こんにちは。
服の生地についてのブログを書いています、服地パイセンです。
小さい頃から、着心地の悪い服が嫌いでした。
『着心地の悪い』という表現は良くないかもしれません。パリッと硬い生地感の、肌なじみのよくない服が苦手でした。
なので小学生のときは新品の服を買ってもらうよりも、兄のお下がりや大人が着古してくたくたになった服を好んで着てました。
サイズも大きいし、くたびれているので少し見すぼらしかったかもしれませんが、すっかり柔らかくなった生地はすごく着心地がよかったのです。
中学生になり、制服のカッターシャツなどパリッとした服も着るようになりましたが、心地悪かったです。
学ランの詰襟なんかはあごに硬い生地があたり最悪の着心地でした。
やはり着心地の良い服が好きでした。
そんな、着心地の良い服はどんな要素から成り立っているのだろうか。
動きやすい形や身体を圧迫しない伸縮性といったさまざまな要因があります。生地では、ソフトタッチなものが着心地いい。
前回のユニクロのハイネックTシャツでも書きましたが、生地をわずかに起毛させることで、服の着心地は格段によくなります。
今回はそんな、服の着心地がよくなる『起毛』について効果や種類など書いてみようと思います。
起毛の加工方法って想像できますか?
どうやって起毛させているのか。
これ、知るとけっこうおもしろいんですよ。
起毛とは?
起毛とは、どういうものか。
『ふわふわ』だとか『ふっくら』という言葉がしっくりくるような柔らかな風合いの生地だというのはなんとなくイメージできると思います。
起毛とは生地の表面を毛羽立たせる加工技術のことで、片面のみ起毛させたもの、両面起毛させたもの、目の細かいものや毛足の長めなものなど色んな種類があります。
そうです、起毛は『加工』なんです。
どのような効果があるんでしょうか。
起毛の効果
起毛素材は冬用の衣類によく見られます。
ふっくらした起毛生地は空気をため込むことができるので、『あたたかい』という特徴があります。
先述のとおり『生地が柔らかく手触りもよくなる』。
見た目としては、『外観がぼんやりする』といった効果もあります。
そして起毛加工にも強さのレベルあり、
しっかり起毛させるほどふわふわとした生地になります。
わずかに起毛させた生地は、微起毛とよばれ、
その生地感はピーチタッチやピーチスキンと表現されます。
微起毛の生地は、表面に繊細な毛がついたような質感の桃に例えられることがよくあります。
生地表面を加工することでデザインから機能性まで色んな変化がおきます。
起毛素材にはこんなものがある
起毛素材は秋冬ものに使われることが多いのですが、どのような生地があるんでしょうか。
起毛生地はたくさんありますが、代表的なものを挙げてみます。
起毛素材といえばフランネル
秋冬のシャツといえばネルシャツ。
ネルシャツに使われる生地、フランネルは起毛生地です。ふっくらしているのは起毛加工が施されているからです。
コットンのフランネルは着心地がいいことから、パジャマや子供服なんかに広く使われます。
ネルシャツについて書いた記事もあるので、よかったら読んでみてください。
スエードとヌバックも起毛生地です
起毛と聞くと、布を想像してしまいますが、起毛加工を施した皮革もあります。
それはスエードとヌバックです。
スエードは皮革の床面(裏面)を起毛させた生地で、銀面(表面)を起毛させたものがヌバックです。
レザーの分類という記事でも触れているので、よかったら読んでみてください。
起毛加工のTシャツもあります
起毛素材は厚手の生地を連想しますが、Tシャツにもあります。少し厚みが出るので秋冬用のインナーに使われます。
前回のユニクロのハイネックTシャツも起毛加工が施されています。フライス生地に起毛加工を施すことで極上の着心地になります。
スウェットの裏起毛と起毛は違うのか?
同じものだと思って大丈夫です。
裏毛スウェットを起毛加工すると裏起毛になります。
そしてこれも起毛の種類になります。
裏毛や裏起毛など似たような文字が並んでややこしいですが、スウェットの素材などについて書いた記事もあるので、よかったら読んでみてください。
起毛加工したシャギーニット
あまり馴染みのないものかもしれませんが、シャギーとは『毛むくじゃらの』という意味です。毛足の長い毛羽立っているような質感の素材のことをいいます。
セーターやカーディガンなどの洋服や帽子なんかによく使われています。
通常の起毛よりも毛羽立ちが強くて毛足が長いのが特徴です。毛足が長い分、保温性もさらに高くなります。
ウール素材のシャギーニットなどはとても肌触りがよく上質です。
起毛の歴史と現代の起毛加工の方法について
起毛生地は、案外たくさんありますね。
実はまだまだあり、細かいことを言い出すと挙げきれないくらい豊富にあります。
では起毛加工自体はいつ頃からあるのか?
日本での起毛の歴史は江戸時代だそうです。江戸時代は1603〜1868年と幅がかなり広いのですが、150年以上前にはすでに起毛生地があったということになります。
世界規模の話では、1855年のパリの万国博覧会には「起毛機」が出展されていたそうなので、きっとその頃なんでしょう。
当時はイガやアザミの実のとげで織物をこすり毛羽立てていたそうです。
植物をつかっていたんですね。
現在は針布(しんぷ)による起毛機が一般的で、天然の植物の実を使って起毛しているのはごくわずかなんだとか。
針布は、このように小さい針が無数についた布です。
ちなみに起毛機は全自動ではなく、未だに職人さんがその目とその手でひとつひとつ手作業で行なっているそうです。
起毛加工の動画をみつけました。
↓は動画です。再生すると音が出ますので音量にご注意ください。
職人さんが生地を送ったり戻したり、何度も起毛具合を調整しているのがわかります。
起毛生地は毛玉ができやすい?取り扱い方法について
起毛生地は毛玉ができやすいといえます。
というのも毛玉は繊維の種類に関係なく、繊維と繊維が強く擦れあうことで起こる摩擦により生じます。
上の動画でもわかりますが、起毛は摩擦により毛を起こしています。
これは全体的にうっすらと毛玉を作っているようなもので、起毛加工されていない生地と比べると、どうしても毛玉ができやすく強度は劣ります。
家庭でのお洗濯は可能ですが、長時間の洗濯機の回し過ぎや強い脱水によるダメージが毛玉や繊維を傷める原因になります。
日頃のお手入れにより生地の風合いを長持ちさせることができるので、おしゃれ着用の洗剤や、洗濯ネットをお使いいただくことをお勧めします。
毛玉ができやすい生地の取り扱いや、長持ちさせる方法になんかは、こちらの記事を確認ください。
【ニットの毛玉について】
【スウェットの毛玉について】
最後に
たかが起毛、されど起毛。
服の着心地を大きく左右する大事な加工です。
着心地の良いものを求めるのは、今も昔も変わらないことなんですね。
「もともとはトゲトゲの木の実で起毛加工をしていた」
ということを初めてしったとき、生地の加工ってなんておもしろいんだろうと思いました。
そういえば、着心地がいい裏起毛で有名な国内ブランドの起毛加工について、どうやっているのかメーカーさんに質問したことがあります。
そこでは実際に今でも植物の実をつかって起毛加工を施しているそうです。
ただ、何の実をつかっているのかは企業秘密ということで教えてもらえませんでした。
いったい何をつかって起毛させているのか、今でも気になっています。
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