こんにちは。 服の生地についてのブログを書いています、服地パイセンです。
「環境負荷の少ない繊維」が今後の服作りの前提になっています。
その中でも「環境負荷の少ない化学繊維」の「化学繊維」の部分について解説してみます。
化学繊維はたくさんあり、その中でもアパレルでよく使われている合成繊維の特徴を簡単に理解できるようにしました。
これからしばらくアパレルは【機能素材の時代】なので、知っておいて損はないはずです。
この記事の目的
合成繊維については服のプロである販売員であってもほとんどの人が
「なんとなく知っている」
くらいだと思います。
それはなぜか。
繊維について体系的に理解する機会がないから
だと思います。
この記事を読んでくれた人に、最小限の時間で
「基本的なことをある程度理解している」
状態までレベルアップできる内容を目指して書きます。
とはいうものの、繊維は種類が多すぎるため、今後のアパレルで重要になってくる「合成繊維」にフォーカスして書いていきます。
繊維の種類を理解しよう
数多く存在する繊維ですが、全体像をざっくり表すとこんな感じです。
本当はもう少しありますが、これだけわかっていれば、とりあえず十分です。
例えば、「ポリエステル」などを調べると、「ポリアミド」とか「ステーブルファイバー」などの難しい単語がよく出てきて意味がわからなくなります。
とりあえず今回はそういう難しい単語や細かいことは置いといて、まずはざっくり理解しましょう。
繊維は天然繊維繊と化学繊維に分けられ、ここ数十年は科学繊維、特に合成繊維がすごいスピードで発展しています。
前回書いたソロテックスも合成繊維に分類されます。
化繊と合繊の違い
化学繊維は「化繊」、合成繊維は「合繊」と略して呼ばれることが多いです。
そして、化学繊維と合成繊維は同じものと思っている人は案外多いのですが、それは間違いです。
科学繊維と合成繊維は同じものではありません。
このことはバイヤーや商品企画の担当でも意外と知らなかったりします。
化学繊維
再生繊維と合成繊維を合わせて化学繊維といいます。
階層をわかりやすくするために、今回説明する合成繊維のところの色を変えてみました。
合成繊維とは分類の階層が異なるんです。
化学繊維は合成繊維の1段階上の階層になります。
合成繊維とは
合成繊維は基本的に何かしらの天然繊維に似せて人工的に作られた繊維です。
植物や動物からとれる繊維ではなく、主に石油を原料にして合成した化学繊維です。
石油からできているというのがポイントで、今後の社会を考える上でとても重要な点です。
ちなみに日本は世界有数の石油化学工業国です。東レ、帝人、旭化成、クラレ、三菱ケミカル、ユニチカなど、繊維業界で大きなシェアを誇る企業がたくさんあります。
生地はブランド名で覚えていることが多いので、あまり馴染みがないかもしれませんが、深掘りしてみるとどこの会社が製造しているのかすぐ調べれます。
ここからはポリエステル、ナイロン、ポリウレタンの特徴的などをまとめていきます。
三大合繊は「ポリエステル」「ナイロン」「アクリル」ですが、最近はアクリルより「ポリウレタン」の方がよく使われている気がするので、アクリルよりもポリウレタンを解説することにします。
ポリエステルとは
ポリエステルはもともとはコットンに似せて製造された合成繊維で、コシがあるのが特徴。
衣料分野でのポリエステルの使用量は、化学繊維の中では圧倒的に多いです。
ポリエステルのメリット
強くて扱いやすい
伸び縮みが少なく、強く丈夫な繊維で型崩れしにくい。さらに乾きが早く、シワにもなりにくいので扱いやすい繊維です。
ノンアイロンシャツなどはこの性質を利用しているものが多いです。
コストパフォーマンスが高い
ポリエステルは安いというイメージがありますが、その通りで繊維の中では安価です。
ただ、安いからといって品質が低いわけではありません。ソロテックスの記事でも書きましたが、これからどんどん発展していくことでしょう。
化学繊維の中では耐熱性がある方
化学繊維は熱に弱いのですが、ある程度アイロンの熱に耐え、シワも伸びやすい傾向があります。
とはいっても天然繊維と比較すると高温に弱いので、アイロンをする際は洗濯表示を確認してください。
ポリエステルのデメリット
ポリエステルは吸湿性が低いこともあり静電気が発生しやすく、他の生地とくらべると肌へのダメージが大きいと言われています。
最近はポリエステル100%の速乾Tシャツもよくみかけるので、もしかしたらこのデメリットは解消されているのかもしれませんね。
ナイロンとは
化学繊維の中でも長い歴史を持っていて、アメリカで工業化された世界初の合成繊維がナイロンです。
成分上は、絹にもっとも近い合成繊維だそうで、ストッキングのようなしなやかなものから、ガシッとしたカバンまで幅広く使われます。
ナイロンのメリット
摩擦強度は最強
強度は綿のおよそ10倍と言われています。ポリエステルも強いと書きましたが、摩擦強度はナイロンの方が強いです。
そのためアウトドア用品なんかに多用されています。
とにかく軽い
天然繊維の75%程の重さで、合成繊維の中でも特に軽い。
そして、軽さと強度は相性がいいのです。例えばバリスティックナイロンのように丈夫な生地にできるのは、軽いという特性があるからこそです。いくら丈夫であっても重すぎると持ち運びに向きません。
バッグにナイロンがよく使われるのは、その2つの特性をあわせ持つおかげです。
ナイロンのデメリット
熱に弱い
なので乾燥機やアイロンなどの高温には注意しなければなりません。
熱に弱いこともあり、日光で黄ばみや色褪せが起きやすいです。
静電気が発生しやすい
ナイロンは帯電しやすく、静電気が起きやすいという特徴があります。
吸湿性も低いので、インナーには向きません。
ポリウレタンとは
伸縮自在の合成繊維で、別名スパンデックスとも呼ばれる伸びる繊維です。
天然ゴムの代替品として開発された素材。特にゴムの特徴である弾性や柔軟性があるのが特徴。
ポリウレタン繊維・素材はドイツで1940年に開発された天然のゴムの5倍〜10倍の伸縮性のある繊維です。
ポリウレタン繊維は単独で使われることはほとんどなく、コットンやポリエステルなど他の繊維と混紡して使われることが多いです。
衣類にポリウレタンを2%〜3%と少し混紡するだけで、身体にフィットするような伸縮性を持たせることができるので、スキニーパンツによく使われています。
合成皮革もポリウレタンですね。
ちなみに天然・合成ゴムは、繊維ではないので品質表示をしません。
ポリウレタンのメリット
よく伸びる
500%以上も伸びるただ一つの弾性繊維で、伸縮性が大きく強くて丈夫。
ゴムより伸縮し、劣化しにくい。そしてゴムよりも細い糸ができ、糸も軽いという、ゴムの弱点を克服したような素材です。
ポリウレタンのデメリット
劣化が早い。合成皮革は摩擦に弱く、表面がはがれたり風合いが変化しやすい。
紫外線に影響を受けて黄変してしまうことがある、など、寿命が長くないのが欠点といえます。
まとめ
合成繊維に共通していえることは
天然繊維に比べて強度が高いこと、
天然繊維に比べて耐熱性が低いこと、
それとあわせて、
「ポリエステルは安くて丈夫で扱いやすい」
「ナイロンは一番タフで軽い」
「ポリウレタンは伸縮性がある」
といったところでしょうか。
共通点の多いポリエステルとナイロンの2つの繊維。
似た性質を持つもの同士ですが、ポリエステルのほうが生産量が多い理由は、ナイロンのほうが原価が高いためです。
そのためポリエステルの方が多く流通しているんですね。
すこし前のものですが、コーデュラナイロンについて書いた記事もあるので、
是非読んでみてください。
感想などをコメントいただけるのが、何よりとても嬉しいです。
はじめましての方も、思ったことはお気軽にお書きください。
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