こんにちは。 服の生地についてのブログを書いています、服地パイセンです。
ゴアテックスの生地は『透湿防水の防風生地』と言われます。風と水の侵入は防ぐけど湿気は放出するという生地です。
かなり前にゴアテックスの構造について解説したことがあって、ゴアテックスの生地は3層構造になっていて各層毎に役割が違うということを書きました。なんですが、それぞれの層がどうなっているのかを実際に見てみたくて、生地を分解してみることにしました。
各層の拡大写真や、水をかけてみて撥水性をみていこうと思います。それと、これまでの経験から学んだゴアテックスの寿命などについても書いてみます。
そもそもゴアテックスとは?
いったいゴアテックスってなんなのか?
wikipediaにはこう書いてあります。
"ゴアテックスは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、テフロン)を延伸加工したePTFEフィルムとポリウレタンポリマーを複合化して作る。
(中略)薄いフィルム状のゴアテックス メンブレンは1平方センチメートルに14億個の微細な孔をもつ。
その最大の特徴は、防水性と透湿性を両立させていることにある。つまり、水蒸気は通すが雨は通さない。
基本的にはナイロンなどの表生地と裏地でゴアテックス メンブレンをラミネート加工した3層構造(3レイヤー)、裏生地をコーティングした2層構造(2レイヤー)が主流であるがゴアテックス シェイクドライプロダクトテクノロジーなど、ゴアテックス メンブレンを表面に使用した2層構造の生地も存在する。”
引用:Wikipedia
どういうことかというと、メンブレンという無数の穴の空いた生地を貼り合わせることで、防水透湿性の効果が得られているということがWikipediaにも書かれています。
ゴアテックスの防水透湿の仕組みとメンブレン
ゴアテックスの核となる部分は「メンブレン」と呼ばれる薄い膜です。
そのメンブレンは天然鉱石のホタル石を原料にしたePTFEというフッ素樹脂を、薄い膜状に加工しているそう。
このメンブレンは拡大していくと網目状になっていて、水は通さないけど水蒸気は通すという穴のサイズになっているんですね。
『ゴアテックスは蒸れない』
といわれるのは、水蒸気が衣服の外に逃げてくれるからです。
防水透湿ってすごい仕組みだけど、ある意味必然だった!
ゴアテックスの生地は水蒸気を通すので蒸れません。
でも水蒸気が通るということは、外から中にも水蒸気が入ってくるでは?=蒸れないとは言えないんじゃないか??
という疑問が出てきそうなものです。
でもこの答えは、
『外の水蒸気も通すけど、着用しているときは水蒸気は入ってこない』
というものです。
これは水蒸気の性質が関係していて、水蒸気は暖かく湿ったところから冷たく乾いたところに移動する特性があります。
ゴアテックスの上着を着る環境では衣服の中の方が温度が高くて暖かいはずなので、外の水蒸気は中には衣服内には入ってこずに放出される、ということになります。
もし体温よりも気温が高くて湿度が高い熱帯雨林などで着用した場合は、外の水蒸気が入ってくることになります。でも、そんな環境でゴアテックスを着ることはありません。
外が寒いからアウターを着るのが普通です。外気よりウェアの中の方が暖かく湿っているので、中の水蒸気は外に抜けていくことになるんです。
ノースフェイスのゴアテックスマウンテンパーカでテストします
ゴアテックスの仕組みはわかったところで、今回の本題。ゴアテックスの生地を分解してしていきます。
今回使うのはこちら、10年くらい前のノースフェイスのマウンテンパーカーです。
このマウンテンパーカーは、ブログ開設時から僕のことを応援してくれている友達が提供してくれました。(本当にありがとう!ページ下部にInstagramのアカウント載せときます!)。
肩の切り替えがポイントになっているノースフェイスのマウンテンパーカー。
この切り替えがアイコニックなデザインですが、今回のアウターは切り替えが同色で、ロゴも目立たないようになっています。
形はマウンテンライトかな?
もちろん生地はゴアテックスを使用してます。
品質タグを見る限り、表側はコーティング樹脂加工が施された綿100%の生地、裏側はナイロン100%の生地のようです。
現行のマウンテンライトの表地はナイロンですが、これはコットンを使用しているようです。
そういった違いをみていくと、服がアップデートされていった歴史をみているようでおもしろい。
コットンの表地にナイロンの裏地。その間にゴアテックスメンブレンがはさまれているのでしょうか?
この生地を一層ずつ観察してみます。
表地を詳しく観察します
表地はコットンの生地。
ハリのある生地です。
スコープで拡大してみるとこんな感じです。
しっかり密に打ち込まれていますが、綿なので水分は浸透してしまうのでしょう。
ゴアテックスといえば撥水性のある生地なので、ここに水を吹きかけてみます。
撥水力が高いほど、水滴は球体になりコロコロと転がるのですが…
…わりとべちゃっとしています。
これは使用や経年によって、撥水基というゴアテックス生地表面のコーティングが崩れているところの撥水力が低下しているということですね。
裏地も詳しく観察します
次はナイロンの裏地を見ていきます
いかにも化繊らしい光沢感のある生地です。
スコープで拡大してみます。
どうなっているのかよくわかりませんが、
ナイロンの繊維がメッシュ状になっているように見えます。
裏地にも水滴を吹きかけてみます。
裏地は化繊だし撥水するだろうと思っていましたが、しっかり染み込みました。
よく考えてみると表地と中間層で水をシャットアウトするから、裏地には撥水性は必要ないということなのかもしれませんね。
それでもシーリングテープの箇所が水をまったく弾かないのは意外でした。
中間層のメンブレンは?ゴアテックス生地を分解すると…
ゴアテックスはメンブレンに表地と裏地を貼り合わせたものということで、中間層を観察するために3枚に分けてみようと思います。
生地を剥がすために切ってみました。
さぁ分けようと思って剥ごうと引っ張ったのですが、表地と裏地はしっかりと貼り合わせれていて3枚に剥ぐことはできませんでした。
断面の写真をみると3枚に剥げそうにも見えるのですが、しばらく試行錯誤してみて全然剥がれる気配がなかったのであきらめます。
それくらいしっかりと貼り合わされています。
本当は中間層のメンブレンの拡大写真を撮って載せたかったのですが、なかなかうまくいきませんね。。。
ゴアテックスの劣化や寿命について
ゴアテックスに明確な寿命はないとは言われていますが、ウエアとしての限界を感じるのはどのようなときでしょうか。
買い替えの目安はシームテープの劣化
洋服は針穴から浸水してくるといいます。
なので撥水性能のあるゴアテックスの生地は縫い目を出さないためにシームテープが貼ってあります。
昔ゴアテックスのアウターを持っていましたが5〜6年くらいでシームテープが剥がれてきたことがあります。
とりあえず接着剤で貼って急場をしのいでいましたが、一度剥がれてきてからは長くは持ちませんでしたね。
今のゴアテックス製品はもっともっと長持ちするように改良されているのかもしれませんが、シームテープの劣化は寿命の目安になると思います。
シームテープより先に寿命をむかえる個所もある
今回のマウンテンパーカは10年以上前のもので
さまざまなアクティビティなどにも着ていきハードに使っていたそうです。
袖口が擦り切れていました。
やはり繊維製品は擦れやすいところからダメになっていき、アウターの袖口は案外擦れやすく破れてくることが多いようですね。
『シームテープよりも袖が先にダメになることもある』これは今後のウエアを選ぶ上で参考にもなりそうです。
最後に
今回わかったことは、
ゴアテックスは三層に分けることができると思っていたけど、表地と裏地はしっかり圧着されていて不可能だということ。
そして撥水性のあるゴアテックスも、ケアをしないと撥水性能が低下してしまうんですね。
改めてメンテナンスの重要性を感じました。
以前、ニクワックスのコットンプルーフという、コットン用の撥水剤を使ったことがあるのですが、これはなかなか効果ありました。
▶︎NIKWAX(ニクワックス)は水を弾かなかった生地にも撥水機能を持たせられるのか?
撥水力の落ちたゴアテックス製品は、
防水透湿素材や撥水素材用の洗剤『ニクワックス』を使用すると撥水性能を取り戻すことができます。
(洗剤と撥水剤があり、ネットだとセットで買うのがお得です)
そして今回ノースフェイスのゴアテックスマウンテンパーカーをくれた友達である、ユタカメのInstagramのアカウントです。趣味のカメラで撮ったおしゃれな写真を載せているので、よろしければ覗いてみてください。
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