服地パイセン

生地にうるさい服屋で学んだことを活かし、洋服のわかりづらいことをわかりやすく解説します。

ポリエステルはリサイクルできるようになったが、アパレルの素材として今後どうなるのだろうか?

環境問題とポリエステル

 

こんにちは。
服の生地についてのブログを書いています、服地パイセンです。

 

 

循環型経済やサステナブルといったワードを頻繁に聞くようになりました。
もう耳にしない日はないのではないでしょうか。

 

環境への配慮だったり、正しい倫理観だったり、人々の価値観やさまざまな産業の分野に影響を与えています。

 

もちろんアパレル業界にもかなりの影響があります。

 

このひとつの大きな流れは、人々のポリエステルに対する考え方を変えるのではないか?と思っています。

 

『ポリエステルの印象が良くなる』
もしくは、
『ポリエステルが淘汰されてしまう』
のか。

 

どうなるんでしょうか。
ポリエステルを取り巻く環境について、まとめました。

 

 

 

 

 

 

なぜポリエステルの服に良いイメージがないのか?

ポリエステルの生地

ポリエステルの服といえば、あまりいいイメージがありません。

良いイメージがないというのは変な言い方かも知れません。
「良い服に使われているイメージがない」といった方が正しいでしょうか。

 

その理由を挙げていきます。

 

ポリエステルの服は安っぽい

ヨーロッパの羊毛だったり繊維の長い高級な綿といった天然素材は、いわゆる『良い服』には欠かせないものです。

 

それらには天然繊維ならではのあたたかみや風合いがあります。

 

一方、ポリエステルは石油が原料です。

化学の力で人為的につくったものなので『均一で人工的な素材感』になり、そのままだと風合いはありませんし、経年変化も味わいのあるものではありません。

 

最近では、風合いや表情を出すために、加工を施して起毛感を出したポリエステルの生地や、人工スウェードなど、天然繊維のような風合いの生地も増えてきました。

ですが、風合いでは天然の素材に敵いません。

 

ちなみに人工スウェードは、極細のポリエステルの生地に特殊なポリウレタンを含ませ、本革調の風合いの出る層を作りその表面を起毛させる、という方法でつくられます。

 

ポリエステルは石油が原料の化学繊維である

石油化学工場の風景

服の生地は繊維が自然界に存在するか、しないかで天然繊維と化学繊維に分けられます。

 

コットンやシルク、ウールなどは天然繊維、ポリエステルは化学繊維、ということはほとんどの人が知ってます。

 

しかしもう一歩踏み込んで考えてみると、
「自然界にポリエステル繊維という素材は存在しませんが、原料の石油は天然資源だからポリエステルも自然の素材ではないのか?」
と、疑問をもったことはありせんか?

 

たしかに石油は天然の資源ですが、定義としては、化学的に分子を組み替えて合成してつくった繊維は、化学繊維(合成繊維)と呼ぶことになっています。

 

綿やウールは、自然界にそのまま存在するもの。化学的に合成してつくったものじゃなく、ただ「加工」しただけです。

なので天然繊維といえます。

 

マイクロプラスチックによる海洋汚染

海を汚染し、海洋生物に影響を及ぼすマイクロプラスチックは世界的に大きな問題です。


これらはどのように発生しているのか?
その答えの一つが、合成繊維で作られた服の洗濯です。

 

海や川へのポイ捨てだけでなく、日常的に行う洗濯も問題なのです。

 

1回の洗濯で何万というマイクロファイバーが放出している可能性があり、海に流れ着いたマイクロプラスチック全体の30%を占めるという話もあります。

 

マイクロファイバーはポリエステルなどの化繊が洗濯時に流出し、河川や海、そして魚の胃の中など、あるべきでない場所に到達する5mm以下の極小繊維です。


新品の洋服は、最初の数回の洗濯でかなり多くの繊維が剥がれ、それ以降は毎回一定の量が放出されることがわかっているそうです。

 

何が問題って、ポリエステルは自然に分解されないので、ずっと残り続ける可能性もあります。
これまで海に流れ出たプラスチックはすべて、今現在も存在しているということになります。

 

ちなみに、マイクロファイバーが抜けにくい製造方法なんかもあるようです。
(僕もまだよくわかっていません。)

 

何度もリサイクルする方法がなく、エコじゃなかった

フリースはペットボトルをリサイクルして作られるというのは有名な話です。

 

「では、そのフリースを更にリサイクルするには?」
と聞かれると、わりと最近まではリサイクルする方法がなかったそうです。
(今はあるようです。)

 

ポリエステルを服から服に作り替えるには、分子レベルまで分解して再構築するという方法をとります。

 

ところがこれまでは、不純物が混ざりやすいなどの理由で一度しかリサイクルできなかったそう。

それが、何度でも繊維をリサイクルできるようになったことが再利用の意識を上げる大きな要因だそうです。

 

UNIQLOの店舗など、服の回収ボックスがあります。

回収された服たちは、資源として再利用され、もう一度生まれ変わります。

着なくなった服も貴重な資源だと思うと、無駄にできないですね。


ナイロンのリサイクルについて書いた記事があり、基本的には同じだと思うので、よかったら読んでみてください。

www.fukujipaisen.com

 

なぜポリエステルはこんなに使われるのか。

世界中では、年間5000万トンの服が作られ、そのうち60%がポリエステル製だそう。

 

それくらいよく使われる素材なのですが、なぜこんなにも使われるのでしょうか。

 

材料の値段が安い

原料の石油

ポリエステルは、石油が原料です。
化学的に合成された原料から作られる合成繊維で、もっとも多く生産されています。


ポリエステル繊維は軽くて丈夫、シワになりにくく乾きやすいなど、とても扱いやすいこともあり、1950年代頃から一気に普及し始めました。


石油さえあれば大量に生産することができるため、原料から生地までコストを抑えて製造できるのが大きな強みです。

 

合成繊維は汎用性が高い

石油由来の素材はポリエステル、ポリウレタン、ナイロンなど、色々あります。

 

そして、石油は加工して糸にすると洋服になりますし、硬くするとペットボトルになります。

 

というように、石油は加工の仕方でさまざまなものに活用できる汎用性の高い資源。
材料の値段が安く、汎用性が高いことは、合成繊維がよく使われる要因のひとつです。

 

ポリエステルのリサイクルと今後はどうなるか

ポリエステルのリサイクル

ポリエステルのリサイクルは今後も継続されていくとは思います。

ただ、今はSDGsなどで環境への配慮やリサイクルへの関心が高まっていますが、僕はこの温度感がずーっと続くのか心配です。

 

今以上の熱量を今後ずっと世間が持ち続けるわけというわけではなく、株価のように盛り上がったり落ち着いたりを繰り返しながら、徐々に意識が高まっていくような感じなのかなぁと思っています。

 

環境への意識は長い目でみると確実に高くなっていくとは思うのですが、加熱しすぎのような気もします。

今の現状は一過性の「ECOブーム」となにが違うんだろう?

 

ブームの何が怖いって、一気に冷めてあるとき突然関心がなくなってしまうことです。

これまでを振り返っても、10数年周期で必ずECOブームが起きているような気が。。。

 

今の環境への意識の高さを持続させることは、すごく大事なことのように思います。

 

専門家ではない一端の人間の意見です。皆さんはどう思われますか?

 

最後に

ポリエステルは、冷感や蓄熱、形状記憶など加工で付与できる機能もすごく多いので、機能素材には欠かせない繊維です。特に今は機能素材ブームなのでなおさら欠かせません。

 

ポリエステルはこれからの脱石油の流れに飲まれて淘汰されてしまうのか。
それとも時代にフィットするように進化して乗り越えるのか。
少し極端ですが、2つの道が考えられるので、今後が楽しみです。

 

個人的にはポリステルの使用は賛成です。

ソロテックスという繊維について触れた記事で書いたのですが、ポリエステルへの印象は今後変わってくると思っています。

www.fukujipaisen.com

 

 

 

といっても、すごく良いものになるというよりは普通だったり当たり前になるような感じで。

 

世間のポリエステルに対する印象に等級をつけるとしたら、下等から上等になるというよりは、下等から中等になる、ワンランクアップくらいの感じです。

 

「植物由来で環境負荷軽減とはどいうことか?」という記事で書きましたが、ポリエステルの一部を植物由来のものでつくる繊維もあるので、よかったら読んでみてください。

www.fukujipaisen.com

 

化学繊維の作り方について書いた記事もあります。

www.fukujipaisen.com

 

 

 

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