服地パイセン

生地にうるさい服屋で学んだことを活かし、洋服のわかりづらいことをわかりやすく解説します。

【文系でもわかる】化学繊維の作り方

化学繊維の作り方

 

こんにちは。
服の生地についてのブログを書いています、服地パイセンです。

 

 

「天然繊維と化学繊維、どちらが好きか?」

聞かれることのない質問ですが、もし聞かれたら、天然繊維の方が好きと答える人の方が圧倒的に多いと思います。

 

自然な風合いがあるので、僕もコットンなどの天然繊維の方がすきです。

化学繊維とは生地の表情が違います。

 

コットンの糸は、綿花からワタをとって伸ばして撚って、糸にしているのはなんとなくでも想像できます。

では、化学繊維ってどうやって作ってるのでしょうか。

気になりませんか?

 

少し前に繊維の分類の記事で、

石油から取り出した成分を熱で溶かして、細〜い穴から押し出して冷やして繊維にしています。細い穴から押し出して作ってるってゆうのが、なんだかアナログで意外というかおもしろいです。

アパレルの生地や糸、繊維の種類や分類を知ると洋服選びが変わる - 服地パイセン

 

ということだけ書いたのですが、今回はそれを掘り下げてみます。

 

「化繊の作り方なんて知っても役に立たないんじゃないか?」

と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。

 

昨今よく取り上げられる環境問題。
なかでも「脱プラ」や「リサイクル」が注目されています。

 

そして繊維のリサイクルについて理解するには、化繊の作り方を知っていた方が理解が早いです。

どのようにして作られるのか知っていて損はありません。

 

ちなみに化学的で理系な内容なので難しそうに感じますが、僕は根っからの文系です。

難しい話は苦手です。

 

そんな僕のフィルターを通して文章にするからこそ、わかりやすくまとまるんじゃないかな、とも思ってます。

 

 

 

 

 

化学繊維は、どのように作られるのか?

石油由来の化学繊維

ナイロンやポリエステルなどの化学繊維は、
石油から取リ出した成分を原料にして、人が作り出したものです。

 

石油などを原料にして、合成して繊維にしたものを合成繊維と呼びます。

 

この合成繊維と再生繊維を合わせて化学繊維とよびます。

 

 

合成繊維と化学繊維の違いについて書いた記事で違いを解説しています。

www.fukujipaisen.com

 

 

洋服に使う化学繊維の作り方

化学繊維の作り方は大きく分けて3種類あります。

 

・溶融紡糸
・乾式紡糸
・湿式紡糸

 

化繊は熱くして溶かした原料を、シャワーヘッドのように穴の開いたノズルから噴出し、それを固めて繊維にしています。

 

そこまでは3種類とも共通していて、違うのは噴出したあとの液体を固化する方法です。

 

化学繊維の作り方

引用:紡糸|日本化学繊維協会(化繊協会)

 

ノズルには様々な形状の孔が開けられ、この孔の形状によって、さまざまな断面形状をもつ繊維を作ることができます。

 

同じ素材でも断面の形状によって風合いなどが変わります。そして繊維の表面の形状を変えるだけで、速乾性や吸水性などさまざまな機能性をあたえることができます。

 

形だけでなく、糸の太さも紡糸口金の穴のサイズを変えることにより極細から太いものまでさまざまな物を作ることができます。

 

化学繊維なので、単糸で構成される長繊維になります。

 

湿式紡糸(しっしきぼうし)

湿式紡糸とは、まず溶剤に原料を溶かし、

それをノズルから噴出させて、凝固浴と呼ばれる原液をかためるための溶液中に押し出し、溶液の中で固めて繊維にする紡糸法です。

 

湿式紡糸で作られる化学繊維

レーヨン
キュプラ
アクリル

 

乾式紡糸(かんしきぼうし)

乾式紡糸(かんしきぼうし)とは、溶剤に溶かした原料をノズルから噴出させて空気中に押し出し、熱風により溶剤を気化させ、繊維にする紡糸法。

 

紡糸速度はかなり速く、糸の断面は亜鈴形や,まゆ形になることが多い.

 

乾式紡糸で作られる化学繊維

アセテート
ビニロン

溶融紡糸 (ようゆうぼうし)

溶融紡糸とは、加熱して液体になった原料をノズルから押し出して繊維状にし、そのあと冷却固化します。

 

加熱すると溶けて液体になり、温度を下げると再び固体になるものはこの方法で繊維にします。

この性質を熱可塑性(ねつかそせい)といいます。

 

溶融紡糸でつくられる化学繊維

ポリエステル
ナイロン
ポリプロピレン

 

よく使われる化学繊維の製造方法

3つの種類がありますが、洋服に使われる化学繊維は無限にあるわけではなく、割と限られています。

 

よく使われる馴染みのあるものは、どのように作られるのでしょうか。

 

ポリステルの製造方法とは?

ポリエステルは溶融紡糸でつくられます。

ポリエステル繊維は石油を原料にして作られています。

 

「ポリ」は、たくさんという意味で、
たくさんのエステルが重合しているということを意味します。

 

石油の成分からキシレンという物質を取り出し、これに他の化学物質をくっつけ、さらにこれらの物質を何百万個とつなぎ合わせて原料であるポリエチレンテレフタレート(PET)という物質を作ります。

 

これは飲料容器のペットボトルと一緒です。

ペットボトルの原料とポリエステルの原料とは同じです。

 

ポリエステルは

エステル結合を分子内に有する高分子物質の総称のことで、とても多くの種類があります。


綿やウールなどの天然繊維を混ぜ合わせて、お互いの良いところを取り入れた混紡繊維を作ることもできます。

機能素材の中には、そのようにして作られるものもたくさんあります。

 

ナイロン繊維の製法とは?

ナイロンも溶融紡糸でつくられます。

 

ナイロン繊維にも種類があり、有名なものがナイロン6とナイロン66です。

 

作り方は同じなんですが、原料が違います。

ナイロン6はカプロラクタム、
ナイロン66はヘキサメチレンジアミンとアジピン酸を原料として用いています。

 

アクリル繊維の製法とは?

アクリル繊維は湿式紡糸でつくられます。

石油から作られたプロピレンアンモニアと酸素を合成して、アクリロニトリルというアクリル繊維の原料をつくります。


このアクリロニトリルからポリアクリロニトリルを作り、それを溶媒で溶かして液体にします。

 

そしてノズルの細い孔から、凝固液の中に繊維状に押し出します。

すると化学反応で、ポリアクリロニトリルが液体の中で再生し、アクリル繊維になるんです。

 

レーヨンの製法とは?

レーヨンも湿式紡糸でつくられます。

レーヨンは石油ではなく、天然の原料から作られる化学繊維です。

 

植物の主成分であるセルロースという物質を取り出し、これを薬品で溶かして細い孔から押し出して、繊維に再生します。

 

レーヨンが再生繊維と呼ばれるのは、成分を取り出して繊維に再生させているからです。

 

最後に

石油から化学繊維を作る工場

化学繊維のほとんどはプラスチックの一種です。

 

『脱プラ』といった社会の流れがあるので、化繊は今後使われなくなるんじゃないか?

と思われてしまいそうですが、それはありません。

 

衣類だけでなく、家の中、農業、漁業など、さまざまな分野で活用されている石油製品。

周りを見渡せば、身の回りのものほとんどがプラスチックです。

リビングのテレビ、家の断熱材、仕事で使うペンや消しゴム…。

数え上げればキリがないほどプラスチックに囲まれて生活していて、プラスチックのない家庭は考えられません。

 

製造方法や再利用の方法が見直されはしますが、化繊がなくなることはありません。

むしろ環境への負荷が軽減された化繊の使用が増えると思います。

 

僕達にできることは、

Reduce(節約)
Reuse(再利用)
Recycle(回収)

の3Rといわれています。

 

化繊の作り方を知ることで、
このReuse(再利用)の理解に少しでも役立ったら嬉しく思います。

 

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