こんにちは。
服の生地についてのブログを書いています、服地パイセンです。
カジュアルファッションで人気のスウェットシャツ。
前回の記事で、スウェットや杢(もく)の誕生・特徴などについて書きました。
今回は「杢」の糸について掘り下げてみます。
杢はどのように定義されているのか、杢のような生地はどんなものがあるか。
簡単にまとめました。
マニアックな内容ですが、服好きには是非読んでほしい内容です。
興味のない人にはしんどい内容かもしれませんが、服の品質を知るために知っておいた方が良い内容もあるので、序盤だけでも頑張ってお付き合いいただけると嬉しいです。
杢糸と霜降り糸は何が違う?
生地を構成しているのは糸です。
一枚大きな生地も、細い糸からできています。
スウェットやTシャツなどの生地をルーペで拡大して見ると、複数の異なった色の繊維が見えるものがあります。
それが杢や霜降りといわれる生地です。
そのようにムラなっている生地は、実は2種類あって、作り方がまったく異なります。
まず1つ目は、先に糸をムラになるように染める方法。
もうひとつは、異なる色の糸を撚り合わせてムラを出す方法です。
その二つの違いを知るには、まず糸の構成の種類を知る必要があるので、簡単に説明します。
糸の構成を知る
糸は2種類あって、単糸と双糸があります。
皆さんが今着ている服のほとんどがこのどちらかに当てはまります。
単糸とは
繊維を撚って1本の糸にしたものが単糸です。
一般的には左に撚り、これをZ撚りといいます。
単糸は比較的安価で、生地にした際にざっくりとした生地感になります。
双糸とは
単糸を2本撚り合わせて作った糸のことです。糸を撚り合わせているので丈夫でコシがあり、単糸よりも均一な太さの糸になります。表面がツルッとした高級なシャツ地には双糸が使われている事が多いです。
単糸より双糸の方が高価です。
糸についてはとりあえずこれだけわかっていれば大丈夫です。
本題の霜降り糸と杢の説明に話を戻します。
霜降り糸(しもふりいと)
二色以上の色を混ざり合わせてできた糸のことです。
まだ糸になる前の原料を束ねた状態(トップ)をムラになるように染めます。
霜降り糸はメランジといわれたり、トップ染めともいわれます。
わかりやすく色の変化があるというより、ぼんやりとなんとなく色が混ざってるような感じです。
そのため、織り上げた布に白い霜が降りたような模様があらわれることが霜降り糸の名前の由来とされています。
杢糸(もくいと)
2種類以上の異なる色の単糸を撚り合わせた糸のことです。
一見すると霜降り糸に似ていますが、杢糸は撚り合わせたもの、霜降り糸は紡績工程で同じような効果を出したものです。
簡単にいうとこんな状態です。
見えやすくするために、白と黒のボタン付け用の太い糸をあまく撚ってみました。
実際の杢糸はもっともっと細い糸を強く撚るので、色のコントラストが曖昧で馴染んでいる感じですが、原理はこの写真と同じです。
次に、杢糸は繊維としてどういうジャンルなのか、どういう位置付けなのか、体系化してみていきましょう。
杢糸が分類される「意匠糸」とは
杢糸は分類上、意匠糸になります。
「意匠」は「デザイン」という意味で、変化に富んだ装飾的な外観をもたせた糸のことを意匠糸またはファンシーヤーン、飾り糸といいます。
通常の何の装飾もない同じ太さの単調な糸とは違い、装飾性がある様々な糸の総称。
素材や太さ、色などの異なる糸を2~3本撚り合わせたり、特殊な機械操作によって部分的に太い部分をつくったり、ネップ(繊維のかたまり)を撚り込んだり、色合い、撚り数などを故意に不均一にしたりしてつくられます。
ちなみに、意匠糸の定義には明確なものがないようで、杢糸や霜降り糸など色の変化だけの糸も意匠糸になりますが、形に変化のある糸を意匠糸としていることが多いです。
〇〇ヤーンなど様々な種類がありますが、それらを体系化するとこのようになります。
本当はもっともっとあるんですが、とりあえずこんな感じです。
意匠糸は作り方によって次の2種に大別することができます。
紡績工程で変化をつける
紡績工程とは、糸を作る段階のこと。
糸を作る段階で糸に装飾をするので、単糸です。
スラブヤーン・ネップヤーンなど。
これらは単糸の意匠糸になります。
意匠糸でヴィンテージを再現
ヴィンテージウェアと最近の服は生地の雰囲気が全然違います。
昔は糸を均一に作る技術がなく、それにより出来上がる生地には小さな凹凸がありました。その小さな凹凸がいわゆる「風合い」になります。
意匠糸はそのヴィンテージを再現するのにもぴったりなんです。
そんな意匠糸をいくつか紹介します。
スラブヤーンとは?
表面がボツボツして不均一な生地です。
生地不良のようにも見えますが、そういう生地デザインです。
一本の糸の中に太さが違う、雲のように膨らんだ太い箇所がある糸のことです。
糸を作る最後の工程である、紡績機の一部の機械操作によって、ランダムに節状の太い部分が作られます。
ネップヤーンとは?
着古して毛玉ができているようにも見えますが、未着用の新品の生地です。
繊維の小さなかたまり(ネップ)を糸の製造段階で入れ、撚り込んで変化をもたせた飾り糸。
「ネップヤーン」とは、一本の糸の中に、「粒」のような隆起が見られる糸のことです。
撚糸工程で変化をもたせる
糸を撚り合わせる工程で変化をつけた糸はループヤーン・リングヤーンなど。これらはすべて双糸となります。
ちなみに意匠糸としての定義には明確なものがないので、杢糸や霜降り糸など色の変化だけの糸も意匠糸に入れていますが、多くの場合、形に変化のある糸を意匠糸といっています。
形だけでなく形と色の両方を取り入れた意匠糸も多いです。
たとえば、ループ側の糸の色とベースになる糸の色を変えたり、ネップの色を変えたりすれば更に意匠的な効果を出すことができます。
普通に撚り合わせた双糸もありますが、今回は変わった糸をひとつ紹介します。
ループヤーンとは?
不規則な大きな輪奈(わな)のある糸です。
細い芯糸に太めの輪奈糸を芯糸より速くたくさん撚りからませることにより、輪奈糸がたるんで、輪奈状になったもの。
この辺はごく一部のニットでしか使われませんが、おもしろい糸ですよね。
編むのが大変そうです。
最後に
杢糸と霜降り糸は一見すると似ていますが、染めや紡績工程でデザインされているか撚糸でデザインされているかで分類分けされているのです。
スウェットと杢グレーの関係について、合わせて読んでみてください。
よろしければ、読者登録もお願いします。
↓ブログ村ランキングに参加しています。よろしければ、バナーをクリックしていだけると励みになります。