だった
- 縫製が違う=より頑丈になった
それではみていきましょう。
一応あらかじめ判別しやすいように書いておくと、ボディの色がグレーの方が現行のビーフィTシャツで、白い方が1980年代のビーフィTシャツです。
タグが全く違う
ヘインズのTシャツ=タグのない仕様という印象があります。
3枚入りのパックTシャツもビーフィTシャツもタグのない仕様になっています。
なのですが、昔のビーフィTシャツにはタグが付いていました。
生地の違い
ビーフィTシャツは常に綿100%ということは変わらないのですが、年代によって生地がまったく異なります。このことを知らない人は案外多いと思います。
古着好きの人からすると『ビーフィ=U.S.A.コットン』というイメージがあると思いますが、現行のものはU.S.A.コットンではありません。
【現行ビーフィの生地は6.1オンスリングスパン】
【古着のビーフィの生地は何オンスか不明】
ざらっとした手触りと生地の質感から察するに、米綿のオープンエンドなのは間違いないと思います。
この時代のものは生地も縫製も全てU.S.A.製。1980年代の方が生地が薄く、新しくなるにつれて分厚くなっていく傾向があって、1990年〜2000年頃のビーフィTが1番分厚いという噂もあるのですが、おそらくU.S.A.コットンを使用していた最後の時期なのでしょう。
ちなみに1990年代からは生地だけU.S.A.で、縫製は南米とかになってきます。時代的にもアメリカアイテムの製造拠点がどんどん変わっていったタイミングなので、その歴史を垣間見るようです。
(▶︎ オープンエンドとリングスパンの違いについてはこちらの記事で解説しています。)
次は縫製について見ていきましょう。
縫製もまったく違う
ビーフィTシャツは今と昔で縫製も全く異なります。
Tシャツの縫製ってちがうの?と思うかもしれませんが、けっこう違いがあって、年代判別をするときに大きな手がかりになります。古着のバイヤーさん達はどのようなステッチが施されているかで大まかな年代を判別しています。
ざっくりまとめると、古いものは基本的にシングルステッチで補強もあまりされていない。現行はダブルステッチ+補強が各所に施されているという傾向があります(あくまで大きな傾向なので、メーカーによって異なります)。
ヘインズビーフィも基本的にそれに当てはまっていました。文字で見るより画像で見た方がわかると思うので、是非みてみてください。
首の縫製
まずは首の縫製からみていきます。どこが違うのかというと、
現行のものはオーバーロック+二本針平縫い。リブとボディの接合箇所をまたいで2本のステッチが走っているのがわかります。
80年代は生地とリブを縫い合わせるだけなので、裏側が凸になっているのがわかります。昔のTシャツはほとんどがこのような仕様になっています。
袖と裾のステッチを比較する
Tシャツの縫製は〜2000年代以前はシングル、それ以降はダブルステッチが主流になるといわれています。
現行はダブルでステッチが2本走っているのがわかります。今はこの仕様がメインになっています。
80年代のものはシングルです。
すこし見えにくいですが、ステッチは一本だけです。
肩の縫製も違うんです
比べてみるまで僕も知らなかったことなのですが、肩の縫い合わせにも違いが見られました。
1980年代は前後の身頃を縫いあわせてあるだけで、現行のものはダブルステッチなのがわかります。
次は裏返してみてみましょう。
現行は当て布でステッチを隠されており、それが肩まで続いています。タコバインダーと呼ばれる、強度を高めながら肌あたりが良くなる仕様です。
1980年代は首の後ろの箇所のみ当て布が施されていますが、肩のステッチは剥き出しです。
このように、ビーフィTシャツは現行の方が圧倒的に頑丈に作られています。
ただ当時の物にしかない、なんとなく頼りない雰囲気も魅力なのでどちらが良いかといわれたら完全に好みだと思います。
最後に
ヘインズの名作である、ビーフィTシャツが誕生してもうすぐ50年になります。長く愛される銘品といえど、時代の変化に対応しながら進化しているということを感じ取ることができました。
現行のビーフィTシャツをレビューしている記事もあります。サイズ感や洗濯による縮みなど詳しく書いてあるので、ぜひ合わせて読んでみてください。
▶︎ 【ヘインズビーフィー6.1オンス】王道ヘビーウェイトTシャツの生地、サイズ感、縮みまで徹底レビュー!
試しに楽天市場で古着のビーフィTシャツを探してみたら、2〜3000円くらいで可愛いデザインのものが見つかりました。
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