こんにちは。 洋服の生地についてのブログを書いています、服地パイセンです。
『高級なシャツの生地は番手が良い』とよく言われます。ファッションに詳しい人は意味がわかると思いますが、どういうことでしょうか。
糸は細ければ細いほど光沢があり、きれいな印象になります。逆に太ければ太いほど粗野感があり、カジュアルな雰囲気がでます。
『糸の番手が良い』という表現は、文字通り良い糸を使っているということなんですが、簡単に言うと糸の中でもすごく細い番手の糸を使っているということです。
そんな糸の太さ『番手』について解説します。
糸の番手とは?糸の太さと生地の関係
生地に使われる糸の太さは『番手』と呼ばれる単位で表されます。
番手とは糸の太さを表す単位です。
1番手、10番手、20番手、30番手、…100番手〜といった具合に数字で表され、もっとも太い糸が「1番手」で、数字が大きくなればなるほど糸は細くなります。
例えば腕まくりの記事で着ていたカジュアルなデニムシャツの生地。
古着なので正確な番手はわかりませんが、デニムなどカジュアルな生地は10〜20番手の糸で織られていることが多く、これもおそらく太番手でしょう。
拡大してみると糸は太めで表面がゴツゴツしているのがわかります。
低番手は太い糸なので生地が厚くて透けにくい、丈夫でしわになりにくいといった特徴があります。
対してドレスシャツには中番手以上の糸がつかわれます。
今度はきれい目な印象のブロード生地をみてみます。
ブロードなので光沢のある生地感でおそらく60番手以上だと思います。
この生地を拡大してみると
細い糸が緻密に織られているのがわかります。
とても細かいので光を反射し光沢感があり、きれいな印象を与えます。
これくらいの番手なら高級というわけではないと思いますが、高番手になればなるほど着心地が柔らかくしわになりやすい。
そして綿そのものの品質がとても重要になります。綿花の中でも希少な超長綿を使用するため、そのぶん高価になっていきます。
糸の太さ(番手)による分類
シャツの生地を2つ例に挙げましたが、糸はその太さによって大きく分けると、
太番手・中番手・細番手の3つに分類されます。
太番手
太番手とは、短い繊維から作られた太めの糸のことです。
綿糸であれば、〜20番手以下が太番手として扱われます。
生地に使うと肉厚でしっかりとした生地感を楽しむことができます。
中番手
中番手は、太番手と細番手の中間で「標準番手」とも呼ばれます。
綿糸であれば、30〜50番手が中番手です。
3つの中でも一番使用される機会の多い番手かもしれません。
肌ざわりや質感もちょうど中間なので、万人受けする糸だと思います。
細番手
細番手とは、長い繊維から作られた細めの糸のことです。綿糸であれば60番手以上〜が細番手として扱われます。
繊維が細く長いので肌ざわりがよく、高級なシャツなどにも使われます。
なかでも100番手以上は極細番手として扱われ、1番高価です。
実は番手にも種類がある
番手はコットンやリネン、ウールなどの短繊維に使用される単位です。
紡績した糸の太さを表わす単位で、ある一定の重量に対して長さがどれくらいあるかを表わします。
そして実は、綿番手だけでなく、毛番手や麻番手というものがあります。
なぜか『番手』と聞くと、綿のシャツ生地をイメージしてしまいますが、それだけコットンが身近な存在だということでしょう。
番手は素材によって、定義が異なるので注意が必要です。
コットンは綿番手
もっとも身近な綿番手から。
綿番手では1ポンド(約450g)の重さで840ヤード(約760m)の長さのものを1番手としています。
それを基準に、1ポンドの重さで1680ヤードの長さのものが2番手になります。
つまり2番手の糸は、1番手の糸よりも軽い(細い)糸ということになります。
リネンは麻番手
麻には麻の番手があります。
麻番手は1ポンドの重さで300ヤード(約270m)の長さを1番手としています。
つまり1ポンドの重さで600ヤードの長さになるものが2番手になります。
ウールは毛番手
毛番手では1gで1mの長さのものを1番手としています。
コットンとリネンは1ポンドを基準にしてましたが、ウールの場合は1g当たりが基準になります。
基準が変わるのでややこしいですし、ポンドやヤードは馴染みがないので、それがよけいに難しく感じさせます。
番手は数字が大きくなるほど細く軽くなるので、それだけでも覚えてると役立つかもしれません。
そして素材によって紡績方法が異なり、それにあわせて番手表示も異なります。
ちなみに、ウールが入っていても綿の紡績機で紡いだのなら綿番手、
コットンが入っていてもウールの紡績機で紡いだのなら毛番手、
ということになります。
太さの種類は『番手』以外にもある
ストッキングやナイロンバッグの生地など『デニール』という単位を目にします。
番手以外にも同じく糸の太さを表す単位として、『デニール』や『テックス』と呼ばれる単位があって、これはフィラメント系の繊維につかわれます。
番手の場合は数字が大きければ大きいほど糸は細くなるのですが、デニールやテックスは数字が大きいほど太くなるので、これも少しややこしいです。
デニール
デニールは繊維や糸の太さの目安を表わす単位です。
例えばタイツ。
30デニールのタイツは薄く、100デニールのタイツは分厚いです。
そう、番手の逆ですね。
そもそもデニールというのは、
9000mで重量が1g のものを1デニールと表します。
つまり30デニールのタイツの糸場合は、9000mの時に、30gであることになります。
テックス
テックスもデニールと同様に、繊維や糸の太さを表す単位です。
デニールの場合は、9000mの時の重量ですが、テックスは長さが1,000mの時の重量で表します。
1テックスの繊維の場合は、1000mの時に1gになり、数字が大きければ大きいほど、太く重い糸になります。
最後に『糸の番手の読み方』について
洋服のデザイナーと生地屋さんとのやり取りを聞いていると、
『サンマルタンテンジク』など
くだけた読み方というか専門的な言い方をしています。
『例えば、1番手、2番手などは「イチバン」「ニバン」とそのままで、
10番手は「トオバン」と呼ばれます。
20番手、30番手になると「ニーマル」「サンマル」と呼ばれます
実際に生地の話になった時は、これに
編み方の形状や撚糸についても含まれます。
たとえば、
30 /- 天竺は「サンマルタン テンジク」
『30』は糸の番手で
『/-』の部分は糸1本で編んだという意味です。
『天竺』は編み方です。
これが2本の糸を撚って編んだ双糸の場合は、
30/2天竺 「ニマルソウ テンジク」
となります。
僕はデザインや企画はできないのでなんとなくしかわかりませんし、頭の中で理解するのに少し時間を要してしまいます。
でも、工場ではこんな感じで専門用語が飛び交っているんでしょうね。
糸の番手は使われる繊維の長さに影響されます。
繊維の長さについて書いた記事もあるので、よかったらあわせて読んでみてください。
そして撚り合わせる糸の本数も関係してきます。
こちらもよかったら読んでみてください。
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