こんにちは。 洋服生地についてのブログを書いています、服地パイセンです。
寒くなったので押し入れの中のニットを出してきました。特に新しいニットを買っていないので去年までと同じものを着る、いつも通りの冬支度です。そんなニットセーターをよく見てみると、少し毛玉ができているものがありました。
そういえば、昔は毛玉ができると指で引きちぎっていました。ところがちぎってもちぎっても次から次へと毛玉はどんどんできてしまいます。
…そんなこともあり、一度毛玉ができたらすぐに新しい毛玉が出てくるもんだと思ってましたが、正しく取り扱うと毛玉ができる周期をかなり遅らせることができたんです。
ニットセーターの毛玉についての知識は知っておいて損はないと思うので、『毛玉ができる原因』や『毛玉の防ぎ方や対処法』、『僕が経験した毛玉をきれいに取る方法』について書いてみます。
ニットにできる毛玉って何なのか?
セーターの生地に毛玉があるだけで、なんだかみすぼらしく見えてしまい、せっかくの服の印象が悪くなってしまいます。
そんな毛玉の正体は、ほこりや汚れではなく、繊維が玉状になったものです。
繊維どうしが擦れることで毛羽立ち、絡み合う事によって束になり、毛玉ができてしまいます。
織物よりも編み物にできやすいです。
毛玉ができることをピリングといい、『ピル』は小さな球を意味します。
毛玉はなぜできるのか?
何かが付着して毛玉になるのではなく、
服の繊維が絡まってできる毛玉。
もともとは服の一部です。
そんな毛玉ができる原因は2つあります。
毛玉の原因その1『摩擦』
まず一つ目の原因は「摩擦」です。
洋服の繊維が擦れて毛が飛び出すと毛玉ができてしまいます。
特にポリエステルやアクリルなどの化学繊維は要注意です。
反対に、ウールやカシミアなど天然の毛繊維は毛玉ができても勝手に剥がれ落ちます。
化学繊維は繊維自体が強く、毛玉として生地の表面に残りやすいのです。
生地が擦れて摩擦が生じると、繊維の表面が毛羽立ってしまう。この毛羽立ちがまた擦れて絡まり、毛玉になります。
これが毛玉ができるメカニズムです。
毛玉ができる原因は、繊維が摩擦によって引き出され、これが互いに絡み合って玉状になることです。
毛玉の原因その2『静電気』
2つ目の要因は「静電気」です。
摩擦によって出てきてしまった毛は、丸まって毛玉になります。その丸まってしまう原因というのが静電気だそうです。
静電気が発生しやすいのは空気が乾燥している冬。
運悪く(?)ニットを頻繁に着る時期と重なっているのです。
毛玉ができやすいニットは?
生地にも毛玉ができやすいものとそうでないものがあり、異なる糸を組み合わせた生地は毛玉が発生しやすいです。(綿とポリエステルなど)
この生地はそれぞれの組成の毛羽立ち同士が一度絡まりあうと、なかなか解けにくく、固まってピリングになります。
逆に綿100%など、組成が一種類の生地は毛玉ができにくいようです。
糸の撚り数が少ないものや密度が粗い編物、繊維強度が強いものに生じやすく、セーターなど太い糸で編んだニット製品で出来やすいです。
中でもアクリルやポリエステルは強い繊維なので毛玉ができやすく、取るのも少しばかり大変です。
これらの素材で作られていることが多いので、どうしても毛玉はできやすい傾向にあります。
毛玉のできにくいニットは?
毛玉ができにくいのは、動物の毛から作られた天然繊維です。
一方、毛玉ができやすいのは、人工的に作られたアクリル・ナイロンなどの化学繊維。
天然繊維の方が優秀なんですね。
では天然繊維に毛玉ができにくいのは、なぜでしょうか?
毛玉ができにくいとされる天然繊維ですが、実際には化学繊維と同じように毛玉はできています。
天然繊維は糸の強度が弱いため、少しの摩擦で簡単に毛玉が取れます。
そのため生地に残りにくいのです。
反対に化学繊維は糸が強いため、生地から毛玉が取れずに残ってしまいます。
ニットの毛玉を防ぐには?
生活の中でいくつか対策することで、毛玉を予防することはできます。
ニットの洗濯
洗濯でも毛玉ができます。セーターに毛玉ができる要因は、実は洗濯がけっこう大きいです。
昔はニットは洗えなくて、洗うと一気に縮んで型崩れするものばかりでした。
最近のニットは家庭でも洗える扱いやすいものが増えましたね。
ウールは天然の防臭機能があるので、頻繁に洗う必要もないのですが、いざというときのために知っておいた方がいいことがけっこうあります。
サイズにあった洗濯ネットを使う
まずは必ず洗濯ネットを使うこと。
ニットに合うサイズのネットを使っていること、そして1つのネットにニットを何着も入れないことが大切です。
何着も入れてしまうとそこで摩擦が起きてしまい、ネットが大きいと今度はネットの中で摩擦が起きてしまいます。
洗濯機の中で他の衣服とこすれ合い、生活の中ではなかなか摩擦が起きないような部分にも毛玉ができてしまいます。
なので洗濯ネットは1着につき1枚。
中でニットが動かない、ぴったりサイズを使用するのがいいです。
100均で売ってるもので十分です。
中性洗剤と柔軟剤を使う
ニットを洗う時は衣類に負担がかからない中性洗剤を使用すること。
いわゆる、おしゃれ着洗剤というやつです。
普通の洗剤より洗浄力が弱く、デリケートな衣類を洗うのにぴったり。
合わせて摩擦時の静電気を防止する、柔軟剤も入れるようにしましょう。
「手洗いコース」「ドライコース」で洗う
洗濯は通常の洗濯ではなく、デリケートな衣類を洗う、『手洗いコース』や『ドライコース』などを使用するのがおすすめ。
水流の強さなんかが違うので、これだけで洗濯槽の中で衣類が動くのを防止するできて、おのずと毛玉の予防に繋がります。
生地に負担がかからないような洗い方をするだけで、簡単に毛玉はできにくくなるんです。
普段の取り扱いは?
ここからは着用するときの予防法をご紹介します。
誰でもできる簡単なことだけ書いてるので、洗濯方法と合わせてぜひ実践してみてください。
連続で同じニットを着ない
服でも靴でも同じですが、同じアイテムは毎日連続で着ない方がいいです。
一度着たニットは、1日は休ませてから着用するようにしましょう。
日数を空けることで、繊維の毛羽立ちも落ち着いてくるんです。
着ている時の摩擦に注意する
毛玉の原因のひとつが摩擦です。
着用している際に擦れて毛羽立ちが起き、さらに摩擦が加わることで毛玉ができてしまうのです。
そして案外『ニットとバッグとの擦れ』に無防備だったりします。
ショルダーバッグやリュックのストラップや紐があたる肩の部分が毛玉になりやすいです。
肩などの摩擦が起きやすい部分は要チェックです。
ただ、「絶対にしてはいけない」と思うとしんどくなるので、「気にしておく」くらいでいいと思います。
神経質になりすぎると洋服が楽しめなくなってしまいます。
毛玉の取り方
気にはしていても、毛玉はできてしまいます。
それはどうしようもありません。
毛玉ができてしまっても焦らずに気を落とさずに、落ち着いて対処しましょう。
セーターの毛玉は手でむしりとってはいけない
毛玉も繊維の延長なので、線維と毛玉はつながっています。
それを無理やりむしり取ると、毛玉になっていない生地にも強い力が加わり、ダメージになります。
むしり取った毛玉は無くなりますが、その部分はすでに毛羽立っているような状態なんです。
引きちぎっているんだから、そりゃそうです。
毛玉をむしり取ったその部分では、次の毛玉が作られる準備がされています。
そうなるといずれは、むしり取った毛玉が再びあらわれるということになります。
生地の負荷がかかるような毛玉の取り方はしないほうがいいです。
毛玉には毛玉取り機を使う
どうすれば負荷がかからないように毛玉を取れるのか。
毛玉を無理に引っ張ろうとせずに、ハサミなどの鋭い刃で切るのをおすすめします。
ハサミだと毛玉を持ち上げるのに少し引っ張るので、毛玉クリーナーが生地を傷ませにくく取り除くことができます。
僕はテスコムの毛玉クリーナーを使っています。
これ一台でニットからスウェットまで全ての毛玉に対応できます。
そしてニットセーターといっても、ラムウールのような薄手のものから、モヘアのような毛足が長くボリュームのあるものなど、種類があります。
これらに対応するために、毛足の長さに合わせて刃の位置を調整できるものがおすすめです。
テスコムのものは毛の長さを三段階に切り替えができるようになっているのですが、これがなかなか便利で気に入っています。
基本は一番短くして毛玉を取り、毛足が長いニットの場合はそれにあわして長くしてます。
実際に毛玉取りを使ってみました。
これが、毛玉を取る前のセーターの袖のところです。
そしてこれが毛玉処理した後のセーターです。
毛玉をとるだけで印象が全然違いますね。
通販で2〜3000円くらいで買った毛玉取りですが、ニットの状態もよくなり気持ちよく着れるようになります。
昔の毛玉取り機は生地に穴が空いてしまいやすかったそうですが、そのようなことは全くなく、すごくおススメです。
最後に
毛玉クリーナーは高いものではないですし、それだけでお気に入りのニットを長く使えるようになるので、本当におすすめです。
テスコムのこの毛玉取りを使っています。
毛玉の原因の一つである『静電気』について書いた記事なんかもあるので、よかったら読んでみてください。
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