こんにちは。 服の生地についてのブログを書いています、服地パイセンです。
繊維の分類についての記事で『繊維は長さでも分類される』と書きました。今回はそこにフォーカスした記事を書こうと思います。
「繊維の長さ」と聞いてもピンとこないし、正直興味もわかないと思います。普通はそんなこと考えるようなこともありません。
知っていて何かの役立つのかと言われたら、役に立たないかもしれません。
ある日、通勤時間に人の服を観察していました。
「この人の服は長繊維」
「あの人の服も長繊維」
「その人の服は短繊維」
…
気づいたことがあります。ほとんどの女性が長繊維系の服を着ているということ。
短繊維と長繊維の特徴を知っているから仕分けれるんですが、表情が異なるので、ある程度わかるようになります。(繊維の長さ以外の要因もあります)
ほかにも例えば同じポリエステル100%の生地でも、ウインドブレーカーのように表面がツルツルしているものや、ウールのように毛羽感のあるものなど色んな種類があります。
これも短繊維と長繊維の特製の違いを知っているから作れるし、デザインとして服の生地に落とし込めるわけです。
ただ、服の生地を詳しく知ろうと思っても障壁があって、
「フィラメント」とか「ステープル」とか、聞きなれない単語が理解を難しくしているように思います。
生地について知るために、このことは必要な知識なので、できるだけ簡単にわかりやすく解説してみます。途中の文章を読むのが大変だと感じるかもしれません。
最後の項に内容をまとめてますので、そこだけでも読んでってもらえたら嬉しいです。
長繊維と短繊維とは?
綿やポリエステルなど繊維には様々な種類があり、繊維の長さでも二種類に分けられます。
長繊維と短繊維です。
長繊維:1本の繊維が長い繊維のこと
短繊維:1本の繊維が短い繊維のこと
繊維とは簡単にいうと
『細くて長いもの』です。
具体的にどれくらいの長さかという定義はないのですが、太さに対して十分に長さがある細長いものということですね。
繊維の定義はけっこうざっくりしているんです。
しかし、長さが違うだけで全く異なる性質の糸が作られるのです。
どちらか一方が優れているということではなく、それぞれに適した用途があるので使い分ける必要があるんです。
長繊維(フィラメントヤーン)
長繊維とは、繊維の長さが極めて長い繊維のことです。「フィラメント・ヤーン」とも呼ばれます。
具体的な長さに定義はありませんが、数メートルとかの話ではありません。
数1000メートルくらい続くような繊維を長繊維として分類します。
長繊維は化学繊維と天然繊維では唯一シルクだけがあてはまります。シルクは蚕の繭から採りますが、実はたった一本の糸がずーっとつながっていて、長さは1500mくらいあるそうです。
そして化学繊維は人工的に作る繊維です。
シャワーヘッドのような形状をした口金から繊維の素になる樹脂を押し出して繊維を作っていくので、長さに限りなく作り出すことができます。1本の繊維はすごく細いので、糸にするには何本かを束ねて適当な太さにして撚りをかけて安定させます。
化学繊維の作り方の記事で詳しく解説してしているので、よかったら読んでみてください。
また化学繊維は、紡糸の過程で短繊維に整形することもできるので「化学繊維=長繊維」とは限りません。
・化学繊維とシルクが長繊維に該当
・目安として繊維の長さが1000m以上
短繊維(ステープル・ファイバー)
短繊維とは繊維1本の長さが、数ミリから数十センチメートルの繊維を指します。
コットン、ウール、リネンなどの天然繊維が短繊維に分類されます。
なぜ短い繊維が長い糸になるのかというと、短い繊維も撚りをかけて紡ぐことで長い糸にできるからです。
短い繊維を合わせながら糸にしているので太さが均一でなく、空気を含みやすくなるので、保温性が求められる生地と相性がよくなります。
撚りをかけることで繊維同士が絡み合うので、引っ張っても繊維が抜けず糸の状態を保つことができます。
撚りをかけることで作る糸を「紡績糸」もしくは「スパン糸」といます。
繊維が短いため多少の毛羽立ち感があって柔らかく、風合いのある生地などに向いています。
短い繊維を綿状にして、その綿を撚っていくことで糸を作ります。
この綿状にする際にいくつかの繊維を混ぜることが可能で、例えば綿とポリエステルの綿を混ぜて糸にすることで両方の特性を持った糸を作ることができます。
化学繊維も人工的にさまざまな形状へ整形することができ、短繊維を作ることができます。
・繊維の長さが数mmから1m程度
・シルク以外の天然繊維と化学繊維が短繊維
・複数の繊維を混ぜて糸にすることが可能
長繊維と短繊維の違いは?比較と特徴
繊維の長さが違うことで、
生地の見た目や風合いに違いが生まれます。
長繊維と短繊維にはどのような違いがあるのでしょうか?
それぞれの特徴を風合い、厚み、光沢感、強度に分けて解説していきます。
風合い
短繊維は繊維の1本1本が短く、毛羽感が出ます。コットンのような風合いのある生地を想像するとわかりやすいく、柔らかくてふんわりとした肌触りは短繊維の特徴です。
長繊維の場合は、短繊維のようにふんわりとした手触りの生地をつくるのは難しいでしょう。フラットで凹凸のない表面感は、長繊維でしか表現できません。
厚み
短繊維は毛羽感があり体積が大きく、生地に厚みが出ます。そしてその糸を使って生地を作るとボリューム感のある生地を作ることができます。
逆にスパン糸を使って薄い生地を作るのは難しいです。
長繊維は膨らみがない分、薄くなめらかで軽やかな生地を作ることができます。
その糸にボリューム感を持たせる加工も可能です。
過去に起毛について書いた記事もあるので、よかったら読んでみてください。
光沢感
短繊維は短い繊維をつなぎ合わせているので毛羽立ちがあり、光沢感の少ない自然な風合いです。
長繊維は繊維ひとつひとつが長くてまとまりがよく表面がフラットで反射率が上がるため、光沢感が強くなります。光沢感があってキレイめな質感が好みの人にぴったりです。
強度
長繊維の方が細くて弱そうに感じますが、実は長繊維の方が強いといわれています。理由は短繊維の特性と比較するとよくわかります。
短繊維は短い繊維を撚って紡いでいるので、ほどけやすいので、長繊維と比べて強くありません。
長繊維と短繊維の組み合わせ
長繊維にも短繊維にも別々の魅力があります。そしてその両方の魅力を引き出すために、両方の糸を組み合わせて生地を作る方法もあるそうです。
何度も出てきましたが、短繊維は糸自体が毛羽立ちやすいです。毛羽立ちのある糸を織ると、摩擦で糸切れが発生しやすかったり、絡まりやすかったりするそう。
たて糸に長繊維を張ることで、絡まりを軽減したり織りやすくなります。
また長繊維の強度や安定性を持ちながら、短繊維の風合いの良さも掛け合わせるような良いとこどりした生地に仕上げることができます。
化学繊維は短繊維か? 長繊維か?
天然繊維は1本の長さがある程度決まっているので、はじめから分類されます。
それに対して化学繊維は人工的に作られ、製造段階で長さをコントロールできます。なので繊維ごとに短繊維か長繊維かを分類することはできません。
ポリエステルを例に挙げてみると
「ポリエステルのステープル」は短繊維、
「ポリエステルのフィラメント」は長繊維、
といった分類の仕方になります。
ちなみにポリエステルの短繊維はわた状で、
そのまま寝具の詰め物として使用したり、
圧着して不織布として使用したりされます。
ポリエステルの綿を紡績して糸にすることで、衣類やカーペットにも使われます。
化学繊維も一度わた状にすることで、コットンライクなポリエステル生地を作ることができるんですね。
長繊維と短繊維の違いのまとめ
長繊維と短繊維の違いについてみてきました。
内容をまとめてみます。
【長繊維と短繊維のまとめ】
・長い繊維が長繊維、短い繊維が短繊維
・天然繊維は短繊維、シルクだけが長繊維
・化学繊維は長さを変えれるので長短どちらも可
【長繊維の特徴】
・風合いは固め
・薄くて軽い生地を作れる
・なめらかで光沢のある糸を作れる
・強度は高い
【短繊維の特徴】
・風合いが柔らかい
・毛羽感があり厚みがある
・光沢感は少ない
・強度は高くない
こうして比較すると特性の違いがよくわかりますね。繊維の種類や組成だけでなく長さでも違いがあるなんて、本当に服の生地は奥が深いです。
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