服地パイセン

素材•生地にうるさい服屋で学んだ、服の生地や環境のことについて語ります。

ホールガーメントは発想が面白い!ファッション界の3Dプリンターとなるのか?

ホールガーメント何がすごいの

こんにちは。
服の生地についてのブログを書いています、服地パイセンです。

 

服の作り方について考えたことってありますか?

僕はパターンをひくことはできないのですが、10代の頃にいろんな服の縫製をほどいて解体してみたり、型紙を使って服を作って遊んでいました。

 

そのときに知ったことは、服は前身頃•後ろ身頃•袖•襟など、思っているよりパーツが多く、そして形が複雑だということ。

そしてそれらは身体のかたちにフィットするように縫い合わせて作られているということ。

 

人間は腕を上げたり肘を曲げたりするし、服は立体的な体に合わせて縫っているので、そりゃもう複雑でたくさんの箇所を縫わなければなりません。

 

服の製造方法はそんな複雑なものが多い

中で、最近は縫い目のない無縫製の製造方法で作られた服を目にする機会が増えてきました。シームレスと言うとわかりやすいのかもしれません。

 

今回はシームレスと言っていいのかわかりませんが、縫い目のない製造方法の中でも、ホールガーメントという編成について書いてみます。

ホールガーメントって聞いたことあるけど何がそんなにすごいのか、最近まで知りませんでした。

 

 

 

 

 

シームレスの流れ。無縫製とは

シームレス、つまり縫い目のない仕様が流行っています。流行っているという表現はおかしいかもしれませんが、増えてきています。

これからはシームレスの時代なのかもしれないと日々感じています。

 

例えばデサントの『水沢ダウン』シリーズ。
2010年のバンクーバー冬季オリンピックの日本代表選手団オフィシャルスポーツウェアとして採用されたことを皮切りに大人気になりました。

 

ダウンジャケットは縫い目から水が侵入してしまうことで、中の羽毛のボリュームが減り、本来の保温性を発揮できないという弱点があります。

そんなダウンジャケットの弱点に対して、縫い目をなくすことで弱点を克服し、話題になりました。


ほかにも注目されているシームレスがあります。

 

ユニクロが『3Dニット』として発売しているニット。

3Dニット

引用:UNIQLO

これはいわゆる「ホールガーメント」
という製法でつくられたニットです。
このホールガーメントのニットも年々増えてきているように感じます。

 

そんなホールガーメントについてまとめてみます。

 

ホールガーメントを簡単にいうと

ホールガーメントとは、1回の編み上げで縫い目のないニット製品を作りあげる技術です。

 

「アパレルと世界の産業革命」という記事で
「縫製を必要としない、全て機械で作られる服もある」と書きましたが、
その全て機械で作られる服がこのホールガーメントです。

 

なんとなくホールガーメントについてざっくり知りたい、
という方はこの理解で大丈夫だと思います。 


ここから先は、ウンチクの内容になりますが、ホールガーメントが誕生する過程かすごくおもしろいので、最後まで読んでいただけるとありがたいです。

 

ホールガーメントについて詳しく解説

そもそもホールガーメントはどんな技術でしょうか。


ホールガーメントはニット生地に使われる技術で、パーツを縫い合わせることなくニット製品が完成します。

 

どういうことかと言うとニットも他の服と同様に、身頃や袖など別々のパーツを編んだ後、それらを縫い合わせることで完成します。

 

ところが島精機製作所が開発した特殊な編み機「ホールガーメント機」を使えば、編み機から直接立体的に完成された状態に編み上げられます。

裁断も縫い合わせもしない、一着まるごと編み上げる製法です。

 

「それぞれのパーツを縫い合わせる」という服の本来の作り方を大きく変えたアプローチです。

 

縫い目がないのでごわつきが無く、着心地が良いことが特徴で、世界の高級ブランドでも使われています。

 

ホールガーメント編機に入力したデータ通りに自動的に編み上がっていく様子は、まさに衣類の3Dプリンターです。

 

文字で読むとなんとも面白そうで、その技術の何がすごいのかって話なんですが、これから紹介する3つのメリットが挙げられます。

 

 

ホールガーメントのメリット

ホールガーメントを取り入れるメリットはこんなところです。

 

ホールガーメントのメリット

①肌触りが良い
②編み地のカットロスがなくなる
③人件費が抑えられる

 

ひとつずつ解説していきます。

 

肌触りが良い

「着心地をよくする」というのは、服の永遠の課題です。

着心地よりも見た目を重視する時代もあるのですが、長期的に見ると着心地を良くする方法は改良を重ね続けられています。

 

服の着心地を悪くする一つの要因、それは「縫い目」の存在です。

生地と生地を糸で縫い合わせると固い凹凸ができ、そこが肌にあたると着心地の悪さを感じます。

 

ホールガーメントで網立てられた服は

縫い目やゴム糸がないので、縫い目やゴムによる痒み、ゴロつきがありません。

 

ニット本来の手触りとふわっとした着心地の良さを引き立て、ドレープ性を高めるといったメリットがあります。

 

縫い目の肌触りを良くする縫製という内容で、「フラットシーマ」について書いた記事もあるので、あわせて読んでみてください。

www.fukujipaisen.com

 

編み地のカットロスがなくなる

ホールガーメント機で編成すると裁断・縫製の工程がいりません。

 

そのため、製造においての問題がいくつか解消されます。

 

ホールガーメントの特徴として、カットロスを大幅に減らすことができます

従来の製造方法では20〜30%程度のカットロスがあるといわれていますが、ホールガーメントではそれがありません。

 

さらに、パーツを縫い合わせる必要がないということはロスが出る縫い代も発生しません。
縫い代だけで服1着につきA4サイズ程度のロスが出るといわれているので、あわせるとかなりの無駄がなくなります。

 

一般的なカットソーと異なり、必要な枚数を必要な時に編成することができるので、省エネ•省資源の生産が可能で、環境にもやさしい製品ともいえます。

 

縫い代がないホールガーメントがいかに環境に良いかがわかるだろう。

 

人件費が抑えられる

従来のアパレルブランドでは服の製造に、多大な時間的・人的コストがかかっています。

 

しかしホールガーメントは縫製を必要としません。糸とデザインをプログラムするだけでデザイン通りの服をつくることができます。


最新のホールガーメント機であればセーターを1枚20分で編みあげることができるという。

これはめちゃくちゃ生産性が高いです。

効率がいいことから、発展途上国に工場を持たなくても、人件費の高い先進国での生産も可能なんだそうです。

 

ホールガーメントは着想がおもしろい

横編機自体は1850年頃にイギリスで発明され、編み方や効率面などはそこから色々と改良されて現在に至ります。

 

僕が個人的に一番おもしろいなぁ、と思ったのは「ホールガーメントは軍手から着想を得た」という点です。

 

日本の横編み機の始まりは「軍手」だそう。
手袋を逆さまにして中の3本指を一つの筒にするとセーターの形になります。


この発想がホールガーメントにつながっているそうです。

 

ホールガーメント

引用:島精機

 

1950年頃まで、作業手袋が歯車に巻き込まれることでおこる事故が多発していました。

そこで、手首の部分にゴム糸を編み込む「ゴム入り安全手袋」を開発。

このことにより歯車に巻き込まれてもすぐに手袋が脱げることから大きな事故が防げるようになったそうです。


そして1970年に現在の原型である全自動シームレス手袋編機が完成し、フィット感が増し作業効率も向上しました。

 

このホールガーメントを使うと、既製品では実現できないような、体にフィットするセーターや、自分好みのデザインのTシャツを比較的簡単に作れるそうです。そして、プログラムを変更さえすれば、衣服だけでなく他の形状のものも作ることができるそうです。

 

これはまさにファッション業界の3Dプリンターと言えそうですね。

 

最後に

ホールガーメント自体は最新バリバリの技術というわけではなく、結構前からあり、「着心地が良い」くらいにしか思っていませんでした。

 

ロスが出ないとか、人件費が抑えられるといったことまでは考えていませんでした。

 

そういった面が
サステナビリティ」なんかのトレンドとマッチして注目されているんだなぁと感じます。

 

これからも見た目だけではわからないような、新しい技術がどんどん出てきて服を快適に変えていくんだろうなと思うと、少し楽しみです。

 

 

感想などをコメントいただけるのが、何よりとても嬉しいです。

はじめましての方も、思ったことはお気軽にコメントお願いします。

 

 

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