服地パイセン

生地にうるさい服屋で学んだことを活かし、洋服のわかりづらいことをわかりやすく解説します。

【実験】生分解性プラスチックを作ってみた

生分解性プラスチックを作ってみた

こんにちは。
服の生地についてのブログを書いています、服地パイセンです。

 

「なぜだろう?」

世の中にはそう思うことがたくさんありますし、理解できないようなことで溢れています。

 

ずっと疑問に思っていて、検証してみたいと思っていたことがあります。

サステナブルとか環境への負担が少ないということで注目されている自然に還る素材、生分解性プラスチックって本当に分解されるのか?』ということ。

 

そこに存在したものが分解されて消滅する。頭ではわかっていてもイマイチ理解できないもんです。

やってみたら何かわかるかなと思って、自分で生分解性プラスチックを作って観察してみました。

 

 

 

 

 

アパレル業界が抱える環境問題

環境省のサステナブルついての資料

引用:環境省_サステナブルファッション

ファッション産業は、製造にかかるエネルギー使用量やライフサイクルの短さなどから環境負荷が非常に大きい産業と指摘されており、国際的な課題となっています。

そして、衣服の生産から着用、廃棄に至るまで環境負荷を考慮したサステナブル(持続可能)なファッションへの取り組みは、近年急速に拡がっています。

 

引用:環境省_サステナブルファッション

 

アパレル業界が環境に与える負荷はかなり大きいようで、環境問題の代表的なものを挙げると、


(1)資源やエネルギーの大量消費
(2)水質の汚染と有害物質
(3)大量の水と農薬を使う綿花栽培
(4)マイクロファイバーによる海洋汚染

などがあります。

 

(1)〜(3)は製造工程で問題視されるもの。

例えば染料については環境の負荷が問題視されて使用が制限されている染料もかなりあります。取り上げられることもなく、気づかないうちに市場から消えてしまう生地や染色方法も出てくると思います。

 

 

(4)だけは生活に直接関わる部分なので、服から生じるマイクロファイバーやマイクロプラスチックが与える影響を理解する必要があります。

 

アパレル製品ではポリエステルをはじめ、プラスチック系の繊維がよく使われます。

安価で、耐久性が高くシワになりにくいなど多くのメリットがあります。

その反面、マイクロプラスチックが環境破壊に繋がってしまうというデメリットもあるんです。

 

 

マイクロプラスチックとは?

マイクロプラスチックはプラスチックが5ミリ以下に小さく粉砕されたものを指します。

アパレルの場合は洗濯の際に抜け落ちたマイクロファイバーなんかがこれにあたります。

 

自然分解されず半永久的にゴミとして残ってしまうので、マイクロプラスチックによる環境破壊が問題視されています。

 

 

海の生態系の破壊

どのように影響を与えるかと言うと、プラスチックが海の生態系を壊してしまうというのがわかりやすいです。

 

海中にあるマイクロプラスチックが胃の中に入り込み、消化しきれずに体内に残留。消化器官がいっぱいになり、空腹を感じることができずに餓死してしまうという悲惨なものです。

 

海に流れ込んでも分解されないことが問題になっています。

 

生分解性プラスチックとはなにか

『使用するときには従来のプラスチックですが、使用後は自然界でバラバラに分解され、最終的には自然に還る物質』

として生分解性プラスチックがあります。

 

どのようなものか、

『生分解性』と『プラスチック』に分けて考えてみます。

 

プラスチックとは?

最近、プラスチックをはじめとする高分子化合物について勉強してました。高分子化合物とは、『化学的に合成された分子量のとても大きい物質』のことです。

 

そしてプラスチックの説明としては、
合成樹脂の一種で、モノマーを重合してできたポリマーに添加剤を加えた高分子化合物』です。

 

簡単に言うと、
プラスチックの定義はかなり幅広いということ。

 

 

『プラスチック』と聞いて僕がまっ先に思いつくのは、子供の頃によく作っていたガンダムのプラモデル。固いパーツを組み合わせて立体的なガンダムを組み立てていく玩具です。
軽くて、固くて、カラフルに着色できて。

 

そんなイメージでした。

他にもペットボトルやフリースがプラスチックの一種だというのは有名な話ですが、原料は石油。

そしてこの石油は、生物由来のタンパク質でも代替できるようです。

決して石油から作らなくてもプラスチックに定義されるそうです。

 

 

生分解性とは?

生分解とはバクテリアや菌類などの微生物によって、化合物が水や二酸化炭素といった無機物まで分解されること。

微生物の消費活動によって物質が分解され、自然に還ることをいいます。

 

土に還る素材、とかよく言われますが、こういうことです。

 

 

生分解性プラスチックを作ってみた

一般的なプラスチックは石油からできている固い物質ですが、原料は石油じゃなくても作ることができます。

 

石油ではなく生物由来のタンパク質で作ることで、自然に還るプラスチックになる。

 

調べていると「カゼイン」というタンパク質が多く含まれている液体、牛乳からプラスチックを作る方法を見つけました。

 

牛乳に含まれるタンパク質は、水分の中でバラバラになっています。それを加熱して酢を加えることでタンパク質が集まって塊になります。

こうして「カゼインプラスチック」ができるのです。

 

【用意するもの】

・牛乳
お酢
・耐熱容器
・コップ
・クッキングペーパー
・ガーゼ

 

ほとんど家にあるものだけででき、耐熱容器とガーゼだけ100均で買い足しました。

 

1 牛乳のたんぱく質を重合させる

牛乳から生分解性プラスチックを作る

沸騰させた牛乳をかき混ぜながら、温かいうちに酢を少しずつ加えます。

すると徐々にかたまりが見えてきます。

沸騰した牛乳に酢を混ぜてカゼインプラスチックをつくる

冷えた牛乳に酢を入れても、牛乳は固まりません。

 

2 牛乳をこす

牛乳からカゼインプラスチックを作る

空のコップの上にガーゼを敷き、
1の牛乳から塊をこし取ります。

 

すると、ガーゼの上には固形物だけが残ります。

ガーゼの下にはもともと牛乳とは思えない、ろ過された薄い液体がコップにはいっていました。

 

固形物は熱いのでガーゼのまま水で洗います。


3 水気を取る

生分解性プラスチックの水分をとる

ガーゼから取り出した固形物の水気を取ります。

クッキングペーパーの上で転がしてやるとスムーズに水気を取れました。


4 プラスチックを固める

完成したばかりの生分解性プラスチック

3のかたまりを、固まるまで更にレンジで何度か加熱します。

レンジでくり返し温め、固さを確認していきます。

 

含まれている水分が熱により脱水されて「重合」が起き、残されたカゼインどうしが強く結びつき固くなっていきます。

 

出来上がったものはプラスチックというより、固めのミルキーのようなものでした。

(もう少しこの工程を繰り返した方がよかったのかも?)

 

これから生分解性プラスチックの分解を観察していきます

牛乳からプラスチックを作ってみました。

 

牛乳から作ったカゼインプラスチックは
生分解性プラスチック」として微生物に分解されるはずです。

カゼインプラスチックがどれくらいの日数で分解されるか観察してみようと思います。

 

このカゼインプラスチックを作ったのが9月5日。

 

そこから約1週間が経ち、こんな状態です。

生分解性プラスチックの分解を観察して一週間

完成したときより形が崩れてるようにも見えますが、分解が進んでそうなっているのか、単純に水分が抜けてそうなってるのか。。。

もしかしたら空気中のバクテリアだけでは不十分で、土に埋めないといけないのかもしれないんですけど、もう少し様子をみていこうと思います。

 

また経過を報告します。

 

 

 

環境について書いた記事もあるので、読んでみてください。

www.fukujipaisen.com

 

 

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