服地パイセン

生地にうるさい服屋で学んだことを活かし、洋服のわかりづらいことをわかりやすく解説します。

パイル生地とは何なのか。タオル地との違いは何?徹底解説します!

パイル生地とは

こんにちは。 服の生地についてのブログを書いています、服地パイセンです。

 

毎年夏の部屋着として活躍しているものがあります。パイル生地でつくられたアメリカ製のショーツ。 お義父さんからいただいた80〜90年代頃のもので、気に入って履かせてもらってます。

パイル生地のショーツ

 

どこが気に入ってると聞かれたら、ふわふわと肌触りが優しく、履き心地のいい生地を使っているところです。仕事から帰宅してこのパンツに履き替えると、スイッチをオフにしてくれる感じ。

 

このパンツの生地は、『パイル生地』が使われています。長年着用していることもあって生地の表情がだいぶ潰れてしまっていて、アップでみるとこんな表情しています。

パイル生地の拡大写真

 

今回はこのパイル生地について解説してみようと思います。

 

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パイル生地とは?簡単にいうと何?

パイル生地はループ状になっている

『パイル生地はタオルの生地』というと理解、イメージしやすいです。輪っか状になっていて、弾力性に優れており手触りが柔らかいのが特徴です。

 

日常的に使うタオルのほとんどがパイル地で作られています。ただ、パイル生地じゃないタオルもあるので、それはまた後半に説明します。

 

なんとなくパイルについてざっくり知りたい、という方はこれだけ知っていれば一般的には十分です。これ以降はパイルのメリットやタオルについても詳しく書いていきます。

 

パイル生地をもっと詳しく

パイル生地を具体的に文字で表すと、『表面の糸がループ状になっている生地』です。タオルもよくみて見ると、表面の毛足が輪っかになっているんです。

タオルのふわふわの部分は、生地からでた輪っか状の糸が密集しているんです。

パイル生地はやわらかいループが密集している

 

パイルとは下地から出ている繊維のことで、ベースの布から糸がリング状に突き出す構造になった織物や編物のことです。日本語では添毛織り(てんもうおり)ともいわれます。

 

このループは片面のものもありますし、両面ともループになっているものもあります。編んで作られるものも、織って作られるものもあります。

 

僕が穿いているパイルのショートパンツは、裏面が天竺(Tシャツの生地)になっているので、編んで作られたものだということがわかります。

パイル編みの生地の裏表

 

パイルは一般的にはタオルの生地として通ってますが、実はタオルみたいな生地だけでなく、フリースやベルベット、コーデュロイなどもパイルの一種になります。

 

…全然違うもののように思いますが、どういうことでしょうか。その辺りも触れていきます。

 

カットパイルとループパイルの違い

パイルの形状は生地にした後の処理によって2種類に分類されます。


パイルの輪っかをそのままにしている状態のものを、アンカットパイル(ループパイル)といいます。アンカットパイルではタオルが代表的なアイテム。

 

芝刈り機で芝を刈るようなイメージでループをカットして毛足を揃えたものをカットパイルと呼びます。

カットパイルにはビロード、別珍、絨毯などがあります。

 

たてパイルとよこパイルの違い

カットパイルとループパイルは、生地にした後の処理で分類が変わりますが、それ以外にもパイルの織り出し方にも2種類あります。


たて糸でパイルをつくるのが「たてパイル」。
よこ糸でパイルをつくる「よこパイル」もあります。

 

たてパイル織りは、タオルやベルベットなど毛足の長いものが多いです。

逆によこパイル織りはパイルが短めで、コーデュロイや別珍などです。

 

ちなみに別珍とベルベットは同じと思われがちですが、厳密に言うと違うものです。何が違うかはご想像通り。たてパイルかよこパイルかが違うということですね。

 

そして同じよこパイルでもコーデュロイと別珍が全然別もんに見えるのは、理由があります。

 

•密度が全然違う
•畝を生み出す加工をしているかどうか

 

この2点が生地の分類で大きく違うところになります。
こうやってパイル生地にしたあとに施す加工でどんどん分類されていきます。

 

パイルの特徴は?メリットとデメリット

パイル生地はよく目にするタオル生地で、糸がループ状になっていてフワッとしています。
パイル生地の特徴をメリットとデメリットに分けて挙げていきます。

 

パイル生地のメリット

パイル生地は洋服だけでなく、日常生活の中でも使いやすくなっています。
むしろ福島としてよりもそっちの方が多いと思う思います。

柔らかくて肌触りがよい

ふわふわのタオル生地 

家にあったタオルの中で一番柔らかいものを撮影しました。

 

他と比べて糸が細くて、毛足が長いです。
細くて長い糸がふわっとした弾力を生み出し、柔らかい肌触りを感じられます。


パイルが長いほうがふんわり感が強く、パイルが短いほうは肌触りがやや固めに感じます。

 

吸水性が高いので水気をよく吸う

ループが水分をよく絡めとってくれます。
そして表面積が大きいので、その分吸水性が高いことも特徴です。

 

タオルの素材に綿が使われることが多いのは、綿は吸水性能が高いからです。
表面がループ状になっているパイル地の性質を最大限に活かせられる組成なんです。

 

それにより水分や汗をさっと吸い取ってくれるんですね。

 

保温力を調整できる

パイル生地は表面がループ状なので、そこに空気の層ができて保温性が高くなります。

糸の太さやループの長さ、生地の厚みなどによって保温力を自在に調整できます。

サマーパイルのようなループが短く薄手のものであれば、サラっと涼しげな素材になり夏でも涼しく着用できます。

 

ループが長く厚手のものであれば冬に温かく使える素材になります。起毛スウェットなんかは、パイルを起毛させて保温性を高めたものです。

 

 

パイル生地のデメリット

パイル生地にももちろんデメリットはあります。

 

パイルが引っ掛かりやすい

パイルは糸が輪っかになっているのでガサガサしたものは引っかかりやすいです。
例えば爪などをひっかけてしまうと糸がほつれてしまったり。

 

糸がほつれたら、そこをついつい引っ張っぱっちゃうんですけどハサミで切った方がいいです。
わかってるんですけどやってしまうんですよね。

 

はじめは繊維が抜けやすい

新品のものは繊維が抜け落ちやすく、黒いTシャツの上なんかに着ると、白い繊維がむちゃくちゃ付着してしまいます。
未洗いの製品の場合は、初めに水通しした方がいいかもしれません。

 

洗濯の際も他の洋服に繊維がついたり、引っかかってほつれるのを防ぐために洗濯ネットに入れることをおすすめします。

 

パイルの作り方

パイル生地の作り方については、織機でつくる方法と編機でつくる方法があります。

 

パイルを織機で織る場合は『開口装置』という織り方をコントロールする部品を織機に取り付けるそうです。

開口装置はタペット、ドビー、ジャカードのどれかが織機に搭載されています。

 

タペットはたて糸2本、パイル糸2本の平織り。

 

ドビーは幾何柄やストライプ、小さな繰り返しの変化のある模様を織ることができます。

 

ジャカードはたて糸とよこ糸を1本1本コントロールして複雑な模様を織り出すことができます。

 

なんとなくの仕組みはわかるんですけど、これ以上はうまく説明できません。

 

パイルを編んで作られるものは、簡単にいったら天竺と一緒です。
天竺編むときにもう一本の糸がシンカーという針に引っかかるようにしてあります。
編む時に一緒に添えた糸が裏で浮いてループを作っているということです。

 

…書いてみたものの説明が難しいですね。
とりあえず織物でも編み物でも、ループが出来上がるようにつくられるのがパイル編みの特徴です。

 

パイルを編むということ

パイル生地を作るのに織機や編み機を使用しますが、全ての作業を機械が行っているというわけではありません。気温や湿度の変化で加減が必要だったり、それぞれの職人技や人の力が必要不可欠だったりします。

 

というのも、よこ糸とたて糸の強度・伸度を出すためには高温多湿にする必要があるんだそう。

 

吊り編みスウェットを製造しているメーカーさんから聞いたことがあるのですが、

パイルを均一にだすための条件は温度24度、湿度65%だそうで、職人の経験や勘も必要だそうです。

 

工場内の温度や湿度は一定に保たれていますが、それでも糸に含まれる水分量の違いなどで若干の誤差が出てしまうんだとか。

服の生地とはとてもデリケートなんですね。

 

 

タオルの生地の種類についても説明しよう

『パイル生地はタオルの生地』と書きましたが、タオルにも色んな生地があって、すべてがパイルというわけではありません。

 

ハンドタオルやバスタオル、ブランケットのようなタオルなどさまざまな形状・大きさのタオルがありますが、生地にもいくつか種類があります。

 

実は生地が異なると肌触りや吸水性なども全く違ってきます。
ここでは具体的に、いくつかのタオル生地について種類と特徴をご紹介しましょう。

 

 

シャーリング地

シャーリング生地は、カットパイルと同じでパイル生地のループの部分をカットしたものです。

 

表面を刈って平らに加工したシャーリング生地は目のつまった艶のあるビロード生地のように平らになり、多彩なデザインをプリントできます。

シャーリング生地はタオルにプリントができる

 

カットするのは表面のみで、裏面はパイル生地そのままです。

 

シャーリング生地の表と裏


ただし毛先がない分だけ、ループパイルより吸水性は劣ります。

 

ワッフル織地

ワッフル織地のタオル

ワッフルという名称の通り、表面に凹凸のある「ワッフル織地」。


立体的で厚みがある点が大きな特徴です。

さらにうれしいのが、濡れた後に乾きやすいということ。
洗濯した際はもちろん、スポーツ中にも濡れによる肌触りの悪さをあまり感じず、快適に使うことができるでしょう。

 

ワッフル生地はタオルに使われる生地ですが、パイルではありません。

 

ガーゼ地

ガーゼ生地のタオル

肌触りが良く、軽量性が魅力的なガーゼ地。

糸と糸の間に空間があって目が粗く、しかも薄いので透け感があるのが特徴の一つ。

糸をたてよこ交互に重ね組みしており、織り方としてはとても簡単です。

 

ガーゼ生地もタオルに使われますが、パイルではありません。

 

柔らかい肌触りも特徴で、肌に対する刺激が少ないことから赤ちゃん用品や怪我の手当てなど医療にも使われます。

 

我が家にはまだ0歳の赤ちゃんがいるので、

よだれを拭いたり、からだを洗ってあげたりするときに、何かとこのガーゼ生地が大活躍しています。

 

 

ただしガーゼ地は、パイルと比べると吸水力は劣ります。

その分乾きも早くて何かと便利なんですけどね。

 

 

パイル生地のおすすめアイテム

家の中をよく見てみると、パイルのアイテムがたくさんありました。

パイルが好きなんでしょうね。

 

実際に使っているもので、おすすめななものを紹介しようと思います。

 

我が家のタオル

タオルは、毛足が長くてふかふかのものの方が肌触りが良いのでついつい買いがちです。でもそういうのは洗濯物を干すときとかひっかかりやすかったりします。

洗濯バサミに引っかかってほつれてしまったり。。。

日常的に使うボディタオルなんかは、毛足が短い方ものが結局使いやすかったりします。

 

我が家では毛足が短いタオルはAmazonで購入したもの、毛足の長めのものは『エアーかおる』を気に入って使ってます。

 

パイルの靴下がおすすめです

何度か書いた内容なんですが、足の裏によく汗をかく人は絶対パイルの靴下があってます。

 

春夏の汗をかきやすい季節は、素材を工夫してリネン混のものなど、夏らしいものを選べば一日中快適にすごせます。

この和紙素材のパイルソックスが好きです。

www.fukujipaisen.com

 

 

冬場はこっちがおすすめです。

www.fukujipaisen.com

 

 

 

 

その他にも洋服の生地や素材、縫製について解説しているのでよかったら合わせて読んでみてください。
▶︎『生地・素材・縫製』について

 

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